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沖縄県民投票、反基地派が掲げるジレンマ

2018年09月11日 公開

ロバート・D・エルドリッヂ(元在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長)

聞き手:編集部

 

――翁長雄志氏の急死により、今年9月30日に沖縄県知事選挙が行なわれることになりました。沖縄の政治状況をどのようにご覧になっていますか。

エルドリッヂ 「オール沖縄」を形成する革新系(基地反対派)が予期しなかった翁長知事の死去によって、候補者の擁立に関してさまざまな混乱が生じましたが、結果として保守系(基地賛成派)は宜野湾市長の佐喜眞淳氏、革新系は自由党幹事長の玉城デニー氏に候補が一本化されました。

佐喜真氏はたいへん優れた人物で、宜野湾市にとって余人をもって代え難い市長でした。また現在、54歳と若く、将来が期待できる。

それだけに、「翁長氏の弔い合戦」として苦戦が予想される知事選挙に出馬することで万が一、敗れた場合に政治キャリアに傷がつくことや、沖縄第5位の人口を擁し、中南部の中心都市である宜野湾市政の今後を心配しています。

また、翁長氏の死による政治的な混乱状況のなかで、もう1つの重要な投票に目を向けることを忘れてはなりません。

――それは何でしょうか。

エルドリッヂ 米海兵隊普天間飛行場の辺野古(名護市)移設に関する県民投票です。沖縄では近年、移設をめぐって新たな県民投票を行なう必要性が語られてきました。

しかし、県知事や市長が保守から革新へ目まぐるしく代わり、政治がジグザグの迷走を何年も続けており、また裁判を繰り返した結果、有権者や政治家の議論に混乱と錯綜をもたらしてしまいました。

現在のところ、名護市と宜野湾市は政府と足並みを揃えていますが、沖縄県とは基地問題での接点が完全に失われている。この混乱をもう一度整理するうえで、また初めて一つの問題に関して全有権者が〝判断〟するという意味で、今回の県民投票はたいへん重要です。

――県民投票を行なうには、投票の目的や投票者の資格などを定める条例が必要です。今年8月に条例案制定のための直接請求の条件(有権者の50分の1、約2万3000筆)を大幅に超える10万筆以上の署名が集まり、県民投票を実施する見通しとなりました。

エルドリッヂ 署名活動を行なったのは「『辺野古』県民投票の会」です。代表を務める元山仁士郎氏は、安保法案反対で有名になったSEALDsの沖縄地区(SEALDs RYUKYU)のリーダー。今回の県民投票は、反基地・反自衛隊・反日米同盟の活動家によって仕掛けられたものであることは間違いありません。

――だんだん雲行きが怪しくなってきました。県民投票のスケジュールについてはいかがですか。

エルドリッヂ 直接、県民投票の会にも取材しましたが、請願の時期は明らかにしていません。現在、沖縄県議会は翁長氏に近いメンバーのコントロール下にありますが、署名を知事代行に提出するのか、9月30日に早まった県知事選の結果を受けて次期知事に提出するのかは不明です。

反基地派は当初、翁長知事の1期目の任期切れ(今年12月9日)のタイミングで県民投票を仕掛けようとしていました。しかし、翁長氏の突然の死が彼らのスケジュールを一変させることになった。

県民投票を推進している基地反対側にとって、知事選を経てからの提出というリスクはあります。なぜなら、移設容認と思われる保守系の知事候補が勝てば、次期知事がどう判断するかや知事選の結果が議会における審議にどのような影響を与えるかは予測できないからです。

しかしその半面、「辺野古反対」を有権者に訴え、浸透させるための時間も欲しい。反基地派のあいだにはいま、1つのジレンマがあると思います。

(本稿は『Voice』2018年10月号、ロバート・D・エルドリッヂ氏の「沖縄県民投票は大チャンス」を一部抜粋、編集したものです)


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著者紹介

ロバート・D・エルドリッヂ(Robert D. Eldridge)

元在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長

1968年、米ニュージャージー州生まれ。米リンチバーグ大学卒業後、来日。神戸大学大学院で日米関係史を研究、大阪大学大学院准教授(公共政策)を経て、在沖縄米海兵隊政治顧問としてトモダチ作戦の立案に携わる。2015年に同職解任。現在、エルドリッヂ研究所代表などを務める。著書に『オキナワ論』(新潮新書)、『だれが沖縄を殺すのか』(PHP新書)、『トモダチ作戦』(集英社文庫)、『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会)など。

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