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「WOWOWは井の中の蛙だった」WOWOW社長が語る反省と“偏愛”

2021年04月19日 公開
2023年02月15日 更新

田中晃(WOWOW代表取締役社長執行役員)

WOWOW

「外資系だけ」は不健全

――WOWOWの月額視聴料2,530円(税込み、以下同)という価格設定をどう考えていますか。アマゾンプライムビデオ(500円)や、ネットフリックス(ベーシックプラン:990円、スタンダードプラン:1,490円)と比べて高いと感じる利用者もいると思います。

【田中】そう比較すると、どうしてもWOWOWが割高にみえてしまうかもしれません。しかし私は、コンテンツの豊富さと質に鑑みれば、決して高価格だとは思いません。

WOWOWでは映画や海外ドラマのみならず、世界のトップスポーツ、国内外のトップミュージシャンのライブ、オリジナルドラマ、舞台中継など、外資の動画配信サービスを凌駕する作品の幅があります。

とくに最大の強みであるスポーツでいえば、テニスの四大大会や、欧州のサッカークラブの頂点を決める「UEFAチャンピオンズリーグ」を、どちらも全試合生中継しているのはWOWOWだけです(「WOWOWメンバーズオンデマンド」での配信を含む)。

先ほど述べたように、今後はさらにコミュニティづくりを進めて、視聴者の満足度を高めていきます。他社と価格競争をするのではなく、価格以上の価値を提供することに全力を尽くしています。

――ネットフリックスでは、『今際の国のアリス』や韓国の『愛の不時着』などのオリジナルドラマが話題を呼びました。WOWOWが制作するオリジナルドラマ『ドラマW』も高い評価を受けていますが、莫大な資金力をもつ外資に今後どう対抗していくのでしょうか。

【田中】ネットフリックスのオリジナルドラマはどれも質が高く、心からリスペクトしています。日本の優秀なクリエイターも次々と作品づくりに参加しており、制作陣にとっては世界と勝負するための扉が開かれている点はじつに魅力的でしょう。

WOWOWもいままで以上に、日本の優れたクリエイターたちと一緒に、悩み、ぶつかり合いながら、魅力的なコンテンツを創っていきたい。ただし自戒の念を込めていえば、日本から世界に作品を届ける選択肢がネットフリックスなどの外資に限られてしまうのは、健全な市場とはいえません。

視聴者にとってもクリエイターにとっても魅力的な選択肢に、WOWOWが入らなければならないと考えています。開局30周年プロジェクトの一環として『アクターズ・ショート・フィルム』を放送しました。森山未來さんや柄本佑さんなど5名の俳優が、監督としてショートフィルムを撮影する試みです。

本作は、アジア最大級の短編国際映画祭で米国アカデミー賞も公認している「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)」でグランプリをめざしています。監督それぞれの個性が遺憾なく発揮されている、「世界で戦える」企画です。

 

「偏愛」ではどこにも負けない

――オリジナルコンテンツの制作では、監督や演者はもとより、プロデューサーやクリエイターの力量や熱量も問われますね。

【田中】そのとおりです。WOWOWの制作陣のコンテンツへの愛情の深さはどこにも負けていません。我々が大切にしている言葉に「偏愛」があります。「何よりも舞台が好き」「サッカー愛なら誰にも負けない」というように、"偏った愛"を抱いている点については矜持があります。

――3月1日には「WOWOW4K」の放送を開始しました。これまでの映像と何が異なるのでしょうか。

【田中】これまでの2Kやハイビジョンでは表現できなかった画質や色合いを出せるようになりました。WOWOWはBS放送のなかでも放送帯域が広いため、画質の良さは従来から強みの一つでした。今回の「WOWOW4K」は、それにさらなる磨きをかけたかたちです。

その中心となるコンテンツはオリジナルドラマ、スポーツ、そして映画です。テニスや、サッカースペインリーグで「クラシコ(伝統の一戦)」と呼ばれるレアル・マドリード対バルセロナといった世界最高峰の試合を、ぜひとも至高の臨場感とともに楽しんでいただきたい。

3月6日より、2020年のアカデミー賞で作品賞など最多の4部門を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』の4K版を放送しています。視聴者はもちろん、作り手からしても、最高の状態で作品を観てもらいたい思いがあるでしょう。その願いを実現するのが4Kなのです。

 

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