国土交通省の協力により設置されたゴミ置き場の前で(東雲地域の清掃活動)
素材や手作りにこだわる「グルメバーガー」専門店として業界をリードするブラザーズ(BROZERS')は、創業者・代表取締役の北浦明雄氏による徹底した倫理観に基づく人材育成でも知られる。どのように生きたらよいかというところから始まるその教育理念は、創業20年でスタッフから30人以上の飲食店経営者を輩出した。北浦氏は、「ヘルプ」という考え方によって、世の中に貢献するという意識が養われると語る。
※本稿は、北浦明雄著『Zの精神 日本一のグルメバーガー店の最後までやり通す経営哲学』(PHPエディターズ・グループ)より一部抜粋・編集したものです。
人はたくさんの「ヘルプ」を受けながら生きている
ブラザーズでは、人の役に立ったり、助けたりすることを「ヘルプする」と言います。人生の中で、最も重要な能力は、「ヘルプ能力」といっても過言ではありません。世の中は、たくさんの「ヘルプ」で溢れています。
太陽があることで作物が育ち、その作物を食べることが生きる助けになります。道路があることで車が走ることができ、水道があることで潤沢に水を使うことができます。着る服があることで裸で生活せずにすみます。
家があることで野宿せずにすみ、風呂があることで体の汚れを洗い流すことができます。電気があることで暗い中で生活せずにすみます。布団があることで温かく寝ることができます。
あたりを見回すと全てが自分をヘルプしてくれているわけです。このように、生活する上でたくさんのヘルプを受けているのです。
生きる上でヘルプを受け取っていない人など一人もいません。私たちは、生まれた時点で親や助産師さんからヘルプされています。学校や先生からもヘルプされ、国や地方自治体からもヘルプされ、自分の肉体から離れて死ぬ時も、お坊さんや神父さんに葬式を挙げてもらい、遺体を焼いてもらい、埋葬されます。最後の最後までヘルプは続きます。
人に「ヘルプ」を与えられる存在になろう
それだけ多くのヘルプを受け取る分、与えられたヘルプ以上に、それを上回るヘルプを与えることで、人は生き生きとするものです。人は与えることよりも受け取るものが多いと、なんとなく幸せに感じないものです。
ヘルプする人にこそヘルプはやってきます。与えて、与えて、与えることに意識を注げば、いざという時に与えた分だけ必要なヘルプがやってくるのです。
商売は、どれだけ多くのヘルプを提供できるかによってその価値が決まります。英語で「売ること」を意味するsellやsalesの語源は「与えること」です。
つまり、何かを売るというのは、商品を無理やり押しつけて販売することではなく、与えること、お客さんの決断をヘルプすることなのです。
「仕事がうまくいかなかった」というのは「ヘルプがうまくいかなかった」といえるかもしれません。ヘルプがうまくいかないと、人の気が低下します。逆に、うまく人をヘルプできた時には、気が上昇します。感謝される、喜ばれるというおまけもついてきます。