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出世したくない若手が、40代で「できない人認定」される危険性

安達裕哉(ティネクト株式会社 代表取締役)

2023年12月18日 公開 2024年09月12日 更新

昨今の若手社員は出世意欲が乏しい傾向がある。しかし、そのスタンスを継続していると中高年になって「仕事ができない人」のレッテルを貼られる可能性があるのだ。若手が「仕事ができる人」と評価されるために必要なこととは? 安達裕哉氏が、コンサルタントとして活躍した経験から語る。

※本稿は、安達裕哉著『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

コンサル会社で部下に課した8つの訓練

私はコンサルティング会社に12年間在籍したが、入社して4年目に管理職となり、それ以来ずっと、部下に仕事を教えてきた。とはいえ、難しいことを指導してきたわけではない。上司から受け継がれ、「ごく当たり前」とされていたことを指導してきただけだ。内容は全部で8つ。

ごくシンプルで、おそらくどこの会社でもやっている、ふつうのことだろう。が、個人的に重要な訓練ばかりであると思っているので、いずれのテーマもじっくり腰を据えて取り組むべきだと思う。

1. 時間管理

時間管理は新人に最初に教える技術であり、すべての仕事の根幹をなす技術だ。手帳の使い方、タスク管理の方法、スケジューラの使い方などの基本的スキルからなる。

時間管理ができず、タスク漏れがあったり納期の遅延を頻繁に起こしたりする人物は、頭がよくても「信用できない」というレッテルを貼られてしまうため、上司が真っ先に教えるスキルだ。

2. 文章力の強化

我々は物書きではなかったが、メールや報告書、提案書、各種資料など、文章力が求められるシーンは非常に多かった。「文章くらい、訓練不要ですよ」と言う方もいたが、たいていの人は文章を書き慣れていないため、文章を書かせてみると「いまひとつ」というものも多い。

メールなど、顧客とやり取りする文章がわかりにくいと、顧客からのクレームに直結する場合もあるので、文章に気をつかうのは当然であった。

具体的な訓練法はさまざまだが、私は「セミナーのテキスト」を片っ端から短く要約させるという訓練をした。小説家を目指すわけではないので、これで十分である。

これは、自社のノウハウを学ぶと同時に文章力も上げることができる。けっこうなボリュームがあり、テキスト数も100近くあったため、部下はさぞかし大変だっただろう。だが、1年も経てば皆それなりの文章が書けるようになる。

3. ディスカッション

ディスカッションは非常に重要なスキルの1つだ。顧客とディスカッションするシーンが多かったコンサルタントの仕事においてはとくに。勘違いされている方も多いのだが、「ディベート」と異なり、「ディスカッション」の目的は相手を論破することではない。相手を打ち負かしてしまっては、まとまるものもまとまらない。

「ディスカッション」は、「相手のプライドを傷つけずにうまく本音を引き出し、自分の言っていることを相手に理解してもらったうえで、ディスカッションの前に出ていた案よりもいい案で合意する」という結果を得るための活動である。

訓練法は極めて地味で、社内で行なわれるディスカッションをひたすら繰り返す。このとき、ディスカッションの目的を知っていれば、比較的、短期間で技術を身につけることが可能だ。

4. 会議の仕切り

いわゆる「ファシリテーション」という技術である。顧客先で会議の進行役を務めるケースが多いため、新卒にも「会議の仕切り」をやらせる。ファシリテーションの目的はさまざまあるが、私は「会議を盛り上げ、全員の意見を引き出す」というゴールを設定していた。

訓練を繰り返すと、新人であっても、「議論が停滞しているが、この人に聞けば打開できる」、「最初からこの人に聞くと結論が出てしまうので、この人には最後に意見を求めよう」といった議長のスキルが身につく。

これは、議長でなく会議のメンバーになったときにも「会議へのうまい参加の仕方」が身につくことになるので、非常に有意義な訓練である。

5. 人前で話すこと

若手にも、積極的にセミナーの講師をやってもらった。もちろん最初は誰でも声が震え、講義どころか挨拶すら満足にできない。しかし、人間の能力はすごいものである。訓練を繰り返すうちに、ほとんど誰であっても、だいたい半年程度で立派に話せるようになる。

訓練法は至ってシンプルである。セミナーの内容を覚え、リハーサルを繰り返すだけ。実際、誰でも講師になるのは可能である。また、人前で話すことに慣れると自信がつくので、たいていのプレゼンテーションは楽にこなせるようになる。

6. 読解力を強化する

知識をつけ、読解力を強化する訓練である。我々が行なっていたのは、これも極めてシンプルな方法で、「月に10冊本を読む」というものだった。

また、人により読書への慣れのレベルが異なるため、私は「どの本を読め」という指定はあえて行なわなかった。なかには小説を読んだり、マンガを読んだりする人もいたが、読まないよりははるかにいい。折を見てどんな本を読んだか発表してもらい、仲間うちでいい本の共有をしたりもした。

7. 自分で考えるクセをつける

部下の相談には基本的に、「あなたはどう思うか?」と聞くことを最初に行なう。これは、上司に質問をする前にあらかじめ自分で意見形成をせねばならず、「自分で考えるクセづけをする」ために有効な訓練であった。

8. 飲みの席でのマナー

コンサルタントは仕事柄、社外の人々との宴席が多い。そのため、飲みの席でのマナーは重要なスキルの1つであった。

社内の飲み会は、社外の飲み会の練習という位置づけであり、部下は上司に酒をついだり、空いた皿やグラスを見つけて注文したりとけっこう忙しい。個人的に、飲みの席は非常に苦手な部類の1つであり、いまでも「嫌なら行かなくてもかまわない」とは思うが、上司や先輩に厳しく言われたことが、社外でかなり役に立ったのも事実である。

最近、「飲み会が嫌だ」と言う若手が多い、とよく聞くが、「社外」での宴席が多い仕事であれば、積極的に上司を誘い、マナーを身につけるのも1つのやり方である。

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