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「アンチ疲れ」した有権者、なぜ野党は“弱い”のか

2019年06月18日 公開
2019年06月24日 更新

松井孝治(慶應義塾大学総合政策学部教授)

モヤモヤ感を抱きながらも自公政権に回帰

とはいうものの、多くの国民が自民党政治に対して何らかの「モヤモヤ感」を感じているのも事実かと思う。

その証拠に、自民党内の批判勢力たる石破茂氏は、一時ほどではないにせよ地方を中心に根強い人気を得ている。いまの政治とは違った選択肢を提供してくれる政治家が出てきてほしい、という潜在的な願望はあるはずだ。

その願望が野党に結集する局面が皆無だったわけではない。2017年10月の衆議院議員総選挙だ。

小池百合子氏が新党「希望の党」を結成し、旋風を起こすも「排除発言」で失速し、その反面で枝野幸男氏率いる立憲民主党への期待が高まった。

このとき同党から当選したある議員は、2009年のいわゆる政権交代選挙のときよりも強い追い風を感じたという。東京の世田谷、神奈川の鎌倉など、比較的裕福な知識層が住んでいる地域では、大きな風が吹いた。

ところが、有権者の期待が傾きかけた立憲民主党の支持率はすでに下降低迷気味だ。イデオロギーが左に寄りすぎているため、一定の固定票は確保できるものの、現時点で広範な支持は得られていない。

有権者が望んでいるのは、穏健保守、中道からややリベラルの範囲内での対抗政党である。これまでも国民から大きな期待が寄せられ、うねりが起こるのは、中道付近に対抗勢力が現れたときである。

この30年来、そうしたたびに火が付きかけるが、やがて期待を裏切って失速するということを繰り返してきた。

その結果、モヤモヤ感を抱きながらも、自民党(自公)政権に回帰し、消極的に支持し続けてきた国民も多いと思う。

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