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海外評価で近畿私大1位に輝いた「立命館大学」 改革力の源はどこにあるのか?

西山昭彦(立命館大学客員教授

2025年01月10日 公開

2024年春の国家公務員総合職試験で早稲田、慶應義塾を抜いて全国3位に登り詰めた立命館大学。急成長の原動力はどこにあるのか? 関西私大トップの改革のモチベーションについて、立命館大学客員教授の西山昭彦氏が近著『立命館がすごい』より紹介する。

※本稿は、西山昭彦著『立命館がすごい』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

World University Rankingsの総合評価

『大学通信』による「2023年 進路指導教諭が評価する大学 改革力が高い大学 全国編」(2023年10月31日、全国の約2000進学校を対象にアンケートを行い、645校から回答)は対象が広く、進学校は有力大学の動向に詳しいのでプロの評価と言える。

そのなかで、立命館大学は改革力で5位と評価されている。

注目したいのはイギリスの「Times Higher Education」の大学ランキング(World University Rankings)の総合評価で、全国の私立6位(SDGsでは2位)、近畿の私立1位だ。また、イギリスのQS(大学評価機関クアクアレリ・シモンズによる国際ランキング)の評価では全国の私立3位である。海外機関として数値を積み上げて客観的評価をしており、私立3位~6位はフェアなランキングと言える。

また、進路指導教諭が評価する大学で、改革力5位は当事者として納得感のあるものだろう。実際に立命館大学は長年改革を継続しているので、それが外部にも認知されていることになる。

 

「挑戦をもっと自由に」

立命館は長期経営ビジョンの策定と全学的な実行に力を入れており、その進捗を常に管理している。現在、「R2030:挑戦をもっと自由に」の下、社会共生価値を創出する次世代研究大学という明快なコンセプトが立てられている。R2030は異なる部署の職員の方と話していても必ず出てくるので、学園内への浸透を感じる。ビジョンや施策が、構成員一人ひとりに自分のものとして捉えられているかは、成功の分岐点である。

 

学閥が見られない

立命館の特徴として、インタビューした職員の皆さんが挙げたのが、目標に向かって教員と職員が互いの役割と強みを活かし、チームで活動する「教職協働」だ。

文部科学省が2022年の大学設置基準の改正で「教員及び事務職員等相互の適切な役割分担の下での協働や組織的な連携体制を確保」とし、教職協働について強調している。立命館では、以前から歴史的に育んできた強みになっている。

教職協働ができていない大学を見ると、教員が上であるという意識、トップほかの重要ポストを教員が独占する、職員が幹部に昇進できない、発言を遠慮するなどの現象が見られる。また、その大学の出身者が多数で、まるで主流派のようになっている大学もある。

これでは構成員の一体化はほど遠く、その分、潜在的な組織力が発揮できない。
他方、立命館は教員は公募で募集しており、出身大学を見ると立命館出身は少なく、全国の多岐にわたる大学出身者がいる。職員は立命館出身が一定数いるが、公募での中途入職が多く、学閥は見られない。

 

教員、職員がイコールパートナー

企業内の学閥の基礎は、新卒入社をベースとした年次別構成にある。同期入社を単位として、(出世はばらばらでも)組織として管理できる。これに中途が加わると、同期的な結束も新卒に比べると弱く、学閥の基盤が固まりにくくなる。同じことがいえるのかもしれない。

教職(職教)がイコールパートナーとしてお互いに尊重し、強みを出し合い、弱みを補い合い、相乗作用でよい結果を出す。大学のあり方はこれに尽きる。

その際、教員の強みの例として、学問で培った課題分析力、専門知識で問題を分析し、解決策の立案に力を発揮できる。職員の強みの例としては、経営管理、対内外の交渉で、大学経営の視点から日々仕事の成果を上げることができる。

 

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