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くらし

「会社に搾取され続ける人・そうでない人」を分ける数学的思考

深沢真太郎(ビジネス数学教育家)

2023年02月14日 公開 2024年12月16日 更新

「先行きがまったく読めない」「成功法則がすぐに陳腐化してしまう」――。そんな現代に求められるのは「自ら深く考え、答えを出していく」こと。そしてそのために不可欠なのが「数学的思考」です。

本稿では、数学的思考を行う上で基本となる、「定義すること」の重要性を、ビジネス数学教育家の深沢真太郎氏が解説します。

※本稿は、深沢真太郎著『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

「休日」を定義してください

おそらくあなたは今後の人生において、机上の数学の問題を解く機会は少ないでしょう。ではいつ定義するという行為を必要とするのか。答えはひとつしかありません。日常生活です。例えば定義は物事を「はっきりさせる」ときに威力を発揮しますが、少し具体例が必要でしょう。

そこで問題です。本稿は思考トレーニングが目的であり、読者であるあなたに考えてもらうことが大事です。

【演習問題】
「休日」を定義してください。

定義とは定めること。「○○とは〜〜である」と言語化する行為です。すなわち、次の1行の空欄を埋める行為に他なりません。

休日とは、○○である。

もちろんここに絶対の正解はありません。100人いれば100通りの顔があるように、100通りの答えがあるでしょう。

休日とは、仕事をしない日である。
休日とは、働くエネルギーを蓄える日である。
休日とは、家族サービスというめんどくさい業務が生じる労働日である。

重要なのは答えそのものではなく、その答えにたどり着くまでのプロセスです。仮にあなたが「休日とは、仕事をしない日である」と定義したとします。その答えは、このような思考により導いたものではないでしょうか。

そうであるもの=「休日」にあるもの = 仕事をしない時間
そうでないもの=「休日」にないもの = 仕事をしている時間

休日にはいっさい仕事をしないというポリシーを持つ人は、おそらくこのようにして休日を定義しています。そして休日には仕事をせず、休日以外の日に仕事をするというはっきりした線引きをして人生を送ることができます。

一般論ですが、「はっきりしている」ことは良いことです。

休日のスタンスがはっきりしている人は、それだけ理想の休日を過ごせる可能性が高いでしょう。

あるいはビジネスにおけるマーケティングでも、そのビジネスの顧客は誰かがはっきりしているほうが戦略も立てやすいはずです。これはまさに顧客を定義する行為に他なりません。

もしあなたが企業で新卒採用の面接官を担当するとしたら、志望動機がはっきりしている学生とそうでない学生では心証が違うでしょう。

ビジネスでもプライベートでも、「はっきりしている」ことはあなたの人生を豊かにする可能性が高いのです。

 

根本から考え直したいときの思考法

定義は「はっきりさせる」こと以外にも威力を発揮する場面があります。繰り返しですが、数学は必ず定義からスタートします。すなわち、もし定義が変わるようなことがあればその数学の議論は根本から変わることを意味します。

例えば、(現実的にはあり得ないと思いますが)もし来年、世界中で三角形の定義が変わるとします。すると何が起こるか。数学者はまた新たに三角形という図形に対する研究を始めるでしょう。

定義を変える →  根本から変わる

これは私たちの日常生活ではよくあることです。例えば先ほどの「休日」の定義について、追加の問題を用意します。

【演習問題】

「休日とは、家族サービスというめんどくさい業務が生じる労働日」と定義している加藤さん(仮名)。あまり休日というものに対してポジティブな印象を持っていない様子です。

この加藤さんに、「休日の家族サービス」にポジティブな意味づけを提案したい。あなたならどんな意味づけを考えますか? 

もしこの加藤さんが休日を憂鬱に感じているとしたら、あまり幸せなこととは言えません。せっかくならポジティブな意味づけをし、楽しく休日を過ごしてほしいものです。「後ろ向き」を「前向き」に変えるというのは、かなりの劇的な変化。実際にそんなことができるものでしょうか。

私の答えはもちろん「YES」です。そしてその手法はもちろん定義を変えること。なぜなら、定義を変えることは根本から変わることを意味するからです。

さっそく私の考えを述べます。

もし加藤さんが家族というものを「安心して仕事に取り組むための基盤」と定義したらどうなるでしょう。家族との関係が悪化することは仕事にも悪影響を及ぼす可能性がある、と考えるのです。

プライベートで夫婦仲が悪い。子供とうまくいっていない。家庭内の空気が悪い。そんな状態が加藤さんの精神にいい影響を及ぼすはずがありません。

それはおそらくプライベート以外の時間にも少なからず悪影響を及ぼすでしょう。家庭とは、実は「いい仕事をするための重要なベース」になっていると考えます。

ビジネスパーソンならお気づきかもしれませんが、これはビジネスにおけるインフラと同じ話です。ITならサーバー、飲食店ならキッチンでしょうか。定期的に投資やメンテナンスをしていないと、ある日突然エラーが起こるかもしれない。それはビジネスにおいて致命的なダメージにつながります。

そこで私なら、「休日とは、ビジネスパーソンとしての投資とメンテナンスをする日」という定義に変えてみては、と加藤さんに提案するでしょう。

休日の過ごし方や家族への接し方が変わり、「家族サービス」という概念が消えてしまうかもしれませんし、そもそも家族なのですから、「サービス」という考え方が間違っているという価値観に変わる可能性もあります。

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人生を変えたければ、定義を変えなさい

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