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新型肺炎、なぜ緊急事態宣言発令は遅れたのか



2020年04月21日 公開

福田充(日本大学危機管理学部教授)

強権的な対策を嫌うメディアと世論

理由はどれであれ、結果的に新型コロナウイルスが指定感染症となったことで、弊害が発生した。

その1つは、これまで新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて、内閣官房や厚生労働省で準備、運営されてきた有識者会議、委員会などのメンバーや知見、対策のスキームを、今回そのまま使うことができなくなったことである。

それができれば、もっとスムーズな危機対応が可能であっただろう。そうしなかったことにより、アドホック(暫定的)に事後的な新型コロナウイルス対策会議が設置され、有識者会議も新しく準備され、これまで蓄積されていた有意義な知見や対策が十分に活かされなかった。

このことが、初動において新型コロナウイルスの危機対応が混乱した原因の2つ目である。

結果論ではあるが、3月に入り、結局のところ安倍政権は新型インフルエンザ等対策特別措置法で新型コロナウイルスに対応できるように法改正を行ない、新型コロナウイルスにおいても緊急事態宣言が出せるようになった。

1カ月後の3月にこれができるのであれば、なぜこれが1月下旬にできなかったのか、この時間のロスが対策の遅れに結び付いたことは間違いない。

危機管理とは「最悪の事態を想定すること」であり、「空振り三振はしても見逃し三振はするな」が鉄則である。

未知の感染症に対しては、初動において最悪の事態を想定し、強めの対策をとることで感染拡大を防ぎ、その感染状況が弱まってきたら対策を解除していくというアプローチが望ましい。

それを阻んだのは、緊急事態宣言など強権的な対策を嫌うメディアや世論と、そのメディア報道や世論の動向を過剰に気にする政権とのあいだで発生した、いわゆる「ハリネズミの恋愛」の状況であり、このような事態こそ危機管理の効果を失わせるものである。

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