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営業の目が段々うつろに...「数値目標ばかり追い続ける企業」の末路

加藤芳久(株式会社ファイブベイ取締役・副社長 )

2023年08月22日 公開

業務の目標をKPIなどで管理している企業は多いでしょう。ですが、数多くの企業風土改革を支援してきた経営コンサルタントの加藤芳久さんは、「営業に数値目標が必要なのはわかるが、それだけだと"やらされ感"を感じ、社員は疲弊してしまう。ノルマ達成を第一にするのではなく、根本から解決するためには組織全体を変える必要がある」と言います。組織改革にはまず何が必要か、解説します。

※本稿は、加藤芳久著『売上を追わずに結果を出すリーダーが見つけた20の法則』(かんき出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

人は数字だけでは、動かない

今は何もかもがオンラインで点数評価されるようになりました。

アマゾンで買い物する際は5つ星で評価し、レストランで食事をしたら食べログで、ホテルに泊まったらホテルの口コミサイトで、宅配便を利用しても口コミサイトで格付けするのが普通です。

その評価は企業や店舗の評判につながり、業績も左右するので、現場の社員たちは今まで以上のサービスを強いられて疲弊しています。

そこでリーダーはやる気を出してもらうためにPDCAサイクルを回そうとか、KPI(重要業績評価指標)で数値管理をして行動してもらおうとします。

数値目標で管理するとたいてい長続きしません。目標の数字を達成したら、次はもう少し高めの数字にして、次はさらに高めの数字にして......という繰り返しだと、仕事がキツくなっていくばかりです。いずれ成長は頭打ちになります。

とくにKPIで管理すると、それ以上の仕事をしなくなります。業務の目標を数値で表して、どの程度まで達成できているのかを評価する指標ではありますが、私はKPIとは「やらされ感製造機」だと思っています。

なかには、「KPI、KPI」と社員がやたらと口にしている企業もあります。確かにそういう企業では社員のパフォーマンスは悪くはありません。

ただ、目標を達成できればそれでよしとなり、それ以上の業務をしようとはしなくなるでしょう。評価される仕事だけをして、評価されない仕事をしなくなるのは人の常です。

KPIがあると自分の数値目標を達成するのが絶対となり、チームの他のメンバーが困っていても興味はなくなります。それどころか、クライアントやお客様の喜びや満足を置き去りにしがちです。

そのような企業の未来はどうなるでしょうか?

短期的には劇的に業績をアップできるかもしれません。しかし、ゆくゆくは社員が数字に追われて疲れ果てて、クライアントや顧客も離れていく未来が見えます。誰でも、嫌々やっている仕事は80点で怒られないギリギリを狙うものです。

やりたい仕事だったら100点でゴールしても、「もっとやりたい」と110点や120点を目指します。KPIで数値の限界を設けないからこそ、人は想像を超えて羽ばたけます。

皆さんは、どちらを目指すチームにしたいでしょうか?

 

氷山モデルを組織論に置き換えると

氷山の一角という言葉があります。

皆さんもご存じかもしれませんが、南極や北極に浮かぶ氷山は海面に出ている部分は10%ぐらいで、残り90%は海の中にあります。

この氷山モデルは、顕在意識、潜在意識(無意識)の説明で使われることが多いのですが、私は組織論に置き換えて氷山モデルを使っています。

氷山全体が社員の行動すべてを表すとします。そのうち、主体的な行動ができているのは目に見える10%です。私は、目に見えない90%の部分こそ大事だと考えています。

部下がやりがいや成長をしっかりと感じられること。そして、その会社で仲間と一緒に働ける喜びを感じられるようなチームワークや関係性があること。そのような喜びやワクワク感が生まれるとモチベーションが高まり、海に沈んでいる氷山が浮上して主体的な行動が増えていきます。

そのやりがいや成長実感、チームワークが生まれる根底にあるのは、企業の理念です。

人はただがむしゃらに働くだけでは働く喜びを感じられません。企業が大切にしている価値観や世の中に貢献しようとする使命に共感し、自分もそれを実現するための一員なのだと自覚したら、働く意義を感じるようになります。

自分のために頑張ったことが会社のためになり、会社のために頑張ったことが世の中のためになり、お客様のためになる。私はこれを「ための一致」と呼んでいます。

「ための一致」が起きたとき、数字に管理されなくても、人は自発的に動くようになります。

人はロボットではないので、「マニュアル通りにやれ」と言われてもやる気は起きませんし、「給料をアップするからもっと働いて」と言われても、最初は嬉々としていてもすぐに効果はなくなります。


<『売上を追わずに結果を出すリーダーが見つけた20の法則』P.30より>

自分の今している仕事が、誰の、何のために役立っているのか。そんな「ための一致」を実感するような環境をリーダーは整えましょう。そうすれば、「やらされ感」が「やりたい感」に変換されます。

こういう話をすると、「それはわかるけど、やりがいを与えるような方法をいろいろ試してもダメだったから、数値目標をつくっているんだ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

誤解を恐れずに言うのであれば、それは本当のやりがいや成長実感につながる方法ではなかったのではないでしょうか。もしくは、部下がやりがいや成長を感じたらすぐにやめてしまって、元に戻ってしまったとも考えられます。

やりがいや成長を感じさせる取り組みは、ずっと続けるからこそ効果が継続します。それこそ、天井知らずに人は成長できます。

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