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生き方

「周囲への気遣いを欠かさない人」ほど人間関係をこじらせる

井上裕之(歯学博士)

2023年12月19日 公開 2024年12月16日 更新

相手に気を遣いすぎて疲れてしまったり、苦手な人と交流することがつらくて関係を断ってしまったり...生きている限り、誰しもが人間関係に悩みを抱くものではないでしょうか。人との関わりに行き詰って悩んでいる人へ、井上裕之さんが語ります。

※本稿は、井上裕之著「なぜかすべてうまくいく 1%の人だけが実行している45の習慣」(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「人間関係=自分関係」と考える

これまでおよそ6万人の方から相談を受けてきましたが、その9割は人間関係についての悩みだと言っても過言ではありません。

上司に認めてもらえない。家族とギクシャクしている。本音を打ち明けられる友だちに巡り会えない...。なかには、「誰かと一緒にいると嫌われてはいけないと気を遣うばかりで疲れてしまう。でも、独りでいるとさびしさに心が凍りつきそうになる。いったいどうしたらいいのでしょうか」と涙ながらに相談される人もいます。

人は独りでは生きられない生き物です。人と繋がりたいという基本的な欲求を持っているのです。誰かを支え、自分もまた誰かに支えられている。こうして他者との関わりを感じるとき、深い歓びが込みあげてくるのです。

その反面、いったん人間関係がうまくいかないと悩み始めると、正体のない呪縛にとらわれ、その渦に溺れてしまったかのように、何もかもうまくいかなくなってしまう人が少なくないようです。溺れた経験のある人は、なぜ溺れたか、知っているでしょう。

本来、人は水に浮くようにできています。ところが頭から水は苦手だと思い込んでいると、必要以上に緊張して全身を硬直させてしまったり、「怖い」と思うあまり手足をムチャクチャに動かし、その結果、バランスを失い、本来持っている浮力が働かなくなって沈んでしまうのです。

静かに漂うようにしていれば自然に浮力が働いて浮かびます。その状態で手足を柔らかく動かせばゆるやかに進み始めます。すると、「あ、自分は泳げた!」という歓びが湧いてきて、水は苦手という意識からするりと脱出できるのです。

人間関係の呪縛に溺れてしまった場合も同じです。人間関係は苦手だと思うばかりに必要以上に緊張してしまったり、相手によく思われたいと思う一心から自然体で振る舞うことを忘れて、余計な力を入れすぎてしまう。その緊張感、過剰な意識が人間関係を膠着させてしまうのです。

気負いすぎずに、思うこと、感じることをできるだけ、率直に伝えるようにしてみましょう。相手にも心があり、感情があることを意識して、相手の心に寄り添うような気持ちで話しかけ、向かい合うようにする。

こういう気持ちを持つだけで人間関係のほとんどの悩みは消えるはず。そうなれば、人間関係の悩みから卒業できることになるのです。

どんな悩みも、原因は相手にあるのではなく、自分にある。これが人間関係の悩みの鉄則だと言ってよいでしょう。こちらが変われば、相手も必ず変わります。相手が変わることだけを望んでいるかぎり、悩みは永遠に消えません。

何よりも先に、自分の意識、行動を変えてみましょう。

 

苦手な人、嫌いな人にこそ感謝する

私はよくこうお話ししています。一生に出会う人を数えてみれば、何百、何千という数になるでしょう。そのすべての人を好きになろうとする必要はないと思います。

出会いは縁だから、とできるだけ出会った人を受け入れるようにしている私ですが、すべての人を受け入れられるか、と言われれば、ちょっと自信はありません。人には生理的な波長があって、これが合わないと生理的にダメだと感じることもあるからです。

なんだか好きになれそうもない、とか、ちょっとむずかしそうという人と出会うと、できるだけつき合わないようにするというのが普通かもしれません。

メールを返さない。留守電があってもコールバックしない。それが2、3回、続けば人間関係は自然に消滅していきます。こうして事実上、人間関係をシャットダウンする人も少なくないでしょう。

でも、これでは、自分を変えることはできません。

イヤな人、苦手な人は避ける。嫌いな人との関係は断つ。こういうやり方は気持ちに負荷をかけない代わりに、自分を磨いたり、進歩させたりする力を引き出すことはありません。

そこからもうひとふんばりして、なぜ、その人が苦手なのか、考えてみるとよいと思います。生理的に苦手だと感じる人は、意外なことに、自分とよく似た性格だったり、同じ方向を目指したりしていることがあるようです。

それも、相手がこちらを凌駕している場合が多い。結果、その人の前では、否応なしに、こちらの未熟さや至らなさを意識させられることになります。だから、直感的に、反発感を抱いてしまうのでしょう。

その気持ちを乗り越えると、よく似ている分だけ通い合うものがあり、深く共感し合える関係になっていくことが実は多いのです。

苦手な人を避けてしまうのも自分の選択です。でも、あと一歩、心を強く持って、苦手な人とあえて向き合い、より深い人間関係を手に入れる。これももう一つの選択肢です。

どちらを選ぶか。決定権はもちろんあなたの手のなかにあります。

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気遣いは相手に対してではなく自分にする

著者紹介

井上裕之(いのうえ・ひろゆき)

歯学博士/経営学博士

医療法人社団いのうえ歯科医院理事長。東京歯科大学大学院修了後、ニューヨーク大学に留学。国内外で研鑽を積み、故郷の北海道・帯広で開業。『たった“ひと言”の影響力』(フォレスト出版)、『好かれる人がやっている 人を惹きつける習慣』(すばる舎)など、著書を86冊出版。累計140万部を突破。

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