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イランだけでなく中国にも…予測される「アメリカの厳しい制裁」

2020年01月06日 公開

渡邉哲也(経済評論家)

イランの動向は経済にどんな影響を与えるのか?

新年早々から世界戦争に発展しかねない危機が訪れた。

一方的な核合意離脱を端緒にしたアメリカとイランの対立は、ソレイマニ司令官殺害により最悪な事態へ進もうとしている。トランプ大統領の過激な発言にも注目が集まるが、その真意は定かではない。

はたして、今後、アメリカはイランの対立はどうなるのか。本稿では、経済ジャーナリストの渡邉哲也氏が、緊迫するイラン情勢と各国への影響についてわかりやすく解説する。

※本記事は、『世界と日本経済大予測2020』 (PHP研究所)の内容に編集を加えたものです。

 

石油取引が制限されても、アメリカは困らない

アメリカとイランとの関係を語るうえで、はっきりさせなくてはいけないのは、これは、石油をめぐる争いとは言い切れないことだ。

トランプ大統領の関心事は、もっぱらイランの核合意問題である。核兵器開発を疑われていたイランと米英仏独中露が2015年7月に結んだ合意のことで、イランが核開発を大幅に制限する見返りに、16年1月に米欧が金融制裁や原油取引制限などの制裁を緩和した。

ところが、2018年5月にアメリカが合意から一方的に離脱。イランへの制裁を再開したアメリカと、それに反発するように合意の「制限破り」を小出しにするイランとの緊張関係が日に日に高まり、現在の状況を生み出した。

今後も、イランの核開発をめぐる争いは続くと見られる。そうなると、アメリカはイランとの石油取引を制限されることになるだろう。アメリカにとって、これは大きな打撃となるのではないかというと、そんなことはない。

アメリカは従来のように、石油利権を目的とした中東政策を考えていないからだ。これは、トランプ大統領が中東からの米軍撤退を示唆していることからも明らかである。

イスラエル問題に関してはアメリカとしては安全保障上関与するが、それ以外は及び腰と言っていい。ホルムズ海峡の安全を維持するための有志連合結成の話についても、「ホルムズ海峡をなぜ関係のない我々が守らなければいけないのか」という声も出ている。

かつてはホルムズ海峡を通過して輸入される石油は、日本とアメリカともに全輸入量の20%ほどを占めていた。しかし、その必要性が一気に低下している。それは「シェール革命」によるところが大きい。

2000年代、高圧の水力で、硬い頁岩(シェール)層に含まれる原油や天然ガスを掘り出す「フラッキング」と呼ばれる技術が確立し、アメリカの天然ガス・原油の生産が爆発的に増えたことを指す。

その結果、中東産の石油は、軽質油で精度が高い「ナフサ」が多く、一定量の需要があったが、近年その需要も軽減している。トランプ大統領にとっては、イラン問題は石油よりも、核をめぐる攻防こそが本丸であろう。

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