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あの震災から10年目、名優・渡辺謙が流した涙の理由

2020年03月05日 公開
2020年03月13日 更新

渡辺謙(俳優)

復興活動に尽力した自衛隊と米軍への感謝

渡辺謙吉田昌郎所長を熱演する渡辺謙さん©2020『Fukushima 50』製作委員会

―― 一方、吉田所長の「現場の人間は身体張ってんだよ」というセリフに象徴されるように、現実では東京にいる東電本店や官邸と、福島にいる現場との認識の乖離が浮き彫りになり、本作でもその様子が少なからず描写されています。

【渡辺】門田さんの原作を読み、原発事故についてリサーチしていると、これほど基本的な情報ですら現場に下りていなかったのか、愕然としました。

どうして本店と現場のコミュニケーションがうまくいかなかったのか。その事実を僕たちが映画というエンターテインメントで伝え、一人でも多くの国民に考えてもらうことは大切なことでしょう。

――被災地では作業員のみならず、自衛隊や米軍の活動も復旧・復興に大きく貢献しました。彼らに対してはどのような思いを抱いていますか。

【渡辺】震災から1カ月後、僕も被災地に入ったのですが、自衛隊員が不眠不休で懸命に汗を流している姿を目の当たりにしました。撮影中もその光景が蘇り、ただただ頭が下がる思いでした。

――映画では、ある自衛隊員が「国を守るのがわれわれの仕事ですから」と語る場面がありますね。

【渡辺】自衛隊員はさらっとそう言ってしまうのだけれど、決して当たり前のことではない。彼らの働きが被災地の再生に大いに寄与したことは、僕が強調するまでもないことです。

また米軍は震災後、真っ先に被災地に駆けつけ、物資を運んでくれました。自分の国の災害ではないにもかかわらず、「トモダチ」のために危険を冒して助けに来てくれた。日本人の一人として、深く感謝しています。

 

■映画情報 2020年3月6日(金)全国ロードショー
出演:佐藤浩市 渡辺謙 吉岡秀隆 緒形直人 火野正平 平田満 萩原聖人 吉岡里帆 斎藤工 富田靖子 佐野史郎 安田成美
監督:若松節朗 脚本:前川洋一 音楽:岩代太郎
原作:「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」門田隆将(角川文庫刊)
製作:KADOKAWA 配給:松竹、KADOKAWA © 2020『Fukushima 50』製作委員会
公式HP:fukushima50.jp twitter:twitter.com/Fukushima50JP facebook:facebook.com/fukushima50jp/

渡辺謙

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