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門田隆将 井上嘉浩・炎天下のコンテナ監禁――4日間「断水断食」の地獄

2018年12月27日 公開

門田隆将(ノンフィクション作家)

炎天下のコンテナに監禁(井上嘉浩)

※本稿は、門田隆将著『オウム死刑囚 魂の遍歴』(PHP研究所)より一部抜粋、編集したものです。

 

「死」を意味する懲罰

8月初め、突然、麻原から電話が入り、怒鳴りつけられた。E子とのことが、すべてバレていた。

「一番早い方法で富士に来い!」

麻原にそう言われた嘉浩は、われを失った。頭を殴りつけられたような感覚に襲われたのだ。

(これは、すべて決まっていたことなんだ)

どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。身体からスーッと力が抜けていった。

(もう限界だ。これでよかったんだ。なるようにしかならん……)

出発の準備をしていると、今度は新実から彼女に富士に来るようにという電話があった。嘉浩は彼女を急せき立て、2人は飛行機で東京へ飛び、新幹線で富士へ向かった。

「なんで2人一緒なんだ」

富士に着くなり、新実に文句を言われた。

「馬鹿野郎。おまえのミスだ」

別々に呼んで何かしようと考えていた麻原は、新実を叱責した。しかし、2人が一緒に現われてしまったのだ。仕方なく、先に嘉浩が部屋に入れられた。

麻原の顔を見たら、嘉浩の頭は真っ白になってしまった。破戒をしてしまった。グルの教えを守れなかった――。

ここでまともな感覚なら、「あなたこそ、ふしだらな生活をしているではないか」という考えが浮かんでも不思議はない。しかし、完全に洗脳されている信徒には、そんなことはとても無理だった。嘉浩も同じだ。

ここで唯一、覚えているやりとりは、修行に関わることだけだった。

「おまえは、修行をどうするのか?」

「続けさせていただきたいです」

親の反対を押し切って入信し、出家までして修行に賭けた自分。しかし、禁じられている男女の破戒を犯してしまった――そのグルから「修行をどうするのか」と問いただされる情けなさは、もはや言葉では表わせるものではなかった。

意識が飛んだまま、嘉浩は麻原から「4日間の断水断食」を命じられた。4日間の断水断食とは、真夏には「死」を意味する罰である。

道場前の敷地には、大きなアルミのコンテナが置かれている。この中を仕切って5部屋ほど「独房」がつくられていた。その中に入って、4日間、食べるものも、そして水を摂取することも許されないという罰である。それは、「生きていれば奇跡」というべき地獄の懲罰だった。

嘉浩が麻原の部屋を出ると、代わりに彼女が入っていった。しばらくすると、「3日間断水断食」を命じられて彼女は出てきた。

ただちに新実が灼熱の太陽の下にあるコンテナに2人を連れていった。その途中、「トイレに行かせてください」と、嘉浩は新実に頼んだ。トイレの洗面所で、水を飲めるだけ飲んだ。トイレに入る時、彼女に目配せした。

(飲めるだけ水を飲むんだ)

目でそう伝えた。彼女もわかったようだ。嘉浩は、思いっきり水を飲んだ。4日間、今、飲んだ水で生き延びられるかどうか。それは、嘉浩にもわからない。

無機質な音で、入口の鍵が開けられた。外の明るさと、中の真っ暗な闇が見事なコントラストを描いていた。コンテナの中の5つの独房の入口にも、それぞれ鍵がついている。

「ここだ、入れ」

新実はそう言うと、「ガタン」と戸を閉めた。広さは2畳ほど、いっさいの光が入らず、完璧な暗闇だった。中には、ポータブルトイレ、ティッシュ、懐中電灯があった。闇の中で嘉浩は立ち尽くした。

(4日間……。果たして俺は生き延びることができるだろうか)

そんな思いと共に、

(彼女は3日間も大丈夫だろうか)

と自問自答した。

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