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話が伝わらないのは「脳タイプ」の違い? コミュニケーションに必要な大前提

西剛志(脳科学者)

2025年09月22日 公開

頼み事をしたとき、あなたは細かく指示を出し、相手も「分かりました!」と快く返事をしてくれた。ところが後日仕上がってきたものは、自分のイメージとはまったく違う――。

「伝えたはずなのに、伝わっていない」。

言葉で説明しても意図が正しく伝わらず、相手とのイメージにズレが生じることがあります。脳科学では、これを「認知のズレ」と呼びます。

では、この「認知のズレ」はなぜ起こるのでしょうか。その原因のひとつは、脳のタイプの違いにあるかもしれません。脳科学者・西剛志さんの書籍『結局、どうしたら伝わるのか』より解説します。

※本稿は、西剛志著『結局、どうしたら伝わるのか』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

人には3つの脳タイプがある

私たちは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、いわゆる五感でさまざまな情報を処理しています。

どれも同じように使っていると思っていますが、手を使って何かをするときに無意識に利き手を使うことが多いように、五感にも優先的に使う感覚器とそうでない感覚器があるのです。

いってみれば利き手ならぬ「利き五感」みたいなものです。

もともと心理学では「心的イメージ」といわれていましたが、私たちは見ているものをリアルに再現しているのではなく、頭の中で自分が感じやすい五感のイメージで再現することがわかっていました。

これらの研究をベースに、私が2000名以上を調べてわかったのが「脳タイプ」です。
脳タイプは大きく3つに分かれます。

日本人の脳タイプを調べると、以下の結果が出ました。

日本人の脳タイプ
⃝視覚タイプ  44%
⃝聴覚タイプ  18%
⃝体感覚タイプ 38%

同じものを見たとしても、脳での処理がそれぞれ違ってきます。インプットしている内容も、その後の記憶のされ方もまったく違ってきます。

各タイプで優先されるのはこれです。

⃝視覚タイプ  →見えているもの
⃝聴覚タイプ  →聞こえるもの
⃝体感覚タイプ →香りや気温、そのときの気持ち(体の動きや感覚)

たとえば、スーパーで「野菜や牛乳を買わないと」と思ったとします。

このとき、野菜と牛乳を写真のように視覚的にイメージする人と、牛乳をごくごく飲む音などの聴覚的なイメージをする人、ごぼうはざらざら、納豆はヌメヌメなど体感覚的に感じる人がいます。

また、職種によっても、発達している脳タイプに特徴があります。アスリートは視覚タイプと体感覚タイプが多く、音楽家には聴覚タイプが多いなど。その特性から分類されるのが脳タイプです。

 

「海はいいね」でイメージするのはどんなこと?

久しぶりにデートで海に行ったときのこと。きれいな海を眺めながら、あなたが「海はやっぱりいいね」と相手に投げかけました。相手も「海はいいね」と返してくれました。

そのとき、お互いに「海のよさを二人で共有できた!」という感情が生まれるかもしれません。でも、この「海はいいね」の「いいね」に込められた二人のイメージは、脳タイプによって違ってきます。

⃝視覚タイプ  →海の青さに反応
⃝聴覚タイプ  →波の音に反応
⃝体感覚タイプ →潮の香りや潮風の心地よさに反応

彼女は聴覚タイプ、彼は体感覚タイプだったとしたら、「海はいいね」と言葉を共有しながら、お互いの脳の中では「波の音が気持ちいい!」(彼女)、「潮風に包まれて最高!」(彼)と、違う印象が脳に浮かび上がっているかもしれません。

でも、言葉にすると「海っていいね」。

言葉だけでは伝えきれないことが存在しているのです。

大事なことは、自分と相手が違う世界を見ていると認識することです。コミュニケーションの大前提としてそのように考えながら、伝えていく、話していくことが必要になります。

世の中には、少数ですがまったく視覚的なイメージができない人もいます。

「りんごをイメージしてください」とお願いしても、「りんご」をイメージできない人がいるのです。私もそういった人を実際に見てきました。このような人を専門用語で「アファンタジア」といいます。

アファンタジアの人は、視覚イメージができない代わりに聴覚イメージが発達しているといわれています。

視覚イメージの人からすると、理解するのが難しいかもしれないですが、このようにタイプによって受け取り方が違うことが多くの研究からもわかっています。相手がどんな脳タイプかを見極めることが必要です。

 

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