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生き方

「この歳までに結婚してないと...」苦しい生き方を選ぶ人の共通点

藤野智哉(精神科医)

2023年09月01日 公開

常に"生きづらさ"を抱えている人がいます。自分がダメだから...と責めてしまうのは自分に厳しすぎるからかもしれません。精神科医の藤野智哉さんが、しんどさから抜け出す術を教えてくれます。

※本稿は、藤野智哉著『「誰かのため」に生きすぎない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

あなたにはあなたのつらさがあっていいい

「会社ですごい嫌な人がいて。もう本当にしんどい」
「この間、大切なペットの猫が死んじゃって......つらい」
「子ども産んだら、仕事も家庭もやることいっぱいでめちゃくちゃ大変」

このように、自分のつらさやしんどさ、悩みを話したとします。しかし、世の中にはこんなふうに返してくる人がいます。

「その程度の人はまだましよ。もっと嫌なやついっぱいいるよ。うちの会社の上司のほうがもっと大変なんだから」
「悲しいのはわかるけど、ペットくらいでつらいなんて言っちゃダメよ。親や子どもが死んだわけじゃあるまいし」
「子ども1人なんだから、まだまだ余裕よ。2人目産んだらもっと大変よ。私の姉なんて3人いるから、すっごくハードみたい」

言っている本人には悪気はないのかもしれません。でもね、他人のつらさを勝手に推し量り、「つらさマウント」とるのは禁止です。

つらさやしんどさは比べるものではないし、比べられるものでもありません。あなたにはあなたのつらさがあっていいのです。

あなたのそのつらさや、しんどさを、誰かと比べて我慢する必要はないのです。もちろん、当たり前ですが、世の中には、もっとひどい状態の人や厳しい環境があるのは事実です。

でもだからといって、「あなたのつらさ」を比べて「まだましだから、つらいなんて言っちゃダメ」というのは違います。

あと、よく名言として紹介される言葉に、
「あなたがムダに過ごした今日は、誰かが死ぬほど生きたかった明日」
というものがあります。

「今日を一生懸命生きよう」という意味なのはわかりますが、でも「私がムダにした一日」と「誰かが強く望んだ一日」を比べなくてもいいのにな、とも思います。

あなたがムダに過ごした今日は、誰かが死ぬほど生きたかった明日ではありません。

あなた自身が生き延びた今日を、誰かに恥じる必要はないのです。あなたの気持ちは、他人と比べる必要はなく、あなただけのものです。

つらい気持ちも、しんどい気持ちも、悲しい気持ちも、誰かと比べて我慢したり、「こんなことくらいで」と耐えなくてもいいんですよ 。

 

「自分はスーパーマンじゃない」と認めてあげよう

自分で自分を苦しめている人がめちゃくちゃ多いなと思います。

みなさん自分にとても厳しいです。と僕がこう言うと、「厳しいのは上司です」「厳しいのは世間です」「厳しいのはまわりの人です」と反応が返ってくることも少なくありません。

そうですね。たとえば小さなミスで上司に叱られたとしましょう。自分に厳しい人は「こんなことで叱られるなんて、自分ってダメな奴だな」と落ち込むでしょうが、自分に厳しくない人は「いちいち細かいなあ。あの人、夕方になると機嫌悪くなるのよね」と気にしないかもしれません。

あるいは、独身で自分に厳しい人は「この歳まで結婚してないと、まわりから問題のある人って思われる」とあせるかもしれませんが、自分に厳しくない人なら「まあ、ご縁がなかったらしょうがないよね~」と何も気にしない場合もあります。

まわりの人や状況が厳しいと思うかもしれませんが、実は自分を厳しく追い詰めているのは自分だったりするんですよね。

自分に対して一番期待値が高いのは自分で、叱るのも、責めるのも、落ち込ませるのも自分というパターンってすごく多いです。

だからまずは、「自分はスーパーマンじゃない」ってことを認めることからだと思います。

人って「私ができないのは、がんばっていないからだ」「努力が足りないから、ダメなんだ」って思いがちですが、人間には限界があります。それを認められないから、「がんばりが足りない」「努力が足りない」と自分を責めてしまう。

でも、そもそも「がんばったから、できる」ってことばかりじゃありません。とはいえ、別に「がんばること」を否定しているわけじゃありません。

自分にできる範囲でがんばっていく。できることをやっていくのは素晴らしいことです。

向上心は素敵だし、自分のできる範囲で目指すのはいいけど、無理なレベルのところと比べて現実的じゃないトロフィーをとりにいっちゃうのは、むしろ不要というか、向上心ですらないんじゃないのかなと思います。

今、SNSにはすごい人、優秀な人、美しい人の投稿がたくさんあります。憧れるのはかまわないけど、そうした人たちを自分の道の先に設定すると、苦しくなってしまうでしょう。

彼らは自分の道の先にいるのではなくて、自分ではたどり着けない、どっか遠い場所にいるんです。別に「あなたは、どうやってもあの人になれない」とかネガティブなことを言いたいわけじゃありません。

あなたにはあなたの素晴らしい道、あなただけが到達できる道があります。

自分とは関係のない人と自分を比べて、自分で自分を傷つけたり、苦しめるのはやめませんか?

あなたには、あなたの道を自分らしく歩いていってほしいですね。

 

【藤野智哉(ふじの・ともや)】
1991年生まれ。精神科医。産業医。公認心理師。
秋田大学医学部卒業。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。
学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。
精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。 障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を発信しており、メディアへの出演も多数。

著書に『「自分に生まれてよかった」と思えるようになる本』(幻冬舎)『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス)、『精神科医が教える 生きるのがラクになる脱力レッスン』(三笠書房)などがある。

 

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