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「業績が悪くても昇給を...」身勝手な社員を生んだ経営者のしくじり

松本順市(ENTOENTO代表)

2023年12月26日 公開 2023年12月26日 更新

 

社員にも分かる賃金制度の重要性

ここまでの説明で、中には「我が社は賃金に関して不平不満を持っている社員はいないから教育は必要ない」と思われている経営者の方もいるかもしれません。しかし、本当に不平不満がないと言い切れるでしょうか。

賃金に対して一切不平不満がない場合、社員は今より賃金が高い別の会社に転職しようとしている可能性があります。

もともと日本人は、賃金に関して交渉をしない特徴があります。これはリクルートワークス研究所の「5カ国リレーション調査(2020年)」によって明らかになっています。社員は賃金に対する不平不満があっても、個別に交渉することはほとんどありません。

そのうえ、賃金に納得できない社員は、建前上の理由を述べて会社を辞めていきます。社員が辞めた建前上の理由と本音の理由が全く違うことは、様々な調査分析のデータで確認できるでしょう。結果として、経営者は賃金に不平不満があるとは分からず、定着率の悪化を招いているのです。

社員に対してどのようなときに賃金が増え、どのようなときに賃金が減るのか、このことが今後は社員教育の一つのテーマとして求められると知っておかなければなりません。この教育を経て、それでも昇給・賞与の決め方に対して不平不満がある社員は、遠慮なく会社に質問できる環境をつくることも必要になります。

賃金制度をつくる会社は、経営者が社員の賃金を増やしてあげたいと思っている会社です。そのため、社員から不平不満と思えるような質問があったとしても、それはこの会社にいたいからこそ質問してきているのであり、とてもありがたいことだと思っていただく必要があります。

賃金制度で賃金を決めた後、その賃金について常に社員が質問できるような環境をつくってあげれば、社員は会社を辞めることはないでしょう。少なくとも多くのアンケート結果にある本音の退職理由「賃金が低いから」で辞める社員は皆無になります。

それ以上に重要なのが、社員が「全社員一緒になって業績を高め、全社員で昇給・昇給を増やそう!」と考えるようになることです。これは経営者の考え方そのものです。つまり、自社の社員として立派な考え方を持った社員に成長させることができます。

賃金の問題は決して口に出してはいけないものではありません。社員の人生にとっても経済的なベースは必要です。そのことを解決するためにも、社員にも分かる賃金制度は必要です。社員は安心して、40年間勤めることができるようになります。その環境を提供するときが来たといえるでしょう。

 

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