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「祓い」の疑似体験? 令和に『呪術廻戦』がヒットした納得の理由

2022年03月16日 公開

小松和彦(国際日本文化研究センター名誉教授・元所長)

小松和彦

大ヒット漫画・アニメ『鬼滅の刃』『呪術廻戦』。両作の題材である「鬼」と「呪い」という概念の意外な共通点とは、その現代的意味とは――。シャーマニズムや異界・妖怪研究の第一人者で、国際日本文化研究センター名誉教授・元所長の小松和彦氏が、両作で描かれる世界観とともに考察する。

聞き手:Voice編集部(中西史也)

※本稿は『Voice』2022年4⽉号より抜粋・編集したものです。

 

「ケガレ」を祓うことによるカタルシス

――大人気漫画『呪術廻戦』は、2月には映画『劇場版 呪術廻戦0』の興行収入が100億円を超えるなど、破竹の勢いでヒットを続けています。同作は、先生の研究対象である「呪い」を題材にしていますが、現在注目されている要因をどう考察できますか。

【小松】昨今の世の中に「ケガレ」が蔓延している証左ではないでしょうか。「ケガレ」とは、人間関係のこじれや社会の歪みなど、この世の矛盾を象徴する宗教的な言葉です。ところが、そうした理不尽な矛盾や歪みを正そうとしても、現代の複雑な社会課題はなかなか解決しない。そこで神秘的な方法に頼ることが、「呪術」であり「呪い」なわけです。

鬱屈した現実の問題を『呪術廻戦』に登場する呪霊になぞらえれば、読者や観客は作中のキャラクターを通じて「祓う」姿を疑似体験し、カタルシス(精神の浄化)を得ているのだと思います。神秘的な力が効果をもつファンタジーの世界に没入することで、自分たちの感情を託すことができるわけです。

――前回のインタビュー(『Voice』2021年3月号)では、コロナ禍の閉塞した社会のなかで『鬼滅の刃』がカタルシスの役割を担っているとお話しされていましたが、共通する文脈のように思います。

【小松】コロナ禍では「科学の力」の重要性が再認識された一方で、その限界も露呈しました。科学によって問題を解決できないとなれば、人びとは心理と深く関わる神秘的な方法にすがる。その象徴こそが、『鬼滅』や『呪術』で描かれているように、鬼を退治したり呪霊を祓ったりする行為なのでしょう。ちなみに「祓う」の語源は、外敵を追い払う意味での「払う」や、恨みを晴らすなどに使う「晴らす」と同じです。

――そう考えると、「呪い」と「鬼」は非常に親和性の高い概念といえそうです。

【小松】人を「鬼」に変えるものこそが「呪いの心」ですからね。現世に怨念を抱いた菅原道真の怨霊は、これまで鬼の姿で描かれてきました。怨霊とは災禍や疫病をもたらしたり、キツネやヘビといった動物に化けて出てきたりする存在です。でもそうした動物は見かけ上は怨霊としてわかりづらいので、怨霊のわかりやすく典型的な姿として「鬼」がメタファーとなったのです。

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