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note加藤貞顕CEO「ネットの誹謗中傷はデジタルテクノロジーで解決できる」

2021年07月22日 公開

加藤貞顕(note株式会社代表取締役CEO)

 

ネット空間の課題はテクノロジーで解決できる

――過去の閲覧データからユーザーが関心をもちそうな記事をおすすめする「レコメンデーション」は、便利な機能である一方で、自分が普段はみない記事をあらかじめ遮断する「フィルターバブル」が生じるといわれています。これではユーザーは同じ傾向の記事ばかりを読むことにならないでしょうか。

【加藤】もっともなご指摘で、フィルターバブルは極力避ける必要があるでしょう。ただし僕は、その問題もテクノロジーで解決できると考えているんです。

将来的には、ユーザーの過去の傾向を踏まえてコンテンツをおすすめするのと同時に、その人が普段は触れないコンテンツを織り交ぜるように演出することは可能です。実際にYouTubeやNetflixは、そのあたりにかなりうまく対処しているようにみえます。

――アルゴリズムを構築する際、人間の主観が反映される側面はありませんか。

【加藤】昔はそういう傾向もあったんですが、いまは変わってきています。AIの強さが話題になった将棋を例に考えてみましょう。かつては、プログラミングする人のパーソナリティが影響する面はありました。

というのは、当時のプログラマーはプログラムを通じてソフトに将棋の指し方を教えていたため、プロ棋士ほどではなくとも、相当な腕前が必要でした。しかしAI技術が進歩したいまでは、プログラマーの将棋の腕と、開発する将棋ソフトの強さは比例しません。

すでにプロ棋士を打ち負かすソフトも生まれていますが、もちろんプログラマーがプロを上回る棋力をもっていたわけではありません。プログラムの作り手がソフトに教えるのは、将棋そのものではなく「将棋の学び方」になったのです。それさえ教えて、あとは大量のデータを用意するとAIが自分で学んで強くなっていきます。

同じようにnoteでも、たとえばですが「記事を読んだ人が喜ぶ」「より長い時間読むことができる」といった目的に沿ってAIを学習させることができるでしょう。その過程はきわめて中立的で、特定の思想が反映されることはありません。

――将棋や囲碁でプロ棋士に勝利したソフトには、AIのなかでもディープラーニング(深層学習)という高度な手法を用いているそうですね。

【加藤】ディープラーニングは、AI開発における有力な手法の一つです。グーグル傘下のディープマインド社が開発し、トップ棋士に勝利したAI囲碁ソフト「アルファ碁」にも、この手法が使われました。僕たちがアルファ碁ほどの莫大な開発費を投じるのは現実的に難しいですが、noteもAIを活用してより良いシステムを構築していきます。

 

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