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韓国への嫌悪感が、日本の没落を早める…韓国を侮ってはいけない理由

2021年07月27日 公開
2022年07月08日 更新

小倉紀蔵(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)

 

日本の人材育成は、韓国に絶対にかなわない

接点がなくなることで困るのは日韓のどちらなのか。もちろん両方である。特に日本は21世紀に、韓国という理解者を失って朝鮮半島全体を敵としてしまえば、徹底的に没落すると予測される。特に日本が失敗しているのは、次世代の人材育成である。

グローバルで優秀な人材の育成という分野では、日本は中国はもちろんのこと、韓国にも絶対的にかなわない。これはわたしが大学という現場で実感していることだ。すでにまったく勝負にならないのである。

人類全体の平和と正義のために、いま、自己が全力を挙げてなにをやらねばならないか。自国や世界を変革するためにいま、自分はどのような能力を培うべきか、という根本において、日本の大学生は韓国に比べてあまりにも劣っている。

自己と世界を媒介する「国家」や「社会」という項が、日本の若者には存在しないからなのだと思う。日本人の若者に「国家」や「社会」というリアリティがないのは、そういうものを学校・メディア・家庭が不可視にしているからである。特に国家は、存在感がほとんどないといってよい。

それに対して韓国では、学校・メディア・家庭で執拗に国家の存在が強調される。徴兵制によって、男性は国家に軍事的な奉仕をしなくてはならないのが大きい。愛国心がつねに善なるものとして子どものときから注入される。

個人がグローバルな価値と無媒介に向き合うのではなく、国家がつねに媒介項として存在しているのだ。そこが日本と韓国の違いである。嫌韓派が主張する自国(日本)への根拠なき自信は、いったいどこから来るのだろうか。

わたしには、嫌韓派の言説は虚しい空砲のようにしか思えない。法的にも道徳志向的にも、韓国の現実変革運動が世界に訴える力を侮ってはならない。根拠のまったくない過信は、日本の沈没を早めているだけではないのか。

 

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