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なぜ弾圧? 知っておきたい中国政府と「ウイグル族」の歴史



2021年05月26日 公開

福島香織(ジャーナリスト)

福島香織
(写真撮影:福島香織)

過激さを増す「ウイグル人権問題」。拷問や強制的不妊手術、洗脳など、中国共産党政権の下でいくつもの問題や疑惑が指摘されている。

一体、ウイグル人はなぜここまでの弾圧を受けているのだろうか。ジャーナリストの福島香織氏が、歴史を振り返って詳しく解説する。

※本稿は『Voice』2021年6⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。

 

血まみれの抵抗と弾圧

そもそも、なぜ中国でウイグル人がこれほどまで過酷な弾圧を受けるのだろうか。

それにはウイグル弾圧の歴史を知る必要がある。簡単に復習しておこう。清朝が征服したジュンガル・タリム盆地はその王朝末期の衰退期、その土地を取り戻すべく、チュルク系イスラム王朝の末裔たちが聖戦を仕掛けていた。

当時の世界情勢の混乱に乗じて、1933年にカシュガルで、東トルキスタンイスラム共和国の独立宣言が行なわれた。

だが、それを国際社会が認める前に、ソ連軍の介入によってあっけなく滅亡。その後の新疆地域は、ソ連の影響力を強く受け、1944年に誕生したアフマトジャンを指導者とする東トルキスタン共和国はソ連の軍事的支援を受けて成立した。

このままソ連の衛星国になると思われたが、ソ連は中国国民党政府との密約によって、東トルキスタンの支配権を外モンゴル・満州の権益とのバーターで売り渡してしまった。

その後、国民党政権との連合政権を経て、アフマトジャンおよび旧東トルキスタン閣僚によるイリ自治政府が一応、独立した政府の恰好をかろうじて保っていた。

国共内戦の決着がつく直前に、中国共産党政権はソ連との合意に基づいて、アフマトジャン率いるイリ自治政府に接触。

北京の協議に呼ばれたアフマトジャンと旧東トルキスタン閣僚が搭乗した飛行機がイルクーツク付近で墜落した。指導者と閣僚を失った政府は、そのまま中国共産党政権に飲み込まれてしまった。

その後は人民解放軍の進駐によって、反抗的なウイグル人を一掃した。だが、一度ならず独立国をつくった民族の抵抗が簡単に終わるはずもなく、血まみれの抵抗と弾圧、粛清が延々と続いたのだった。

1976年に中国で文化大革命が終わり、そののちに改革開放が始まると、新疆に対する経済搾取が本格化した。

豊かな土地での綿花やトマト、ホップなどの農産物生産、石油ガスなどの天然資源開発は、ウイグルの土地に築かれた漢族の植民王国として、長きにわたって虐げられたウイグル人たちの敵意をさらに刺激したのである。

そのころ国際社会でイラン革命、ソ連のアフガン侵攻、イスラム原理主義の台頭などの流れのなかで、東トルキスタン独立運動も再び活発化してきた。

改革開放により東トルキスタンの地に漢族が増え、その漢族がウイグル人を搾取するかたちで貧富の格差が拡大し、漢族ウイグル人の対立構造はより先鋭化した。

文革終結後に中国の指導者となった胡耀邦は民族融和を唱え、1980年代のほんの一時期、民族区域に自治権を付与する法的整備に着手したこともあった。

胡耀邦時代、新疆では一度もウイグル人による武力抵抗事件が起きなかった。だが、こうした民族融和時代は、胡耀邦失脚とともに終わる。

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