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日本人のプーチン妄想...「独裁者」を「英雄」にするプロパガンダ

2022年02月28日 公開

グレンコ・アンドリー(ウクライナ出身/国際政治学者)

グレンコ・アンドリー『NATOの教訓』

侵略戦争というまさかの暴挙に踏み切ったロシア。私たちは、プーチン大統領の頭の中を読み誤っていた。ウクライナ人学者による日本への緊急警告。

※本稿は、グレンコ・アンドリー 著『NATOの教訓』(PHP新書)の内容を、一部再編集したものです。

 

あまりにも現実からかけ離れたプーチン礼賛

日本の保守層の一部では、重度な「プーチン妄想」が蔓延している。妄想を意図的に拡散している人物も何名かいる。

とくに日本では安倍首相、アメリカではトランプ大統領が在任中の時代に、プーチンを褒めたたえるプロパガンダが繰り返された。

日本の新聞や雑誌では「安倍・プーチンの蜜月関係」「プーチンとトランプが惹かれ合う理由」などの表現が記事に記されていた。

プーチンを礼賛するプロパガンダによれば、プーチンは日米首脳と仲が良く、共に中国包囲網を作る、という。このあまりにも現実からかけ離れた妄想には、仰天するしかない。

また、プーチンを「国際金融資本」やら「ディープステート(影の政府)」と戦う英雄のように見なす陰謀論も蔓延していた。本来、この手の陰謀論を信じる人は「頭の悪い人」と一笑に付せば済む話だが、最近はSNS(ソーシャルメディア)で陰謀論が広まり過ぎて実害が出てしまうので、笑えない。

とくに陰謀論が日本の保守層に広まると、自分のことを愛国者だと信じる人達が日本を守るつもりで日本に害を与えてしまうので、注意が必要だ。

 

陰謀論を信じた人は現実の敵を見なくなる

まず「プーチンは英雄」という設定の陰謀論について。プーチン英雄論が広まることの害は、保守層がロシアを警戒しなくなることだ。あたかも、ロシアが日本の味方であるかのような錯誤に陥ってしまうのだ。

現実には、ロシアが日本にとって危険な敵国であり、中国に次ぐ、2番目に大きな脅威である。ロシアに対する危機感と対ロシア防衛は、日本の安全保障の大事な部分である。その点をよく理解して警戒を怠ってはいけないのに、プーチン英雄論はロシアに対する危機感を失わせてしまう。

もう一つの危険性は、陰謀論が広がり過ぎると、それを信じる人達が架空の敵に集中してしまい、現実の敵について考えなくなることだ。日本の「現実の敵」は中国、ロシア、北朝鮮、そして国内の反日勢力である。

しかし陰謀論を信じた人達は現実の敵を見なくなる。そして「架空の敵」(国際金融資本、ディープステート、ユダヤ、ロスチャイルド、ロックフェラー、フリーメーソン、イルミナティ、宇宙人、地底人、爬虫類人など)ばかりに関心を集中させる。

必然的に現実の敵に対する認識は薄れ、備えができなくなる。この状態は中ロ朝にとっては好都合だ。したがって、日本の保守層が現実離れした陰謀論に陥ることを歓迎する。

ロシアは昔から「陰謀論の生産工場」と言われている。それには明白な理由がある。自由・民主主義諸国の国民が陰謀論に陥って架空の敵に注目し、現実の敵であるロシアを認識しなくなることがロシアにとって望ましい。

だからロシアは地政学的な戦略の一環として様々な陰謀論を意図的に作成し、世界中に広めている。

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