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「集団免疫」の達成に必要なワクチン接種率は? 知っておきたい“目標ライン”の見極め方

2021年07月06日 公開
2021年07月06日 更新

中西貴之(サイエンスコミュニケーター)、宮坂昌之(大阪大学名誉教授)

 

簡単な計算でわかる 集団免疫達成の「目安」

ワクチンの必要性は簡単な計算で求められます。感染症への対処を考える上で、一人の人が別の人の何人に感染させるかを把握することは重要で、この数値を「基本再生産数」といいます。

一人の患者が完治するか、死亡するまでの間に平均して周囲の4人にその感染症をうつすとすると、その感染症の基本再生産数=4となります。

基本再生産数=4の場合、誰も免疫を持っていないコミュニティで一人の発症者が出ると、一人から4人、4人から16人、16人から84人……と爆発的に感染は拡大します。

ところが、4人のうち3人がワクチンを接種して免疫を持っていれば、一人の患者からは一人にしかうつさないので、患者数は増えていきません(ある人が完治するか死亡するまでを積算した値が基本再生産数なので)。

つまり、基本再生産数が1未満であれば感染拡大を食い止めることができるのです。そのため、ここで数字を挙げた架空の感染症を防ぐには、4人に3人、75%以上の人が免疫を持つ必要があることがわかります。

ワクチンの有効率が80%の場合、このコミュニティの94%の人がワクチンを接種すれば(0.8×94=75.2)、集団免疫閾値75%を達成することができ、ざっと10人に一人は予防接種をしなくても大丈夫な計算になります。

つまり、あるコミュニティ、学校とか、地域とか、介護施設とか、そこである程度の人がワクチン接種を受けることで全員を守ることができるのです。

「俺はいままでインフルエンザにかかったことなんかないから予防接種は受けないぞ」とSNS等で強がっている人は、周りの大勢の人の接種のおかげで守られているのです。

 

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