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呉善花&石平 どうなる米朝会談! 南北合作の「韓流ドラマ」に騙されるな

2018年06月08日 公開
2023年01月11日 更新

呉善花(評論家/拓殖大学教授),石平(評論家/拓殖大学客員教授)

金正恩主演、文在寅脚本のロマンス

 米朝首脳会談開催については二転三転しましたが、私は今年2月に行なわれた平昌オリンピックが1つの契機だったと見ています。五輪以降、韓国が北朝鮮のペースに呑み込まれてしまったように思います。呉先生はどうご覧になっていますか。

呉 そもそもは、親北派の文在寅政権の誕生から状況が大きく変わりました。経済的に優位な韓国がいつの間にか北朝鮮に従うかのような構図になってしまい、いまや南が北に呑み込まれてしまう可能性すらあります。韓国の国内世論を見ると、4月27日の南北首脳会談直後、世論調査における文在寅大統領の支持率は80%を超えました。

 民主主義社会のリーダーが、それほど高い支持率を得ること自体が異常ですね

 韓国の左派は文在寅大統領の下に統率が取れているのですが、保守派はいくつかの派閥に分裂していることが大きいでしょう。文在寅政権は統制経済への傾向を強めていますが、これに共産主義・社会主義勢力が力を得て、「北朝鮮化」しつつあります。

とくに驚くべきなのは南北会談以降、韓国で金正恩の人気が急激に高まっていることです。韓国の公共放送MBCが4月29~30日に行なった調査によれば、金正恩を「とても信頼する(17・1%)」と「おおむね信頼する(60・5%)」の回答を合わせると約8割に達しました。民主主義国家の世論が、北の独裁者を認めている。信じられない結果ですよ。

韓国国内では「金正恩は外交上手で国際性がある」など、彼を礼賛する声が聞かれます。金正恩を悪魔のように捉えていた数カ月前までの世論とは打って変わって、北朝鮮の悪口すらいえない空気に変わりつつあります。金正恩の夫人である李雪主氏や妹の金与正氏に対しても、「美人で教養がある」など掌を返したように好意的なイメージで褒め称えています。

有名な韓国の哲学者である金容沃氏は、南北会談時に金正恩を警護していた若いボディーガードを見て「北朝鮮に漲るエネルギーを感じた」と表現しています。よくテレビの報道で流れる、金正恩の乗るベンツの脇で一緒に若者が走る光景が韓国人の脳裏に焼き付いているのでしょう。

私は板門店で南北首脳が出会う様子をテレビで見て、まさに文在寅大統領が脚本を書き、金正恩が主演する「韓流ドラマ」のようだと思いました。映画やテレビドラマの山場のように、和解した南北のトップが手をつないで国境を越え、立ち止まって話し込む。悲恋の男女再会のようなロマンチックな構図です(笑)。

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著者紹介

呉善花(お・そんふぁ)

拓殖大学教授

1956年、韓国・済州島生まれ。83年に来日し、大東文化大学(英語学)卒業後、東京外国語大学大学院修士課程(北米地域研究)修了。現在、拓殖大学国際学部教授。著書に『さらば、自壊する韓国よ!』(WAC BUNKO)、『日本にしかない「商いの心」の謎を解く』(PHP新書)などがある。

石平(せき・へい)

評論家

1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。近著に、『なぜ中韓はいつまでも日本のようになれないのか』(KADOKAWA)などがある。

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