PHPオンライン衆知 » Voice » 政治・外交 » 事態はより深刻に…「米中冷戦」の背景にある“中国の宗教問題”

事態はより深刻に…「米中冷戦」の背景にある“中国の宗教問題”

2020年11月28日 公開

茂木誠(駿台予備学校世界史科講師)

 

米中冷戦の背景に「叙任権闘争」あり

全世界のカトリック司教の任命権は、バチカンのローマ教皇が握っています。しかし、中国共産党はそれを認めていません。その代わり、無神論の共産党政権がカトリックの司教を任命するという、奇妙な現象が起こっています。

中国では、バチカンが任命した司教も活動していますが、共産党政権は彼らを弾圧しています。見つかれば十字架も教会も破壊されてしまうので、秘密裏に集会を開いているのです。これを「地下教会」と言います。まるで江戸時代の隠れキリシタンのようです。

ところがローマ教皇フランシスコ(アルゼンチン出身)は、ついに中国政府公認の司教を追認する方向で合意しました。この決定に対しては、カトリック教会内部でも批判が起こっています。

自身がカトリック教徒であるペンス副大統領は、中国政府の宗教弾圧と、これを黙認しているバチカンを強く批判しました。

「中国政府は先月、中国最大級の地下教会を閉鎖しました。全国的に、当局は十字架を取り壊し、聖書を燃やし、信者を投獄しています。そして中国政府、明白な無神論者である共産党が、カトリック司教任命という直接的な関与についてバチカンと合意に達しました。中国のクリスチャンにとって、これは絶望的な時代です……」

世俗の政治権力とカトリック教会とが聖職者の任命権で争うことを、「叙任権闘争」と言います。中世ヨーロッパでは、神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世が、自分の言うことを聞く司教を勝手に任命していました。

それに対して、ローマ教皇グレゴリウス7世が異を唱え、ハインリヒ4世を破門したのです。ハインリヒ4世はグレゴリウス7世に許しを請いました。これが「カノッサの屈辱」と呼ばれる事件です。

中国とバチカンが対立する宗教問題は、「現代版カノッサの屈辱」とも言えますが、膝を屈したのは「皇帝」習近平ではなく、教皇フランシスコだったわけです。

日本にも仏教系を中心としてたくさんの宗教法人がありますが、中国におけるチベット仏教の弾圧に対して声を上げている団体が、いくつあるのでしょう。

Voice購入

2022年2月号

Voice 2022年2月号

発売日:2022年01月08日
価格(税込):840円

関連記事

編集部のおすすめ

中国批判に猛抗議する留学生…アメリカの有名大学を侵食する「孔子学院」

石澤靖治(学習院女子大学教授)

完全に行き詰まった中国経済…世界から敵視される“不法と無法な行動”

日高義樹(ハドソン研究所首席研究員)

アメリカ国民の4割が進化論を否定!?…政治をも動かす「宗教の力」

西山隆行(成蹊大学法学部教授)

2月開催!!ハッピーウーマンオンラインセミナーシリーズ-Dr.クリスティンペイジ

WEB特別企画<PR>

アクセスランキング

WEB特別企画<PR>

  • Twitterでシェアする
2月開催!!ハッピーウーマンオンラインセミナーシリーズ-Dr.クリスティンペイジ

21世紀のよりよい社会を実現するための提言誌として、
つねに新鮮な視点と確かなビジョンを提起する総合月刊誌です。

×