「時差ボケでつらいです」SNSでみられる“海外マウント”あるある
2024年03月08日 公開
SNS上で繰り広げられる「マウンティング合戦」。直接的なものから、自虐に見せかけてさりげなく立場の高さや生活の充実ぶりを匂わせる「ステルスマウンティング」まで、さまざまな事例が日々観測されている。
本稿では、3万以上の事例を収集・分析してきたマウンティング研究家がその知見をまとめた『人生が整うマウンティング大全』より、海外出張や海外移住など国際的な要素を用いて自身の優位性をアピールする「グローバルマウント」について一部をご紹介する。
※本稿はマウンティングポリス(著)『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)を一部抜粋・編集したものです。
グローバルマウントとは?
海外留学や海外在住歴といったグローバルな要素を用いて自身の優位性をアピールする行為を「グローバルマウント」と呼ぶ。
ニューヨークやロンドンといった欧米の都市がグローバルマウントの材料として用いられることが多い。その背景には、日本人特有の欧米コンプレックスがあるとされる。
グローバルマウントを展開する人の多くは、「世界では~」「国際的に見ると~」などと述べ、実際には存在していない「グローバル基準」を勝手に創り出し、「自分は世界を知っているぞ」と自慢する傾向がある。
今回は「グローバルマウント」の中から「時差ボケマウント」「海外移住マウント」「空港マウント」について取り上げる。
時差ボケマウント
・昨日、ようやくニューヨーク出張から帰ってこれたのですが、時差ボケで死にそうです。来週の国際会議の資料作成が全然手につかない......
▶時差ボケで苦しんでいることを自虐的に見せつつ、ビジネスパーソンとしてグローバルに活躍している自身の姿を強調する
・ロンドン→ニューヨーク→シカゴ→東京を1週間で回ったせいで、時差ボケのオンパレード。学生時代に夢見た世界一周はこんなんじゃなかった
▶海外出張による時差ボケに悩まされていると愚痴りながら、多忙なスケジュールをこなしていることをアピールする
・今週はシリコンバレーとニューヨークを経由してからのアムステルダムのカンファレンスに出席します。おすすめのレストランなどをご存じの方はぜひ教えてください
▶おすすめのレストラン情報を聞くふりをして、海外のカンファレンスに参加することができる自分の恵まれた立場を見せつける
【解説】「時差ボケでつらい」「海外出張はもう二度としたくない」という発言は、ある種のカモフラージュ。本人は、ビジネスで世界中を飛び回っている自分の姿にある種の"陶酔感"を覚えている。
海外出張先としては、ニューヨーク、パリ、ロンドン、サンフランシスコといった、いかにも欧米っぽい都市が用いられることが多い。
(補足)「時差ボケマウント」投稿のコメント欄には、「私も以前、東京→ロンドン→ヨハネスブルク→ドバイ→東京を1週間で移動したことがあります。あんなフライトはもう二度としたくないですね」などと張り合うマウントおじさんが頻繁に登場する。
他人の投稿のコメント欄でマウントを取ろうとするその積極性は、すべてのビジネスパーソンが見習うべきだろう。
筆者が最近目撃した「時差ボケマウント」の派生系としては、スマホの時計アプリを見れば一目瞭然であるにもかかわらず、「完全に時差のこと忘れてたけど、日本って今何時なんだろう?」などとわざとらしくSNSでつぶやくケースなどが挙げられる。
海外移住マウント
・日本の冬の寒さが苦手で、逃げるようにバルセロナへの移住を決めました。寒さに強い人が本当に羨ましいです
▶「日本の冬の寒さが苦手」というカジュアルな理由で海外移住を決めたことを述べ、自身が経済的に恵まれた立場にあることをほのめかす
・週末はミュンヘンに夫と旅行。欧州はどの国も近くて気軽に旅行できるのが最高です。シェンゲン協定万歳!
▶シェンゲン協定という仕組みの素晴らしさをほめたたえるフリをしながら、欧州に移住した自分の幸せそうな姿を周囲に見せつける
・海外移住して思うけど、こっちのほうがストレスフリーで心地いいよ。いつまで「沈みゆく国」で仕事してるの?
▶海外生活の写真やエピソードをSNSで投稿。日本の未来を憂いつつ、海外移住のメリットを一方的に強調する
【解説】海外移住の文脈ではニューヨークとパリのマウント力が最も高いが、バルセロナやリスボンなどの南欧も人気がある。
また、欧米圏の都市以外では、シンガポールとドバイが富裕層から圧倒的な人気を誇る。移住者の一部は、自身が富裕層であることを醸し出しつつ、移住の目的として「子どもの教育のため」といった大義名分を振りかざす傾向がある。しかし、実際は単なる節税対策であることが多い。
(補足)海外移住後に移住者を待ち受けているのが「海外在住歴マウント」である。
「1年しか住んでないからわからないんでしょうけど」「在住3年じゃ、まだまだお客さん扱いだよ」「私はこの国に10年以上住んでますが、そんな話は聞いたことですね」
といったように、在住歴の長さを武器に持論を展開する「海外在住歴マウント」がさまざまな地域で観測される。十分に注意されたい。
海外移住者の中には「日本はオワコン」と述べ、世界中に生活拠点を分散して持つことの重要性をことさらに強調する人がいる。彼らの多くは「自分は日本という国が好き」「日本を愛しているからこそ僕たちは海外に出る」などと愛国者的な発言をしがちである。
空港マウント
・本日のフライトでサンフランシスコから帰国するはずが、まさかの台風で足止めを食らうとは......参ったな
▶台風の影響で海外の空港で足止めを食らって困り果てていることを報告し、海外渡航中の自身の姿をさりげなく見せつける
・ジョン・F・ケネディ国際空港なう。出発まで少し時間があるので、ラウンジで家族としばしの休息を取っています
▶海外の空港ラウンジで休息を取っていることをSNSで投稿し、家族と海外旅行に訪れている家族ファーストな自分をアピールする
・羽田―ロンドン間の飛行時間は、ロシア上空を飛べた時代は12~13時間だったのですが、今はベーリング海を抜けて北極圏の北米側を迂回するので14~15時間もかかります。全部プーチンのせいだ......
▶自身の仕事が国際情勢にダイレクトに影響を受けていることを垣間見せることで、グローバルなビジネスに携わっている雰囲気を醸し出す
【解説】空港に滞在している自分の姿をSNSで報告するマウンティングのことを「空港マウント」と呼ぶ。ジョン・F・ケネディ国際空港やロンドン・ヒースロー空港といった海外の空港を位置情報にひもづけて、意識の高い写真をSNSに投稿するのが典型的なパターンとされる。
「空港マウント」を展開する人の投稿には「いいね」を欲しがる承認欲求が透けている場合が多く、そのせいで周囲から失笑を買ってしまうことも少なくない。次のような例が挙げられる。
・羽田空港国際ターミナルの混み具合を報告し、「海外に行かれる方はくれぐれもご注意ください」と注意喚起
・「ANAダイヤモンドラウンジ」などの空港ラウンジで、知り合いと遭遇したことをうれしそうに投稿