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橋下徹「自分だけが走り回るようではリーダー失格だ」

2021年07月09日 公開

橋下徹(元大阪府知事・弁護士)

橋下徹(写真:大坊崇)

 

コロナ禍では、政治家のリーダーシップに注目が集まった。しかし、維新の会創設者であり、大阪府市の行政を担った橋下徹氏は、政治家個人の指導力ではなく、政策を進めるための「装置づくり」が重要だと指摘。大阪府の吉村洋文知事への評価ともに、本当に必要な「決断力」について語る。(聞き手:Voice編集部 中西史也)

※本稿は『Voice』2021年8⽉号より、⼀部抜粋・編集したものです。

 

自分の考えにこだわらず、システムをつくれ

――国民が政治を評価する際には、どうしても政策の結果や個人の指導力に目がいきがちです。この問題についてどうお考えですか。

【橋下】僕の著書『決断力』(PHP新書)で書き残したテーマなので、『Voice』読者に向けてお話ししましょう(笑)。

政治や経営の世界における有能なリーダーは、自分自身が正解を追い続けるのではなく、それを実現させるための「装置」をつくるのが上手い人物です。もう少しかみ砕いて言うならば、仮に自分がいなくても正解を導いてくれるシステム・組織をつくれる人です。

たとえば、ジャストインタイム生産システム(生産工程に必要なものを必要なときに必要な量だけ供給し、在庫を減らす手法)や自働化を軸にしたトヨタ生産方式は、その典型例でしょう。

ほかにも本田宗一郎さん(本田技研工業創業者)や松下幸之助さん(現パナソニック創業者)だって、最初はみずから技術開発に勤しみましたが、その後は人や資金を集めて組織や装置をつくりました。

僕も大阪府知事や大阪市長を務めて痛感したことですが、個人商店型の仕組みで実体的正義を追求していても、いずれは限界に直面します。そもそも、絶対的な正解の追求にこだわる人は、周囲からの客観的意見を聴く耳が往々にして弱まります。

すると、「俺の考えが正しいから、それを実行してくれ」とトップダウンの手法に終始してしまうんです。

いまの菅さんはこのパターンに陥っているように見えます。たしかに携帯電話料金の引き下げやデジタル化は、菅さんの実行力があったからこそ成しえました。

しかし、それは正解が見える課題だったからであり、正解が見えないコロナ対策や五輪開催の是非という問いに対しては通用しない。この場合には、正解を導き出す装置、すなわち賛成派と反対派がフルオープンの場でぶつかり合う仕組みが必要なんです。

――菅首相は連日、有識者と会談して意見を聴いているとのことです。それでも十分に客観的意見を集められていないということでしょうか。

【橋下】たしかに、多数の専門家と会ってはいるのでしょう。しかし、自分の考えに合う、自分が決めた正解を支持してくれる人たちだけを集めているようにも思えます。

先ほども話したように、五輪開催の問題であれば複数の観点から賛成派と反対派双方の意見をぶつけ合って、徹底的に議論する必要があります。自分の意見に近い人たちだけで政策を決めていては、むしろ正解から遠ざかってしまいますよ。

属人的な要素による政策の歪みを防ぐ意味でも、やはり装置づくりが重要なのです。

――橋下さんは政治家時代、統治機構改革の必要性を一貫して訴えてきました。これはいま話している装置づくりにつながっていくのでしょうか。

【橋下】そのとおり。手前味噌で恐縮だけど、僕は「維新の会」という政党をつくり、いまはその運営からは退きましたが、維新の会や大阪府庁・市役所は、現在も僕がめざしたシステムとして動き続けています。

僕のような一コメンテーターが個人のアイデアを提言しても、現実の政治はそう変わらないでしょう。でも維新の会という政党や府庁・市役所が組織で動けば、正解らしきものに向かって大阪を動かすことができる。幸いにも政治家時代に、そんな「装置」を残すことができました。

まさに僕の知事・市長時代は、この維新の会や大阪府庁・市役所といった「装置」を動かす仕事でした。その際、今回『決断力』で書いたプロセスを重視する手法を活用してきました。

まだ管理職ではない若い人も、いずれは部下をもつ日がくるでしょう。そのときに意識してもらいたいのは、すべてを自分でやろうとするのではなく、いかに他人や組織を活用できるかです。

こう話すと、部下を自分の駒のようにこき使うイメージをもつ人がいるかもしれません。とくに政治家には、官僚を自分の手足のように酷使する人がいますから。

でもそうではなくて、正解を導くための組織を構築し、その組織を実際に動かすことこそがリーダーの真の役割と使命です。自分だけが走り回っていてはいけないのです。そのように振る舞うのは専門家、学者、コメンテーターです。

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