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脚組みや頬杖は、悪い姿勢ではない? デスクワークに効く「正しい座り方」

大沼竜也(鍼灸師)

2024年09月24日 公開 2024年12月16日 更新

座っているだけで疲れる。集中力が続かない。つい姿勢が悪くなってしまう...。日々のデスクワークに疲弊している人は多いでしょう。こんなときは、頭で考えるのではなく、体に目を向けるほうが有効です。仕事で本来の力を発揮するための、すぐできる体のセルフケアを鍼灸師の大沼竜也氏が紹介します。

※本稿は、大沼竜也著『心と体のコリをほぐすセルフリセット』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。

 

正しい座り方とは「骨で座る」こと

自分がどのように座っているか、意識したことはあるでしょうか?

背筋はピンとして、脚は閉じて、あごが出ないように...など、なんとなく「よい姿勢」を守ろうとする方は多くいらっしゃいます。その結果長く座っていると、お尻が痛くなったり、足がむずむずしてきたり。そんな状態では集中も続かず、落ち着いて座っていられません。

これは、「正しい座り方」ができていないことが原因です。仕事中に気づいてパッと座り方を変えるだけで、スッと集中できるようになりますし、つらい座り方が今後10年続くのと、それよりちょっとでもよい座り方ができる10年では、人生の質に大きな差が生まれます。誰しもがちょっとした意識を変えるだけで、今よりも確実によくなる。さっそく今から自分の座り方を変えてみましょう。

正しい座り方で、最も大切なことは、「骨で座る」ことです。まずはある程度の固さがある座面、椅子やベンチに座ってみます。座面に触れたお尻の中に、左右ひとつずつ骨があるのがわかるでしょうか。

わかりづらい場合は、お尻を左右に揺らしながら、軽く擦り付けるようにしてみます。これが「坐骨(ざこつ)」という骨で、座るときにはここで座るように、意識します。

この坐骨の前側と後ろ側どちらで座るかで、姿勢が大きく変わります。坐骨の後ろ側に体重を乗せれば、骨盤は後ろに寝て、腰は丸くなります。反対に前面で座れば、骨盤が立ち上がり「よい姿勢」に近づきます。

 

体重を乗せるベストな位置は真ん中

それでは、坐骨の前面で座るように骨盤を前に傾けたり、後面を座面に押し当てて骨盤を寝かせてみましょう。
脱力をしながら動かすことで、最も心地よい姿勢を探します。ベストな位置は後ろ側でも前側でもない、実は真ん中です。

骨盤が寝すぎるのもよくありませんし、反りすぎるのもよくない。東洋の思想で「中庸」というバランスがとれた状態をよしとする考え方は、体にも当てはまります。骨盤を立てるイメージで、小さく揺れつつバランスが保たれている意識を持ちましょう。そこが最も力を使わない、脱力が進むポジションなのです。

ここでお伝えした正しい座り方とは、「身体構造的に正しい座り方」です。「座る」のも身体運動であり、筋肉や骨格がどのように使われているかで、座ることが上手にも下手にもなります。

体がもっている機能を充分に発揮できていない状態は、脳が充分に働いていない状態です。ただ座り方を変えるだけですが、結果として集中力に対する影響はとても大きいものがあります。「集中するのだ!」と気合いで乗り切るより、ただ「正す」だけで、努力感もなく集中力は身につきます。

 

頬杖や脚組みをする動作は血液循環をよくする

長い勤務時間じっとしていられないから、どうしても脚を組んでしまう、頬杖をついてしまう、という話をクライアントから聞きます。悪いことをしているかのように皆さん話してくれますが、大いに結構です。素晴らしい。

そもそもなぜ脚を組んだり、頬杖をつくのかといえば、できるだけその姿勢を保つために筋肉を休めたり伸ばしたりして、血液循環を促そうと無意識にしているからです。寝返りも一緒。子どもって代謝も盛んですが、それと比例して寝返りも凄まじいですよね。

人間は動物であり、生物です。そして生物とは常に活動、代謝をしながら生きています。脚を組み、普通に戻したり、また逆で組んだり。こうした行いは、むしろ体が歪まないように調整してくれるものですので、たくさん組みましょう。ただし、同じ姿勢でいることだけは避けてください。動きが止まり、固定されることは体にとって「悪」です。

「脚を組むと骨盤が歪むのでは?」とよく質問されますが、脚を組むことが悪いのではなく、ずっと同じ姿勢でいることで特定の場所に大きな負担がかかることが、いわゆる「歪み」につながるのです。

例えば、頭を前に倒して、ピクリともしない姿勢のまま60秒カウントしてみてください。1、2、3、4...、かなりつらいですよね。首はつらいし、息は詰まる。動けない状態は人間にとって最大にストレスがかかります。

しかし、私たちは同じようなことを、仕事に集中しながら数十分または数時間行っています。これを週5で、引退するまで続けると考えるとゾッとします。

 

動きが止まらないように、頻繁に組み替える

ですから、無意識に片側ばかりの脚を組んでいるなら、先ほど紹介した基本的な座り方(坐骨で座る)を見直した上で、意図的に反対側の脚も組むようにしましょう。じっとしないことで、体にかかる負担はぐんと減ります。

同じように頬杖もおすすめです。重い頭を支えるのは一苦労で、ずっと下を向く姿勢が続けば、後頭部から首にかけて痛みやコリが生じるのは当然です。首への負担を減らしつつ、ケアの意味も込めた頬杖ですので、大いにすべきなのです。

無意識にしてしまっているのは、怠惰だからでも、気合いが足りないからでもありません。体がそう求めているということは、何か原因があるということ。体の声をキャッチしたら、大切に覚えておいて、自分でケアをするもよし、専門家に相談するもよしです。

 

著者紹介

大沼竜也(おおぬま・たつや)

鍼灸師

大沼鍼灸院長。1991年宮城県生まれ。幼少期にカトリック系の教育を受け、東西文化の融合に対する寛容な視点を培う。旧赤門鍼灸柔整専門学校を卒業後、医療・介護領域での豊富な臨床経験を基盤に、2018年仙台市で大沼鍼灸を開業。身体心理学およびソマティック心理学に基づき、精神領域と身体運動の相互関係を変容させる独自のアプローチを実践し、クライアントの心身のバランスを取り戻すことに貢献している。
また、全国規模でのワークショップやセミナーを主催し、専門家向けの学習プログラム【somatics(ソマティクス)】を展開。一般向けには、レジリエンス(精神的回復力)を高めるセッションプログラムを提供し、多方面から支持を集めている。

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