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生き方

40代後半で返り咲いた芸人・マシンガンズが抱いた諦め「他人のピークを羨んでも仕方ない」

マシンガンズ(お笑い芸人)

2025年02月18日 公開 2025年02月18日 更新

芸歴16年以上の漫才師が出場できるお笑い賞レース「THE SECOND ~漫才トーナメント~」の初回大会で準優勝を果たしたマシンガンズ。『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』など00年代後期に流行ったネタ番組でブレイクするも、ブームの終了とともにテレビ露出も減少。15年ほどの低迷期を味わいました。

新たに刊行された著書『もう諦めた でも辞めない』(日経BP)では、そんな紆余曲折あった芸人人生が事細かに語られています。

他人を羨む経験も沢山してきたというお二人ですが、年齢を重ねたからこそ見つけた自分なりに生きていく術とは?お話しを聞かせていただきました。

 

「やりたいこと」や「やりがい」って必要?

――本の中にもありましたが、稼ぎよりも芸人であることを優先してきたそうですね。やりたいことを続けてきたからこそ現在があると思うのですが、一方でやりたいことが見つけられないと悩む若い人も世の中にたくさんいると思うんです。

【西堀】なければないで良いんじゃないですか?大体みんな働きたくないんだから。

【滝沢】スノボして、合コンして、遊んでる方が絶対楽しいですよ(笑)。何か作り出す側になってしまうと、それはそれで地獄なんで。一回でも自分が作ったもので成功体験を味わってしまうと、そっから抜け出せなくなると思うんで。

【西堀】まあせめて、やりたくないことはやんない方がいいですよね。

【滝沢】人間やりたいことなんて、本来ないんですよ。

【西堀】俺なんて今だに焼酎に勝てるものがないですもん。いくら滝沢と漫才やってウケても、焼酎には勝ったことないです。意外とシンプルなことなのかもしれませんよ。みんな「舞台でウケたい」とか言うけど...本当はその後に美味しいお酒を飲みたいだけなんじゃないでしょうか(笑)。

【滝沢】僕は小説も書いたりするんですが、たまに良いところまでいったりするんですよ。いつか報われるかもしれないと思うと辞められなくなって、これ始めなきゃよかったなと思ったりします。その時間を他の楽しいことに使えばよかったのに...でもその世界に入っちゃったらもう戻れない。だから「やりたいことがある」状態もなかなか酷かもしれませんよ。

まあでも、会社勤めの人だったら1日8時間くらい働かれますよね。これがつまんないって一番しんどいですよね。

――おっしゃるように、我慢しながら働いている人も多い世の中だと思います...

【滝沢】仕事を好きになれたら一番いいけど...やっぱり心の底から満足できる状況ってそもそもないんじゃないですか?

【西堀】いや、それはちょっと反論がある。(少し間を置いて)焼酎って裏切ることないから。

――(一同笑い)

【西堀】飲み続けると体を悪くするリスクはあるけど。でも逆に言えば体を悪くするくらいであんなに良い思いができるんですよ!

いや、でもマジでそうじゃないかと思ったんですよ。僕も好きで読書なんかはするけど、一体これが何になるのかと、ふと考えたりします。お金なんかもそう。みんなお金欲しい欲しいって言うけど、稼いで何をしたいと言われたら明確に答えられない人の方が多いんじゃないですか?

【滝沢】まあ、僕はとりあえず子どもが大学卒業するためのお金は必要だなって思うけど。それ以外は特にないかもしれない。

みんなモテたいからいい車に乗りたいとか言うのかもしれないけど、それがなかったら別に軽でもいいし...。

【西堀】僕らは遊びやデートで一番楽しめる若い時にお金を持ってなかったんで、いま持ったって仕方ないんですよ(笑)。車も必要ないし、結婚してますし。年取ってからお金持ってても、温泉と道の駅しか楽しめないですよ!

【滝沢】年取ってからの旅行も、それはそれで大変だよ。だから若いうちに色々行った方が良いですよ。

【西堀】まあ、本当にお金を獲得したい人は大変な仕事も頑張るかもしれないですよね。でも、そうじゃない人が"やりがい"とか言われると、どのぐらいの人がやりがいを感じてるんですかね。

【滝沢】俺はやりがい搾取だと思ってる、世の中は。やりがいを見つけさせて無理やり働かせて。ゴミ清掃員は出世とかないからね。だから自分でモチベーションを見つけていくしかない...。

【西堀】お笑い業界って、売れてる人と売れてない人がいるじゃないですか。でも意外とそれが天秤みたいになってて。売れてる人はお金はあるけど時間がない。売れてない人はお金がないだけで、他は全部持ってる。売れてない芸人の方がプライベートが充実できる(笑)。記者も誰もマークしてないから。

 

お笑いに賭けていたし、待っていた

――年収や肩書きで他人と比較してしまったり、そこから悔しい思いをしたりする方が多いと思うのですが、お二人はそういった経験はありますか?

【西堀】もちろん、羨ましいと思ったことなんていくらでもありますよ。比べない人なんているんですかね。

【滝沢】でも周りから見たら、我々のことを羨ましいって思う人もいるんじゃないですか。それはお互い様ですよ。ただ、僕らは今までお金をもらってなかったけど、大学卒業して20年以上働いてボーナスもしっかりもらって...という人の方がお金は持ってると思うんですよ。

――お二人は『THE SECOND』で準優勝されてから露出も一気に増えたと思います。そんな風に「いつか自分にも順番が回ってきてほしい」と思っている人もきっと多いのではないでしょうか。どこでどうやって待っていたら、自分の番は来るんでしょうかね...

【西堀】一応、賭けてはいましたからね。少ないけど賭けていたし、待っていた。

でも結局のところ、自分じゃどうしようもないことの方が多いですよね。『THE SECOND』の準優勝もラッキーだっただけだと思っていますから。だから辞めずに続けていたら、僕らみたいに何か降ってくるかもしれない。職を変えたら何かあるかもしれない。"かもしれない"の連続かもしれない。

――"かもしれない"を信じてもいいのかもしれないですね...

【西堀】かもしれない。

 

みんな、羨ましいで回っている

――年齢を経て、若い頃より今の方が良いと思えるかどうかも大切だと思うんですが、お二人はどうですか?例えば、戻れるなら20代、30代に戻りたいとかありますか?

【滝沢】金を持ってる前提だったら若い方がいいですよ。

【西堀】でもあの頃金なかったからな~(笑)。

【滝沢】いや、また一からあの20代をやると思ったら、それは嫌だな~、俺も。

――今の人生をもう一回やり直すなら.....

【滝沢・西堀】いやいやいやいやいや!!もう十分です!!

――ということは、今が一番なのかもしれませんね(笑)。

【滝沢】きっとそうですね。まあ成長しているわけではないと思うんですよ。

【西堀】我々は50歳で一番いいときが来たなんて思ってないんです。みんなそれぞれ一番いい時なんか違うんですよね。一番自意識が高い20代とか30代のときに他人を羨んだりするけど、そこで終わりじゃないですからね。他人のピークばっかり見ていても仕方がないというか。

【滝沢】例えば漫画や映画の世界のM-1で優勝したら、もうそこで多分エンディングを迎えると思うんですよ。でも現実は優勝しても人生は続きますから。

実際、有名な賞レースで優勝しても全然仕事がもらえずに名前も知られないままだという人もいるんですよ。優勝したその時は羨ましがられますけど、そこから右肩下がりになってしまったらつらいですし。

【西堀】みんなぐるぐる回ってるんだと思います。羨ましいなって思ってる人も何か羨ましいなって思ってて、その人も何か羨ましいなと思ってる。完全に人を羨んでない人なんてやっぱりいないんですよ。経営者だって金は持っていても、もう少しかっこよく生まれたかったなと思っているかもしれないし。

だからマジでそんな完璧な人なんていないんですよ。みんなぐるぐるぐるぐる、羨ましいで回っているんですよ。

――そうやって人生は繰り返されていくんですね。

【西堀】年齢を重ねて心がタフになったとは思いますね。老害ともいわれますけど(笑)。知ったこっちゃない!老害って言われるくらいの方が元気でいいよ。

【滝沢】ただ、俺らよりもっと上の老害は許せない(笑)!

【西堀】スーパーでブチギレてるおじいさんとかいますからね。元気なのは関心してしまいますが。

【滝沢】なんだあいつ家にいろよって思うけど、それはそれでこっちも怒ってるから(笑)。

【西堀】年を取るとね、じじいの方が厄介。

【滝沢】じじいは厄介。いや、ばばあも厄介だなあ...

 

【マシンガンズ】

西堀亮(にしほり・りょう)
1974年10月4日生まれ、北海道出身

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身

1998年にコンビを結成。10年目を迎える頃に『爆笑レッドカーペット』『エンタの神様』などの出演をきっかけにブレイク。2007年、2008年は2年連続で『M-1グランプリ』準決勝に進出した。2012年、2014年には『THE MANZAI』認定漫才師となる。滝沢は2012年にゴミ収集会社に就職。2018年の『このゴミは収集できません〜ゴミ清掃員が見たあり得ない光景~』など関連著書が多数あり、ゴミの専門家として数々のテレビ番組や講演会などで活躍。西堀は2020年に「身近なヒント発明展」で優良賞を獲得。考案した「靴丸洗い洗濯ネット」が2023年に商品化を果たす。2023年5月の『THE SECOND~漫才トーナメント~』で準優勝し、再び脚光を浴びた。太田プロダクション所属。

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