素材や手作りにこだわる「グルメバーガー」専門店として業界をリードするブラザーズ(BROZERS')は、コロナ禍において開業以来最高の月間売上を記録した。その成功の背後には、現場のスタッフたちと共有する「ストーリー」があったと、創業者・代表取締役の北浦明雄氏は語る。
※本稿は、北浦明雄著『Zの精神 日本一のグルメバーガー店の最後までやり通す経営哲学』(PHPエディターズ・グループ)より一部抜粋・編集したものです。
コロナ禍に出した最高売上
新型コロナウイルスは今なお収束していません。2020年初頭以来、「外出自粛」や「ステイホーム」が呼びかけられ、マスクの着用、アルコールでの消毒、ソーシャルディスタンスなど、人々の生活様式は大きく変わりました。コロナ以前と比べて、様々な行動が制限されるようになりました。
飲食店は営業を継続する上で様々な規則を守らざるを得なくなり、営業時間の短縮、酒類販売の禁止、営業自粛など、社会的にも経済的にも非常に困難な事態になりました。
しかしコロナ禍においても、ブラザーズの売上は、人形町本店を含む3店舗で月間の過去最高を更新しました。人形町本店は10年以上目指してきた売上目標を突破することができました。これは開業時の約7倍の売上です。
コロナ禍になってから、まず取り組んだのは資金繰りです。売上減少に伴うコロナ関連の融資が受けやすくなったため、店が潰れないよう潤沢な融資を申し込みました。次の問題は、いつまで続くかわからないこの状況で、どのように営業していくべきかでした。
不利な状況を乗り越えたというストーリーを作ろう
ブラザーズのミッションは「ハンバーガーとサービスを通して、お客さんを元気にする」です。このミッションを果たすため、感染対策を徹底しながらお店を営業し続けるという決断をしました。
「営業短縮や酒類販売禁止という不利な条件の中、過去20年で一番良い売上を出して、このような状況下でも自分たちの行動次第で良い成果を生み出せたという、ブラザーズの歴史として語り継がれるような前例を作ろう」
「過去にこんなことがありながらも乗り越えた、というストーリーを作り、次世代に勇気を与えよう」
「世の中の元気が低下しているこんな時だからこそ、ブラザーズのハンバーガーとサービスを通して、お客さんを元気にしていこう」
このように現場のスタッフを鼓舞し、困難な時期にこそ営業を続ける意義と価値を高めました。
お店を営業し続けるという決断に対して、スタッフが誰一人として反対しなかったことは大きな収穫でした。積極姿勢を崩さず、一生懸命に取り組んでくれたスタッフを誇りに思います。