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金融、化学、SNS、どの業界も見過ごせないAIのポテンシャル

2019年03月22日 公開
2022年12月28日 更新

幸田真音(作家),藤本浩司(テンソル・コンサルティング株式会社代表取締役社長)

研究とビジネスが交わるブレイクスルーを

藤本浩司

【藤本】 ただ、AI技術はまだ満足できるレベルには達していない、と考えています。インターネットが商用化された1900年代以降、大量のデータ収集が可能になり、処理速度は格段に向上した。

とはいえ、やはり課題を設定する能力などにおいては不足部分が多い。どこかでブレイクスルー(飛躍的進歩)が必要です。

【幸田】 コンピュータの処理能力が急速に高まり、低価格化したこともあって、ある程度ITに詳しい人なら、誰でもディープラーニングのソフトを扱うことが可能な時代になりました。

でもそれだけがAIだと思い込んでしまう人が少なくない。基礎技術まで理解した本当のデータサイエンティストを育てる必要があります。

【藤本】 小学校でプログラミングが必修化するそうですが、学校だけではなく企業でもAIに関する教育をしていくべきだと思います。

数年前からいくつかの企業で、大学の先生を所長に置いた「AIラボ」を設立する試みも見られます。しかし、AIをビジネスで生かした経験がないと、体感として理解することは難しいでしょう。

その点、われわれはビジネスとしてAIをどう活用していくのかについて、先端を走っていると自負しています。誰も扱っていないAIの分野があれば自ら研究し、開発してしまおう、というのが当社のコンセプトです。

【幸田】 素晴らしいですね。私はいま、上場企業の社外取締役というかたちで経営に携わっていますが、中長期的視点でAIに精通した人材を育成する動きはかなりあります。

本業とは別の分野に投資を行なっていくコーポレートベンチャーキャピタルも進んでいます。

でも、AIは魅力的だから投資をしていこうという思いはあっても、それが本業とどう結び付き、いかに相互補完していくのか、といったビジョンはなかなか描けていない。

産学が協働で研究とビジネスを進めていく試みがもっと必要です。私たちが同時期に世に出した2冊の本『人工知能』(PHP研究所)『AIにできること、できないこと』(日本評論社)』が、AIに対する正しい理解を深め、研究者とビジネスマンの懸け橋になってくれたら嬉しいですね。

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