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篠田英朗と松川るいが激論! インド太平洋戦略VS一帯一路

2018年09月05日 公開

篠田英朗(東京外国語大学教授)&松川るい(自民党参議院議員)

安倍外交の地政学的発想と大局観

篠田 民主党政権の時代には「東アジア共同体」という構想も掲げられましたが、これは何を足掛かりに構想を進めていくのか、具体性に乏しかった。

一方、インド太平洋戦略は日米同盟を基軸としてオーストラリアとパートナーシップを保ちつつ戦略的に重要な国にメッセージを送る、という道筋がはっきりしている分、安定感のある戦略といえます。

安倍政権が重視する地政学やグランド・ストラテジーの発想が背後にあることの表れでしょう。

松川 安倍総理は戦略論を押さえつつ、かつ大局観をもっていらっしゃると思います。篠田さんがおっしゃった地政学の見地を踏まえ、まさに地球儀を俯瞰している。

ビスマルクの言葉「ユーラシア大陸で大国たりえる国はプロイセン(ドイツ)、イギリス、フランス、ロシアの4つだけであり、このなかの3国を取らなければならない」を借りれば、人口、面積、経済力、立地などの条件に鑑みて、「帝国」たりうる資格を満たすのは、アメリカ、中国、インド、ロシアだけしかありません。もっとも、ロシアは、広大な領土と人口がアンバランスでやや劣りますが。

そのなかで日本はアメリカと同盟関係にあり、中国とは安全保障上の対抗関係にあります。一方、ロシアは中国と軍事・経済共に深く結び付いています。したがって、日本としては中露同盟を緊密に組まれないように働き掛ける必要がある。

このために最も有効なのは、本来は米露関係の改善です。残念ながらいまはなかなかうまくいく状況にはなく、先般の米露首脳会談も成功とは言い難い結果に終わりました。

安倍総理がロシアとの関係改善に積極的なのは、ロシアが中国に傾斜することを牽制する意味も大きいでしょう。

もちろん、中国の経済力は巨大であり、ロシアを中国から引き離すなどというのはどだい無理な話です。しかし、ロシアが中国のみに依存しない方向にもっていくことは、日本にとっても米国にとっても必要です。

こうした大局的な戦略の下で、安倍外交が展開されていることを理解しなければなりません。

(本稿は『Voice』2018年10月号、篠田英朗氏&松川るい氏の「インド太平洋戦略VS一帯一路」を一部抜粋、編集したものです)



著者紹介

篠田英朗(しのだ・ひであき)

東京外国語大学教授

1968年、神奈川県生まれ。ロンドン大学大学院修了(国際関係学Ph.D.)。ケンブリッジ大学、コロンビア大学客員研究員を歴任。広島大学平和科学研究センター准教授などを経て、現職。著書に『「国家主権」という思想』(勁草書房、2012年、サントリー学芸賞)、『集団的自衛権の思想史』(風行社、2016年、読売・吉野作造賞)、『ほんとうの憲法』(ちくま新書、2017年)など多数。

松川るい(まつかわ・るい)

自民党参議院議員

1971年生まれ。大阪・四天王寺高校卒業。93年、東京大学法学部卒業後、外務省に入省。米ジョージタウン大学国際関係論大学院修士号取得。在韓国日本大使館参事官、日中韓協力事務局次長、女性参画推進室長などを経て、2016年2月、退官。同年7月、参議院選挙大阪選挙区において、自民党公認候補として初当選。現在、女性局次長などを務める。

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