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「加賀から“第二のGAFA”を生み出す」 電子都市を目指す市長の決意

2020年03月12日 公開
2020年03月16日 更新

宮元陸(石川県加賀市長)

宮元陸石川県加賀市・柴山潟からの白山眺望

加賀市が近年デジタル化に注力する政策を推進している。伝統工芸が息づく地で、目指すのはデジタルと伝統の「共存」だという。その具体的な政策について、加賀の宮元陸市長に話を伺った。

本稿は月刊誌『Voice』2020年3月号、宮元陸氏の「加賀から『第二のGAFA』を生み出す」より一部抜粋・編集したものです。

聞き手:Voice編集部(中西史也)

 

エストニアに学ぶ、電子都市という生き方

――加賀市はAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など、デジタル化に注力する政策を推進しています。この取り組みを進める背景には、どういった問題意識があるのでしょう。

【宮元】 加賀市が「消滅可能性都市(2010~40年にかけて20~39歳の若年女性の人口が5割以下に減少する市区町村)」であるとの指摘を受けたことによる危機感です。

このまま放っておけば、市の運営そのものが立ち行かなくなる厳しい状況にあります。急速に進む人口減少に直面するなか、どうすれば生き残れるのか。その処方箋として、デジタル化に活路を見出しました。

――山中漆器や九谷焼などの伝統工芸が息づく地でデジタル化推進に舵を切ったことは、大きな決断だったでしょう。

【宮元】 伝統とデジタルは併存できると考えています。伝統というのは精神文化的な面が大きく、ゼロかイチかのコンピュータの世界とは相容れないイメージがあるかもしれません。

ただ、山中漆器や九谷焼は、生産過程でデジタル技術を活用しています。技術革新を志向するデジタル化と、継続性を重んじる伝統文化、それぞれの強みを活かして両立すれば、新たな化学反応が生まれます。

――加賀市は昨年11月、5G(第5世代移動通信システム)についてNTTドコモ(北陸支社)と連携することで合意しました。5Gを本格的に推進することで、市民の生活はどう変わりますか。

【宮元】 たとえば皆さんが利用しているスマートフォンで動画を観る際、大容量で高速かつ同時多接続が可能になります。自動運転も大きく進歩します。NTTドコモと協力することで革新的な技術を生み、市民に日常生活で利便性の向上を実感してもらえればと考えています。

――同じく11月に市長は、エストニア、フィンランド、リトアニアと北欧諸国を訪問されました。「IT先進国」と言われる国々の現場はいかがでしたか。

【宮元】とりわけエストニアは、国民のプライバシーを担保しながらも、電子情報をマイナンバーと紐付けています。

そのため、99%の行政書類はPCやスマホで一気通貫に処理することができる。その利便性は計り知れないと痛感しました。

加賀市もエストニアに学び、行政手続きのデジタル化に取り組んでいます。昨年12月には、エストニアと日本に拠点を構え、デジタルID領域での実績をもつ「株式会社blockhive」との連携協定を締結しました。

同社が開発するIDアプリとマイナンバーカードを連携することで、役所に直接足を運ばなくても、電子上で手続きを完結させられるように今年1月からプロジェクトを始めました。

役所が市民の足を引っ張ることなく、少しでも生産性を上げるため、急ピッチで施策を進めています。

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