資料作成をスムーズに進めるためには、いきなり手を動かすのではなく、事前に「プロセス」を設計することが重要です。工数の見積もり方や他者との役割分担、上司・先輩のチェック時間を考慮した進め方について、書籍『入社1年目から差がつく 資料作成』より解説します。
※本稿は、グロービス, 堤崇士著『入社1年目から差がつく 資料作成』(東洋経済新報社)より一部抜粋・編集したものです。
プロセスを設計する
プロセスの設計とは、実際の資料作成において、どのような作業を、どの順番で行うかを決めることです。
資料作成に必要な知識や情報を集めるのに時間がどれくらいかかるのか、自分だけではなく他の人に手伝ってもらうことがあるのか、資料の校正や修正にどれくらい時間がかかるのか。
これらを含めた工数を、事前に見積もることから始めましょう。
まったく土地勘のないテーマであれば、必要な情報や知識を基本からインプットする必要がありますから、相当工数がかかるはずです。
入門書から読む必要があるかもしれませんし、ネットにはない情報を探す必要があるかもしれません。
一方で、ある程度土地勘のあるテーマであれば、インプットの量は少なくて済むでしょうし、資料も既存のものが使えることもあるでしょう。資料作成だけが仕事ではありませんから、他の仕事との兼ね合いも考えて、どれくらいの時間を割けるのか、考慮しておく必要があります。
また、資料作成を1人で行うのではなく、他の人とも一緒にやるということであれば、それぞれの役割分担もあらかじめ明確に決めておきましょう。
お互いにやるべき作業を明確にするためにも、アウトカムとアウトプット、制約条件をしっかりと共有しておくことが必要です。
社会人1年目の苦い経験から得たこと
ここで、私が社会人1年目だったときに、工数の見積もりで失敗した事例を紹介しましょう。
私の最初の仕事は、保険金の支払い業務でした。
火災や水災、台風などによる事故が起きた際に現場で調査を行い、保険金をお支払いできるか否かを判断します。お支払いできる場合には鑑定人とともにお支払い金額を算定し、お支払いする、というものです。
ある日、火災事故が起きたので報告書を作成することになりました。その頃の私は当然、アウトプットや制約条件のことなどはまだ頭になく、事故が起きると、とりあえず現場に直行していました。
現場に着いてみると見たこともない工作機械や設備が並び、契約者から事故の状況や想定される原因について、説明がなされました。
しかし、何を言っているのかまったくわかりません。私の他に損害額を算定する鑑定人や社内の原因調査の専門家も同席していましたが、彼らは自らの担当部分について、淡々とヒアリングをしていくだけです。
会社に戻り、事故の第一報を報告する事故報告書を作成することになりました。
事故の原因について同行してくれた専門家に話を聞き、損害額の概算を鑑定人に確認しましたが、自分の知識がないために、いざ資料をつくろうにも時間ばかりが過ぎていきます。
まず、わからない専門用語を調べ、事故の原因についても社内の資料などで調べる必要があったのです。
気づくと、1週間以上経過しており、先輩から、「いつ報告書、上がってくるの?」と聞かれる始末。最初にアウトプットや制約条件を明確にしていれば、このようなミスは生じなかったと思います。
他の人に頼れることは頼る
仕事は、1人ですべてのことができるわけではありません。特に初めて取り組む場合は、ゼロから自分ですべてをやろうとすると、どうしても時間が足りなくなってしまいます。
先ほどの例で紹介したように、大半の仕事は様々な専門家と一緒に取り組むものです。
自分1人ですべてを行おうとするのではなく、助けてもらえる人が周囲にいれば、遠慮なく頼っていきましょう。その人は必要な情報のインプットを済ませ、すでに資料を持っているかもしれません。
「先輩が忙しそうなので、話しかけられない」
「調べるのも自分の仕事だと思うので、極力自分でやろうと思っている」
「仕事ができないと思われたらいやですし......」
といったコメントを受講生からもよく聞きます。
恥ずかしながら、私も新人時代、他の人に頼ることなく自分1人で調べて仕上げるのが仕事だと思っていました。今思い返すと、自分が仕事のできない人間だと思われるのが怖かったのだと思います。
その結果、周囲から「彼は仕事を抱え込むので要注意」とレッテルを貼られてしまいました。遅くまで仕事をしている割には、何をやっているかわからない、資料作成も遅い、と散々な評価だったのです。
自分で調べることや自分で考えることはとても大切ですが、仕事はチームで行うものです。
資料作成でも周囲を頼れるときはどんどん頼りましょう。
上司や先輩のチェック時間を考慮する
プロセス設計において、工数の中には、上司や先輩にチェックしてもらう時間も入れておきましょう。
残念ながら、皆さんが作成した資料が一発でOKと言われることはまずありません。上司や先輩からアドバイスをもらいながら修正し、完成させることが大半です。
上司の中には、すぐに時間をとってくれる上司もいれば、なかなか時間をとることができない上司もいるはずです。
彼らの置かれている状況も考慮に入れながら、自分に与えられている時間がどれくらいかを見積もっておくとよいでしょう。
私が先輩からよく言われていたのが、「70%の出来で資料を持って来い」という言葉でした。
100%まで仕上げられる力は新人にはありません。それよりはスピードを重視して、70%まで仕上げて、そのあとは先輩とやり取りしながら完成させていくという考え方です。
私はよく仕事を抱え込んでいましたから、特に口を酸っぱくして「早く出せ!」と言われていました。
振り返れば確かに、私が資料作成に時間をかければかけるほど、先輩や上司が、資料に手を入れる時間がなくなっていたように思います。
日本で仕事をする際、必ずしも個人の仕事の範囲は明確になっていません。
海外では職務記述書があるので、何をどこまでするのか明確なのですが、日本はチームで仕事をすることに重きを置くためか、仕事の区分が曖昧になりがちです。
新人のときは特に、周囲が皆さんの力量を図りかねることもありますので、自分ができる範囲を明確に伝えられるようになるのは大切なことです。