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「夫の気が利かない」は濡れ衣だ

2020年01月12日 公開

黒川伊保子(脳科学・AI研究者)

黒川伊保子写真:吉田和本

脳科学の分野から、”夫”と”妻”の脳の構造の違いを説き、大ベストセラーになった『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』。今回は、著者・黒川伊保子さんに、妻をイライラさせる夫の行動心理を説明してもらった。夫婦が分かり合う方法とはいかに。

※本稿は月刊誌『Voice』2020年2月号、黒川伊保子氏の「『夫は気が利かない』は濡れ衣だ」より一部抜粋・編集したものです。

聞き手:編集部(中西史也)

 

問題解決型の夫と共感型の妻

――40万部超えのベストセラー『妻のトリセツ』待望の第2弾となる本書では、悪気はないけれど気遣いのできない夫と、それに苛立つ妻という構図が書かれていますね。日本の家庭でよく見られる光景にも思えますが(笑)、夫婦間でこうした齟齬が生じるのはなぜでしょうか。

【黒川】 男女の脳は、そもそもチューニング(調整)が異なっているからです。脳の構造自体には違いがないけれど、とっさの使い方に差異が見られます。もちろん個人差はありますが。

この世の対話には2種類あります。目の前の人の欠点を突くことから始める問題解決型(目的指向型)と、共感型が挙げられます。

この2つは、切り替えることはできても、同時同質には使えない。また、遠くを見て危険を察知することと、目の前の大切なものから意識を離さないことも、同時にはできません。

そのため脳は、どちらを使うかをあらかじめ決めておく必要がある。

男性は狩りをしながら進化してきたので、危険な匂いを感じて脳が緊張したとき、遠くの空間全体を見て、問題解決を急ぎます。

一方で女性は、男性ほど危険な場所に足を踏み入れてきたわけではない。女同士の密な関係のなかでうまく立ち回ることを生き残る手段としてきました。たとえば子育ては、皆で協力して共感し合うほうが円滑に進めることができるからです。

この男女による脳の使い方の違いを現代に置き換えてみましょう。

妻が隣人とトラブルになったとします。相手が99%悪いとしても、夫は「君もさ、あの人のことを刺激しちゃ駄目だよ」といった言い方をしがちではないですか。

――たしかに、相手のほうが悪いと思っていたとしても、妻にも改善できる点があるのではないか、と考えてしまいそうです……。

【黒川】 それは妻にしてみたら、「あの人が悪いのに、なんで私が責められなくちゃいけないの」と思うわけです。でもね、私は「だから男は駄目なんだ」と言いたいわけではないんですよ。

――どういうことでしょうか。

【黒川】 夫が最初に妻の欠点を突くのは、彼女を危険から守ろうとしているがゆえなんです。

たとえば壊れかけの橋を渡ろうとしている人がいたら、「その橋、渡っちゃ駄目!」と言う人がほとんどでしょう。

壊れた橋が放置されている理不尽を問うても、その場の命を救えないから、まずは橋を渡る人を制する。

男性脳は、それが常時徹底している。そう考えるとわかりやすいと思います。

夫は妻に対し、いわば「愛と正義」を全うしようとしているだけなんです。妻からすれば「君の気持ち、わかるよ。相手が全部悪いよね」と言ってもらいたいときに、「君もさ……」と言われると裏切られたような気持ちになるけれど、それは男性の脳の使い方からすれば、仕方のないことだと言えます。

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