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三宅健さん「誰しもが無知ゆえに誤解をしてしまうことがあるはず」

2022年03月01日 公開

三宅健(俳優・タレント)

三宅健

舞台『陰陽師 生成り姫』が、東京・新橋演舞場(2022年2月22日~3月12日)と京都・南座(3月18日~24日)で上演される。原作はこれまでも映画や漫画、歌舞伎などの題材となった夢枕獏氏の人気同名小説。舞台は平安時代、聡明な陰陽師・安倍晴明と、その友人で管弦の名手である源博雅が、心の奥に潜む鬼に蝕まれた徳子姫を救うために奔走する物語だ。

今回、主演の安倍晴明役を務める俳優の三宅健さんが、舞台などのエンタメで重要になる多様性について語る。

※本稿は『Voice』2022年3⽉号より抜粋・編集したものです。

 

すべての人を楽しませるエンタメに

――三宅さんは、音楽や演技以外の分野でも活躍されています。昨年の東京オリンピックではNHKユニバーサル番組のメインパーソナリティを担当するなど、手話を生かした仕事もされていますね。10年以上前から手話を習っているとうかがっています。

【三宅】手話を学ぶことでろう文化を知ることができましたし、ろう者が日ごろ何で困り、何を必要としているかを実感するようになりました。

たとえば、ろう者の方が演劇を観たいと思っても、字幕がないので演者が何を話しているのかわかりません。それならば、事前に脚本のようなものを貸し出しても良いはずだと思います。あらかじめ内容を把握したうえで芝居を観ていただければ、演者が何をしているかが伝わりやすいと思います。

これは僕自身の願いなのですが、エンターテインメントはどんな人でも楽しめるものであってほしいんです。もちろんエンタメに限らず、社会全体が多様性をもっと受け入れられたらいいと思っています。

――すべての人を楽しませたいという三宅さんの姿勢は、エンタメの原点ともいえそうです。

【三宅】テレビや映画、そして舞台でも、一つの作品を制作するには膨大な時間と予算がかかります。すべての作品に字幕をつけるといっても一朝一夕にはできないことは、僕も現場の人間として理解しています。

それでも、技術の進歩でさまざまな可能性が広がっているのも事実だと思います。いまでは生放送でも、最小限のタイムラグで字幕の対応ができるようになっています。世の中が変わるのは簡単ではないけれど、少しずつでも前進していくことが大切ではないでしょうか。

――障害のある方々に普段から配慮が及ぶ人は、意外と多くないかもしれません。

【三宅】それは単純に、接する機会がないからだと思います。僕は手話を学ぶ機会には恵まれましたが、ほかの分野では知らないことが山ほどあります。生きていくうえで、誰しもが無知ゆえに誤解をしてしまうことがあるはずです。だからこそ、互いにさまざまな文化を知る努力が大切だと思います。

――三宅さんがバラエティー番組などでも活躍されている様子を観ていると、まさに今作で演じられる安倍晴明のように、共演者の方々と良い意味でフラットに接しているように感じます。

【三宅】手話の学習を通して、物事を思い込みで決めつけないということも学びました。ろう者とコミュニケーションをとると、いつも先入観に縛られない大切さを感じます。

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