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「休むことに罪悪感を抱く日本人」と「長期バカンスが当然のフランス人」の違い

パスカル・フロリ,セドリック・フロリ,前田康二郎(流創株式会社代表取締役)

2024年12月24日 公開

有給をとるのにも罪悪感を感じ、貴重な休みの日には「家にいてはもったいない」と頑張って外出する...。休みにくい日本の職場では、そのように感じている人も多いのではないでしょうか? 対して長期のバカンスをとるのが当たり前のフランスでは、休暇をとることについてどのように考えられているのでしょうか。

前田康二郎さんが、日本にも長く在住した経験を持つフランス人夫妻、パスカル・フロリさんとセドリック・フロリさんに学んだ休み方について書籍『改定新版 自分らしくはたらく手帳』よりご紹介します。

※本稿は、パスカル・フロリ、セドリック・フロリ、前田康二郎著『改定新版 自分らしくはたらく手帳』(クロスメディア・パブリッシング)を一部抜粋・編集したものです。

 

休暇はもっとよい仕事をするための「手段」

休むことに罪悪感を持つという人がいます。それは、自分の意志ではなく、周囲の環境から何かしらの影響を受けているのだと思います。たとえば上司から「24時間365日、仕事のことを意識してください」と言われると、「休むことはよくない」と間接的に言っているように聞こえることでしょう。

私も会社員時代、部下には「土日のどちらか半日は必ず身体を休めて、体調を崩さないようにしてください」と言っていたことがあります。けれどフロリさんご夫妻の生き方を見ていると、それもフランス式に言えば「余計なお世話」「そこまで言わないと自己管理できない人をなぜ採用したのですか」ということになります。

日本の場合だと、もし部下に何かミスやトラブルがあると、上司が責任をとることが多いので、「あなたがきちんとやってくれないと、私も困る」という意識で、口うるさく言うのだと思います。

一方フランスでは、自分の業務は自己責任の範囲で負うのだから、休み方も本人の自己管理のもとに行ってください、という考え方です。その代わり、ミスやトラブルがあっても、自分の責任になりますよ、ということなのだと思います。

そう考えると、日本のはたらき方にはあまりなく、フランスのはたらき方にはある単語は「自己管理(セルフコントロール)」という言葉になると思います。「自己管理」という観点からすると、当然「休息」も、自分でどのようにコントロールするのかを考えなければいけません。

自分でよい仕事をするためにはどのくらい休まなければいけないのか、あるいはどれくらいまでだったら悪い評価にならない範囲で休めるのか、ということをそれぞれの「自分の頭で」考えることになります。

とはいえ、もし休むことに罪悪感があるというのであれば、「休みは、いつもの同じ環境から少し離れて状況を客観視できる機会」ととらえてはどうでしょうか。仕事が好きで凝りすぎてしまい、非効率で生産性が落ちているということがあったら、偏っていた部分を冷静に見つめ直せるかもしれません。

 

自分のための休暇なのだから、だらだら過ごしたっていい

パスカルさんとの会話は、だいたい週末はどう過ごしていた? という質問から始まります。以前は何かを言うために「ネタ」をつくらなければ、と思っていたのですが、それ自体がそもそもおかしいと思い直し、正直に「寝て過ごしてしまった」「仕事の原稿をずっと書いていました」と言うようになりました。そのように、自分から何も提供できる話がないときは、無理に自分のことを言わずに相手の話を聞きます。

フロリさん一家の休日の過ごし方を聞いていると、自然に触れることを意識して過ごされているようです。バカンスだったらフランスに帰省する以外はリゾート地が多いですし、通常の休日であれば、公園に行ってのんびり過ごされることが多いようです。私が桜の名所などを教えてあげようとしたら、全て知っていて、逆に私が穴場スポットを教えてもらいました。

翻って私は、海外旅行へ行った際は、せっかくがんばって休暇をとったのだからと、分刻みでいろいろなものを見たり食べたりしています。つい、「もったいない精神」が顔を覗かせてしまうのです。都市であれば1日中、あの店であれを食べて、次にこの店のセールに行って......と、せかせかと動きまわります。それはそれでとても楽しいのですが、その一方で休日明けには疲れが残っていたりします。

なぜこうなるかというと、休暇取得期間の長さの違い、ということも大きいでしょう。

数週間近く休暇を連続してとれることもあるセドリックさんに比べ、日本企業であれば、年末年始以外は、年に1回、1週間連続で休みをとれれば御の字。日本は祝日が多く、休みの日数自体は少なくないのですが、みんなが同じ日に休むのであちこち混んでいるうえ、連続した長い休みは取りづらいのが実感だと思います。

だから、「もう次はいつ、こんなに長く休めるかわからないから」と思うと、リフレッシュするための海外旅行でも、あれもこれもと予定を詰め込んでしまうのでしょう。

Le farniente est une merveilleuse occupation. Dommage qu’il faille y renoncer pendant les vacances, l’essentiel étant alors de faire quelque chose.
怠惰に過ごすことはよいことです。何かをしなければならないと思って、 休暇を犠牲にすることはとてもよくないことです。

長期の休みがとれればとれるほど、贅沢な休日の使い方ができて、よりリフレッシュできることは確かです。たとえば「この月は○日間休む」と思い切って決めてしまって、数カ月前からその期間の予定をブロックし、仕事が終わるように業務を管理するのはよい方法だと思います。

またそれが難しい場合でも、心身のリフレッシュができるように、暴飲暴食、買い物などでストレス解消する方法ばかりでなく、心身を落ち着かせるゆったりした場所で、なにもせずに休みを過ごすだけでもよいのではないでしょうか?

今はSNSに写真を載せるためだけに、さして興味もないカフェに行ったり、イベントに参加したり、という人もいるそうです。本当に写真を撮ったり食べ歩きをしたりすることが好きな人なら当然いいのですが、好きでもないのにそのようなことまでして他人にアピールしても、それには終着点がないと思います。

休日まで人に評価されることばかり考えていたら、「自分自身」というものがなくなってしまい、かえって疲れてしまいます。平日は仕事でいろいろな人から評価されているのですから、休日くらいは、自分を「よくがんばった」と褒めてあげて、たまには自分のためだけにだらだら過ごしたっていいのです。

 

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