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社会

「研究で私大トップ3」立命館が手にしたとんでもない大型プロジェクト

西山昭彦(立命館大学客員教授)

2025年02月14日 公開

伊坂忠夫副総長

2024年春の国家公務員総合職試験で早稲田、慶應義塾を抜いて全国3位に浮上した立命館大学。「次世代研究大学」のコンセプトのもとで科研費の採択を伸ばす快進撃に、同大学客員教授の西山昭彦氏が迫る。

 

10分野で科研費トップ10入り

大学の使命は研究と教育である。立命館大学の教育は先に述べたように、学生の在学中の成長に尽力し、結果を出している。

一方で、研究に人一倍力を入れており、「次世代研究大学」というコンセプトで研究の促進を図っている。これまでの知識伝達が中心の教育大学から、研究が教育を牽引し、研究・人材輩出によって地球規模課題の解決に貢献する次世代研究大学へと飛躍を遂げようとしている。

実際、文部科学省「令和6年度科学研究費助成事業(科研費)の配分について」(2024年12月25日)において、新規・継続合わせて669件の採択件数、配分額は過去最高の16億316万円になった。西日本の私立大学で1位の成績だ。10分野でトップ10入りし、「社会学」分野では1位となった。

 

1件当たり5年間で最大55億円の支援

その基礎の上に、1月24日、とんでもない大型プロジェクトが決定した。文部科学省が公募する令和6年度「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」に採択されたのだ。

本事業は、大学ファンドによる国際卓越研究大学への支援と並行して、日本全体の研究力を向上させ、研究大学群の形成を推進することを目的に設置されたもの。地域の中核大学や研究の特定分野に強みを持つ大学が、その強みや特色のある研究力を核とした戦略的経営のもと、他大学との連携や研究活動の国際展開、社会実装の加速などにより大学全体の研究力強化を推進する。

本事業は昨年と今回の2年、採択があり、計25大学が選ばれた。1件当たり5年間で最大55億円を支援する。このうち、私立大学は前年が慶應義塾大学、今年が藤田医科大学と立命館大学のみだ。2校は医学部を持つ大学で、医学部なしの私立は立命館だけである。

 

ウェルビーイングの実現に向けて

立命館大学は、強みであるスポーツ健康科学を核とする「身体圏」という新学術領域の創生に挑戦する。過去20万年にわたり、リアルな世界で適応・進化を続けてきた人類は、リアルとバーチャルが高度に融合した「多重環境化社会」においていかに発展していくかという人類史的課題と、新たな未来創造の機会に直面している。

BKC(びわこ・くさつキャンパス)において、2025年7月に運用開始予定の新施設「立命館先端クロスバース・イノベーションコモンズ(仮称)」に、多重環境を生み出す設備群と、それによる生体・心理への影響を測定する設備群をそろえて身体圏研究を推進することで、誰もがありたい自己を実現でき、ウェルビーイングを追求できる公平な社会の実現を目指していく。

本プロジェクトの推進者である伊坂忠夫副総長は、その意義について「我々の身体は、環境の影響を受けています。これからの時代、物理的な環境のみならず、社会環境ならびにサイバーの環境も含んだ多重環境の中で、個人、集団、社会がこれらの環境を最適化し、積極的に活用することで、ウェルビーイングの実現に向けて発展することが望まれています。

今回、我々が提案している『身体圏研究』は、まさにこのような多重環境の中で、個人、社会がよりウェルビーイングになるための最先端の研究とその成果の社会実装を推進し、世界的にも特長ある研究拠点となることを目指しています」と語る。

今回の採択をドライビングフォースにして、社会課題の解決と創発型人材の育成を通じて社会に貢献し、次世代研究大学へとさらなる飛躍を遂げることが期待される。

 

在学中の成長値を高める

大学の使命は教育と研究である。教育では学業面で国家公務員試験全国3位、私立1位、スポーツ面ではいくつもの種目で全国1位を達成した。研究では私立1~3位、医学部なしでは1位に位置付けられた。

大学の評価をイメージなどで行う傾向もあるが、上の評価はすべて外部の客観的評価である。立命館大学がつねに学生ファーストを地道に追求し、大学の使命を果たしてきた結果にほかならない。政府のほうで偏差値ではなく学生の成長で大学を評価することが検討されているが、それこそ立命館が目指してきた「在学中の成長値を高める」という目標に合致する動きといえる。

学生の成長と学業・スポーツでの活躍、研究推進の両面で立命館大学の進撃は続く。

<地域中核・特色ある研究大学強化促進事業>
https://www.jsps.go.jp/j-chukaku/saitakudaigaku.html

 

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