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色とりどりの花に囲まれた「ガーデン葬」も...多様化する葬儀

釋龍音(僧侶)

2023年02月16日 公開 2024年12月16日 更新

 

ブームが続く「樹木葬」

海洋散骨以上に人気があるのが樹木葬です。

これも「土に還る」がコンセプトで、それに共感する人たちが年々増えているのを実感します。まるで皆、黒い石のお墓から飛び出して、緑ゆたかな森の一角に移りたがっているかのような勢いです。

樹木葬には大きく分けて2つのタイプがあります。

山林に埋葬する里山タイプと、墓地・霊園内の一部をそれ用に造成する、平地タイプです。

里山が、おそらく一般的に思い浮かぶ樹木葬のタイプでしょう。山林の一部を植樹できるように造成し、周囲の自然に馴染むように故人の樹木を植えて、それを墓標とするのです。

平地タイプは、墓地・霊園内の一部を造成し、低い丘のようになだらかに盛り上がった所を緑の芝生で覆い、中央に桜などのシンボルツリーを植えたり、石碑を置いたりしたもの。もしくは平地に低草木や花を植えてガーデン仕様にし、公園に散歩に行くようなイメージで造られたものもあります。

埋葬のしかたも2通りあります。

樹木葬と言いながら、決められた区画に穴を掘って骨壺のまま埋めるところもあれば、布など土中で分解する袋に遺骨を入れて埋めるところもあります。

また、故人の名前や亡くなった日付などを記したプレートをその区画に置くところもあれば、区画を設けず合葬されているところもあり、様々です。

「亡くなって数年間は、故人と特定できるように、その区画(土中)に骨壺のまま置いてほしい」という遺族が多いのでしょう、埋葬して7年間、13年間など墓地によってまちまちですが、しばらく経ってから骨壺を開けて他の遺骨と合葬するところが多く、区画も30センチ四方から1メートル四方まで多岐にわたるため、希望する人は自分の思い描いている樹木葬とイメージが合致するか、見学に行くことをおすすめします。

筆者の写真家の友人は千葉県長生郡にある『森の墓苑』に母親を埋葬しました。

こちらは代表的な里山タイプで、運営管理を公益財団法人日本生態系協会がおこなっています。その協会名からもわかるとおり、生態系の保全を第一に考える環境保護団体で、里山の自然を損なわないかたちでの樹木葬を実践しています。

友人は、両親が離婚し、母親が婚家のお墓に入らないことがはっきりしていたので、亡くなった時にきょうだいで話し合い、予算的にも樹木葬にしようと決めたそうです。

そして『森の墓苑』を選んだ決め手は、そこを訪ねた時、対応してくれた人が「折り目正しかったから」。周囲の自然もすばらしく、協会の理念にも賛同したし、なによりも樹を植える行為が母親を埋葬するのにふさわしいと感じたと言います。

その後、気が向いた時に都内からドライブして母親に会いに行くそうですが、私が聞いて「ほう!」と思ったのは、小さかった苗木が年を経るごとに少しずつ成長し、それが墓標として温かい存在となって、友人を癒していること。

陽光が差し、そよ風に枝葉が揺れるさまを見ると、思わず「また来たよ、お母さん」と呼びかけてしまうとか。そんな癒しを樹木葬が与えてくれるなんて想像もしなかった、と友人は嬉しそうに語るのでした。

次に、平地タイプの代表として都立小平霊園を挙げておきます。

一般的なお墓とはエリアを分けて、霊園の中に樹木葬用の墓地を造ったのが2012年のこと。都立霊園の中ではいち早く樹木葬地の開発に乗り出し、話題になりました。

正式には「樹林型合葬埋蔵施設」と「樹木型合葬埋蔵施設」の2パターンあり、50センチほどの高さに整地された盛り土の上に芝生が青々と茂っています。面積は思ったより広大で、それぞれシンボルツリーが植えられ、献花台と焼香台もあって、その前でお参りするようになっています。

樹林墓地と、樹木墓地の違いは何でしょうか。

樹林墓地にはカロートがあり、そこに遺骨または遺灰を納めます。カロートの底は土で、骨壺には入っていないため、徐々に土壌に混じる仕組みです。

樹木墓地にはカロートはなく、1区画に相当する芝生をはがし、穴を掘って、シルクの袋に入れた遺骨を1体ごと納めます。

どちらも合葬墓ですが、お骨かお遺灰(粉砕骨)かで値段が違うようです。埋葬するには毎年おこなわれる公募に当選する必要があり、2020年の倍率は樹林型が14.4倍、樹木型が1.1倍でした。

このほかバラやカモミールなど色とりどりの花に囲まれた、女性に人気の花壇風のガーデン葬もあります。樹木葬はこれからさらに趣向をこらした自然志向を謳ったもの、環境にやさしいお墓が開発されるでしょう。

それは終活を意識しはじめた中高年層の心をつかみ、生前予約とも結びついて、大きな流れになっていくのではないでしょうか。

 

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