休日までスマホ漬け...日本人の「休めない脳」の正体
2024年11月07日 公開 2024年12月16日 更新
「働き方改革」の取り組みがスタートして5年、あなたの働き方は本当に変わったでしょうか。きちんと「休日」をとっていますか? 「休日」に、何をして過ごしていますか? 日本人は、「休むこと」も「休日の過ごし方」も下手であると、800社以上の働き方改革を支援してきた越川慎司氏は指摘します。
世界のトップビジネスパーソンが実践している、仕事のパフォーマンスを上げる「休み方」とは、どのようなものなのでしょうか。
※本稿は越川慎司著『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部を抜粋編集したものです。
平日は仕事に追われ、休日はグッタリ
日本人は「休むこと」が下手な国民なのかもしれません。
日頃から、体力を削るように働いているため、週末が近づくと疲れが出て、土日はグッタリとしている......という人も多いのではないでしょうか。
平成26年版厚生労働白書によると、日本人の「休日の過ごし方」のトップ3は男女共に次の項目が占めています。
①何となくスマホを見て過ごす
②動画やテレビを観て過ごす
③何もせずにゴロ寝で過ごす
仕事の疲れが蓄積して、週末は何もやる気が起こらないのかもしれませんが、日本のビジネスパーソンの多くは、身体と心を休めることに休日を費やしています。忙しい仕事から離れて、ボンヤリとできる時間を持つことが、「一番の休日の過ごし方」と考えている人が多いようです。
これに対して、欧米のビジネスパーソンの休日の過ごし方は、スポーツや趣味を楽しみ、友人や家族との時間を大切にする......といった傾向が見られます。
北米では、週末にバーベキュー・パーティーを楽しんだり、家族でキャンプに出かけたりするのが一般的です。ヨーロッパの国々では、サイクリングやハイキングなど、アウトドアのアクティビティが人気を集めています。
欧米のビジネスパーソンが友人や家族とアクティブで充実した休日を過ごしているのに対して、日本のビジネスパーソンは、「一人時間」を大切にしていることが、弊社クロスリバーの調査でわかっています。日本のビジネスパーソンには、「仕事の人間関係を休日に持ち越したくない」という思いがあり、コロナ禍を経験したことで、一人で過ごす時間に慣れたことも影響しているようです。
休むことに罪悪感を持つ日本人
日本人が充実した休日を過ごせない背景には、大きく分けて、次のような二つの理由が考えられます。
【理由①】長時間労働の問題
厚生労働省の調査(2022年)によると、日本人の年間総実労働時間は1700時間を超えています。
減少傾向にあるとはいえ、各企業で働き方改革が進んでいる現在でも、依然として長時間労働が続いています。仕事に追われる日々を送っているため、休日の予定を立てるような余裕が持てないのが現状です。
【理由②】休日に対する意識の問題
弊社が2023年11月に実施した調査(1万7852人対象)では、「休むこと=怠けている」という意識を持っているビジネスパーソンが「61%」を占めており、多くの人が、休むことに対して「罪悪感」や「後ろめたさ」を感じていることが明らかになっています。
世界水準のエリートであるエグゼクティブの休日の過ごし方には、大きな共通点があります。
彼らは、休日を「何もしない時間」と考えるのではなく、「積極的にエネルギーをチャージする時間」(休養)と「知的エネルギーを蓄える時間」(教養)と位置づけているのです。
彼らのような世界水準のビジネスパーソンが休日に求めているのは、心身のエネルギーをチャージすることによって、「自己効力感」を高めることです。自己効力感とは、米国スタンフォード大学教授の心理学者アルバート・バンデューラ博士が提唱した概念で、目標を達成するための能力を自分が持っていると認識することを指します。
シンプルにいえば、「自分ならできる」とか、「きっとうまくいく」と自分の可能性を肯定的に認知できる心理状態のことであり、前向きな気持ちを手に入れ、パワフルに働くことで、仕事の生産性を高めるためには極めて重要な要因となります。
だらだらと時間が過ぎていくのを待つのではなく、自分で決めた休日の過ごし方を主体的に楽しむことで、自己効力感を高めているのです。
充実した休日は仕事の生産性を高める
休日の過ごし方と仕事の生産性には、密接な関係があります。
リクルートワークス研究所の調査によると、休日に趣味や交友関係を充実させている人は、仕事のパフォーマンスが高いことがわかっています。心身ともにリフレッシュできる休日を過ごすと、仕事への意欲や集中力が高まり、結果として生産性の向上につながるのです。
私は、休日を寝て過ごしたり、何もしないでボンヤリとすることを、否定しているわけではありません。疲れを感じているならば、しっかりと休んで疲れを取り除くことが大切ですが、もっと大事なのは、疲れたから休むのではなく、疲れる前に休む......というライフスタイルを手に入れることです。
私はこれを、体力と気力を使い果たさない「温存戦略」と呼んでいます。
温存戦略を取るためには、短い時間で成果が上がる働き方を心がけて、平日の仕事の生産性を上げる必要があります。それが働き方改革の理想的な形であり、そうした働き方を手に入れるための原動力となるのが「しっかり休む」ということなのです。
現代のビジネスパーソンにとって、「休み方改革」を考えることは、これからの働き方に大きな影響を及ぼす重要な課題といえます。