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なぜ、「変化球の高速化」が進むのか? 大谷翔平のバッティングに隠れた秘密

川村卓(筑波大学体育系准教授)、井脇毅(鍼灸按摩指圧マッサージ師)

2023年08月06日 公開 2024年08月08日 更新

動作解析のスペシャリスト・川村卓氏(筑波大学体育系准教授)は、変化球を投げるうえで重要なのは「真っすぐ」だと語る。その理由とは何なのか? そして近年、バッティング技術の向上によって変化している球種についても、詳細に解説する。

※本稿は、川村卓・井脇毅著「変化球を科学する 「曲がるボール」のメカニズム」(日東書院)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

変化球は大きく2系統に分けられる

大谷翔平選手が投じて話題になっている「スイーパー」、千賀滉大投手や大瀬良大地投手が得意としている「スラッター(スイーパー)」、「スラーブ」など変化球は年々名称が増えています。

一説によると20種類とも30種類とも言われるくらいです。とはいえ変化する方向はある程度決まってきますので、まずは変化球を分類することで整理したいと思います。私が考える変化球とは大きく2つに分類できます。

まずはスライダー・カーブ系で、利き腕と逆方向に変化したり、落下しながら変化する系統です。ここには「スライダー」「カットボール」「カーブ」などが当てはまります。

そしてカーブはさらに「スラーブ(カーブ+スライダー)」「パワーカーブ(高速カーブ)」「スローカーブ」などに分かれます。冒頭の「スイーパー」はスライダーとカットボールの中間球になります。

もう1つはチェンジアップ系(落ちる系)で、回転数が少ないという共通点があります。回転数が少ないため、重力によって落下したり、腕は振っているのにボールが来ないといった変化が起こります。

ここには「ツーシーム」「捻る投げ方のチェンジアップ(捻り系)」「チェンジオブペースのチェンジアップ」「フォークボール」「スプリット」などが当てはまります。

ちなみに千賀投手が投げる「お化けフォーク」はジャイロフォークという近年最もポピュラーになりつつある球種です。また石川柊太投手が投げる「サイドスピンフォーク」は落下よりも真横に変化する球種になります。

 

真っすぐも1つの変化球

変化球を活かすためにはキレがある真っすぐ(ストレート)が必要ですし、真っすぐは「バックスピンが効いた変化球」と捉えることもできます。そのため、まずはよい真っすぐについて説明します。

簡単に言うと、投球されたボールにバックスピンの成分がかかった球種が真っすぐになります。ボールにかかる回転には、バックスピンのほかにサイドスピンやトップスピン、ジャイロスピンなどがあります。

つまり真っすぐには純粋にバックスピンだけがかかっているのではなく、「まっスラ」と呼ばれるスライド回転がかかった真っすぐや、シュート回転している真っすぐも存在します。

そのなかでも、バックスピンの成分が極端に多いボールがよい真っすぐと言えるのです(完全なバックスピンのみがかかったボールはあり得ません)。

もう少し言えば、よい真っすぐというのはホップしているように見える変化球でもあります。まったく変化しないボールはありません。見た目はボールに回転がかかっており、ピッチャーやバッターから見たときに、上方向に向かって変化する球種が、ある意味真っすぐの定義とも言えます。

歴代のプロ野球選手のなかでよい真っすぐを投げていたのは、江川卓氏と藤川球児氏です。この2人のピッチャーは、ずば抜けた真っすぐを投げていました。

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球種はたくさん覚えればよいというものではない

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