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SNS炎上にもつながる「多様性」議論を、天才哲学者マルクス・ガブリエルが考える

2020年02月21日 公開

マルクス・ガブリエル(ドイツ・ボン大学教授)

マルクス・ガブリエル

今、世界中から注目を集める気鋭の哲学者、マルクス・ガブリエル。史上最年少の29歳でボン大学哲学科の正教授に就任した「天才」だ。

彼が日本の読者のために初めて語り下ろした最新刊『世界史の針が巻き戻るとき「新しい実在論」は世界をどう見ているか』(PHP新書)では、多様性のパラドックスについて語っている。昨今、多様性に関する「炎上」案件は後を絶たない。

本書での議論は、「多様性を受け入れない人も、多様性の一部として包摂すべきか?」といった問いかけから始まる。内容を一部抜粋してお届けする。

 

多様性と民主主義のパラドックスを哲学する

近年、多様性という言葉をしばしば耳にします。我々が多様性について語るとき、多様性反対派の人とどう対峙すればよいのでしょう。

多様性を受け入れない人も、多様性の一部として包摂するべきでしょうか。

実は、民主主義には概してそういうパラドックスがあります。たとえば、EU内にブレグジット推進派の党を持つべきか。答えは否です。そこにパラドックスがあります。

でも、これを論理的に解決する方法があります。私の考えでは、多様性とは、「誰かを排除したいと思っている人たちも排除しない(包摂する)」という意味ではありません。

まったく同じ構造をとっているパラドックスの例をもう一つ挙げましょう。「噓つきのパラドックス」と呼ばれるものです。

オットーという男性がいたとして、彼が「僕が言うことはすべて噓だ」と言ったとします。もしオットーの言うことが正しいなら、彼は噓つきになる。

でも彼が噓をついているなら、彼は噓つきではないということになる。これと同じように、「我々は何人たりとも排除してはならない」という主張は、誰かを排除している人たちを排除した、というパラドックスに陥ります。

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