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「目が覚めると兵器に豹変」“予言の書”が示していた戦争の新兵器

2020年02月05日 公開
2021年04月23日 更新

喬良&王湘穂(訳 Liu Ki)

 

戦法が兵器をつくる時代に

戦争の歴史が始まってから、人間がずっと守り続けてきたのは「兵器に合わせた戦争」だった。往々にして、兵器が作られた後に、それに合わせる形で戦法が作られる。

兵器が先行し、戦法がそれに追随する。兵器の変化が戦法の変化を決定的に制約する。

もちろん時代と技術という限界要素はあるが、これは各時代の兵器製造専門家が兵器の性能が先進的であるかどうかだけを考え、ほかの要素を無視するという直線的思考と無関係ではない。

兵器革命がいつも軍事革命より先行するのは、そのためかもしれない。しかし、近年アメリカ人は「戦争に合わせた兵器開発」という構想を打ち出し、兵器と戦法との関係に、戦争の歴史が始まって以来の最大の変革を引き起こした。

これは、先に作戦の方式を確定してから兵器を開発するやり方である。アメリカ人が最初に試みたのは「空地一体戦」で、そして最近話題になっている「デジタル化戦場」や「デジタル化部隊」はその最新の試みである。

このようなやり方は、いつも軍事革命に先行していた兵器の地位がすでに動揺し、戦法が先行し兵器が追随する、あるいは両者が相互に作用を及ぼしながら同時進行していくという新しい関係の構築を示している。

「戦争に合わせた兵器開発」という、時代の特徴と実験室の特徴を鮮明に備えたやり方は、戦争史の重大な突破を醸成すると同時に、現代戦の潜在的な危機もはらんでいる。

まだ検討中の戦法に合わせて一連の兵器システムを立ち上げるのは、あたかも誰が宴会に来るのかわからないのに、豪華な料理を準備するのと似ている。

少しでも予想が外れたら、とんでもなく悲惨な結果になる。言い換えれば、今日の世界で、兵器にならないものなど何一つない。このことは、われわれの兵器に対する認識の上で、すべての境界を打ち破るよう求めている。

 

技術ではなく概念が兵器をつくる

技術の発展が兵器の種類を増やす努力をしている時期にこそ、思想上の突破によって一挙に兵器庫の扉を開けることができる。

つまり、人為的に操作された株価の暴落、コンピューターへのウイルスの侵入、敵国の為替レートの異常変動、インターネット上に暴露された敵国首脳のスキャンダルなど、すべて兵器の新概念の列に加えられることを意味している。

大量に出現している新概念の兵器にとっては、技術はすでに主要な要因ではなく、兵器に関する新概念こそが真の意味で深い原因なのだ。

明確に指摘しておかねばならないのは、兵器の新概念は庶民の生活に密接にかかわる兵器を作り出すということだ。

われわれがまず言いたいのは、新概念の兵器の登場は、未来の戦争を、一般人は無論のこと、軍人でさえ想像しにくいレベルまで引き上げるに違いないということ。

そして次に言いたいのは、兵器の新概念は、一般人、軍人を問わず、その身の回りにある日常的な事物を戦争兵器に豹変させてしまうということだ。

人々はある朝、目が覚めると、おとなしくて平和的な事物が攻撃性と殺傷性を持ち始めたことに気がつくだろう。

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