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AI搭載の監視カメラが「神」になる日

2018年10月06日 公開

近藤大介(『週刊現代』編集次長)


 

ジョージ・オーウェルが描いた世界と酷似

2017年10月に行われた第19回中国共産党大会と、2018年3月に行われた全国人民代表大会(国会)は、いずれも「習近平の習近平による習近平のための大会」だった。

この2つの大会を経て、習近平主席(共産党総書記)は名実ともに、「建国の父」毛沢東元主席以来の、強大な権限を手にしたのだった。

こうした経緯をつぶさに観察していて、脳裏をよぎった1冊の本があった。1948年にイギリスの作家ジョージ・オーウェル氏が書いた近未来小説『一九八四年』である。

小説を書いた年が48年だったため、数字をひっくり返して36年後の84年には、もしかしたら地球上にこんな国家ができているかもしれないと、想像力を膨らませて描いたのだ(以下、カギかっこ内の訳文はハヤカワ文庫版『一九八四年』を引用)。

結論から言えばその架空の国オセアニアは、2018年の中国と酷似しているのである。

1984年のオセアニアは、ビッグ・ブラザーという強大な指導者が支配している。ビッグ・ブラザーに従順な国民にとっては生きやすいが、少しでも逆らえば、「思考警察」の逆鱗に触れてしまう。

「戦争は平和なり、自由は隷従なり、無知は力なり」と説くビッグ・ブラザー率いる真理省が、習近平総書記率いる中国共産党にあたる。オセアニアの国民にとって最も重要なことは、ビッグ・ブラザーの偉大性を学習することである。

このことも、小学生から老人まで習近平主席の偉大さを学習させられている中国を髣髴させる。オセアニアでは「党中枢委員」は黒い制服を着ているが、9000万中国共産党員は「紅い帽子をかぶる」(習総書記の教えに従順になる)ことが義務づけられている。

オセアニアでは、もしもビッグ・ブラザーに逆らうと、「ただ人の姿が消えるだけ。登録簿から名前が削除され、その人間がそれまで行ったことすべての記録が抹消される」。

習近平政権も第19回共産党大会で、「5年間で133万7000人の幹部を処分した」と発表したが、処分された人たちが、いまどこで何をしているかは報じられない。

オセアニアではテレスクリーンと呼ばれる機械が各家庭に設置され、時々刻々とビッグ・ブラザーの宣伝煽動活動を垂れ流し、かつ各家庭の「声」を拾って監視している。

また街の各所に「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」と書かれた、ビッグ・ブラザーの顔写真入りポスターが貼られている。まるで中国の「AI監視社会」を予見しているかのようだ。

こうした社会で暮らしていると、「自分を表現する能力を失ってしまうばかりでなく、元々言いたかったことが何であったかさえ忘れてしまう」と、オーウェル氏は記している。

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