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80年代に2015年を描いた「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」から見える“不可能と可能”

2021年02月24日 公開
2022年10月18日 更新

岡田斗司夫(社会評論家)

岡田斗司夫著『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』

2018年に「アマゾンやネットフリックス、アメーバTVなどがネットへの露出を増やし始めています。日本人ユーチューバーの市場も、これから2、3年でアイドルや芸人に荒らされる」と予測した岡田斗司夫氏。その指摘は「芸能人のネットフリックス詣で」として的中。「2028年の未来」について、さらに考察を進める。

※本稿は、岡田斗司夫著『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

 

バック・トゥ・ザ・フューチャーの3段階

1985年から1990年にかけて公開された、ロバート・ゼメキス監督の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズは世界で大ヒットしました。『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989年)では未来世界が舞台でしたが、設定ではこれが2015年なんです。

靴紐が自動的に締まるスニーカーは2017年にナイキから発売されましたし、タブレット型コンピュータや、3D映画やビデオ会議は現実になっています。1985年に生きている人が楽観的に予測した30年後ということで、街中を空飛ぶ車がバンバン飛んでいました。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズは僕も大好きで、1コマごとに演出を語れるほどですが、公開当時から「さすがに30年後に車が飛んでいるはずはない」と思っていました。なぜかというと、ある技術がブレイクスルーするには3段階のステップを経る必要があるからです。

たいていの技術は、まず研究者が「原理的にはこういうこともできる」と論文などで発表するところから始まります。研究が始まってから10年くらいすると、「何とか実用化できるかも」という取っかかりが見つかることがある。

それから10年すると「あとはコストの問題だ」ということになってきて、さらに10年くらいかけて社会に普及してくる、という流れをたどることがほとんどなんです。

コンピュータにしても、最初のトランジスタの原理が発見されたのが1947年。パーソナルコンピュータとして大ヒットした「アップルII」が登場したのが1977年ですからね。

 

VR/ARが前提の価値観に

未来予測する上では、これを踏まえておくと見通しがよくなります。例えば、VR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)について言えば、ブレイクスルーの最後の段階に来ています。

ヘッドマウントディスプレイはそんなに高くない値段になったし、スマートコンタクトレンズに映像を映したり血糖値をモニターすることもできるようになってきた。

だから、今後10年くらいの予測をする上で、VR/ARの発達を前提にして、それらがどう社会の価値観を変えていくのか予測するのは当然でしょう。

人間の三半規管を磁石で刺激して平衡感覚を操れる装置もあるから、大がかりな施設でなくてもすごくリアルな体験は得られるようになるはず。この分野の技術は未来予測に組み入れられます。

自動運転車もそうですね。あらゆる場所で操作を自動化できる「レベル5」はまだ無理にしても、特定の場所で操作を自動化できる「レベル4」は、ほぼ実用化のめどが立ってきています。

空飛ぶ車も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が作られた1985年にはまだ実用化の取っかかりがありませんでしたが、ここ数年あちこちのベンチャーからの発表が相次いでいます。

その一方で、「10年ではまったく無理!」という技術もありますね。『ドラえもん』に出てくる「どこでもドア」や「タイムマシン」はコストダウンどころか、基礎的な理論もできていないから、30年以内の実現は絶対に無理。

一般人向けの宇宙旅行もそうですね。SpaceX 社がブースターを再利用できるロケットを開発していたりして、衛星の打ち上げコストはどんどん安くなってはいるけど、人間を安価に大気圏外に打ち上げる実用的な手段はまだ見えない。

地表と静止軌道を行き来する「宇宙エレベーター」が提案されていて、カーボンナノチューブを建設材料に使えば実現できるのではないかと言われていますが、実用化のめどが立ったとは到底言えません。

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