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竹中平蔵・世界で活躍することは、誰にでも可能だ!

竹中平蔵(慶應義塾大学教授/グローバルセキュリティ研究所所長)

2013年03月19日 公開 2022年10月27日 更新

《PHPビジネス新書『竹中流「世界人」のススメ』より》

 

世界を知ると、人生も仕事も楽しくなる

ブラジルという国に行ったことのある人は、はたしてどれだけいるだろうか。

日本にとっては、ちょうど地球の反対側にある国だ。

初めて行ってみると、きっと驚くことだろう。

超近代的な巨大都市がある。そこを闊歩するのは、ニューヨークと同じかそれ以上に多種多様な人々。その人々の間を、日本では見たことのないようなエコでハイテクな車が走り回る。

そして、150万人を超える日系人コミュニティがある。そこには、まさに「古きよき」という言葉がふさわしいような日本の姿がいまだ残っており、タイムスリップしたような気分になる。

従来の「アマゾンの自然とサッカー、サンバの国」というイメージが、いかに一面的であったかがわかるはずだ。

このように、世界は広く、面白い場所があふれているとつくづく思う。

しかも私自身、ブラジルのことを詳しく知るようになったのはつい数年前のことだ。おそらくこの世界には、私がまだまだ知らない興味深い場所がいくつも残されていることだろう。そう考えるだけでワクワクしてくる。

そして、どこにいても世界中のあらゆる情報を得られ、あらゆる場所に数時間から数十時間で行ける今のグローバル化した時代は、きわめて魅力的だと改めて思う。

グローバル化という言葉は、日本においてはしばしば否定的に使われる。
・グローバル化により安い商品が大量に入ってきて、国産の商品が売れなくなる。
・雇用が海外に奪われる。
・ある日突然、自社が海外の企業に買収され、外国人上司がやってくる。

実際、それらは避けては通れないことであり、多くの日本人にとって心配なのは確かだろう。だからこそ、今まで以上の勉強や仕事における実践が必要になるのもまた、事実だ。

だが、そういった側面ばかりを取り上げて、「日本人もグローバル化しなくては生き残れない」という悲壮感ばかりをあおるようでは、仕事も勉強も苦しいだけだ。

一方、グローバル化の負の側面だけでなく、正の側面に目を向ければ、
・グローバル化により国内の製品をどんどん海外に売ることができる。
・海外で働くことができる。
・いろいろな国籍の社員が増え、世界観が広がる。
という、魅力的な面が見えてくるはずだ。

もちろん、そう簡単な話ではない。一番のハードルはおそらく「英語」だろう。

私自身、教育に携わる身として、日本人の英語コンプレックスは非常に根強いと感じる。

最初に断言しておけば、普通の日本人が帰国子女のようなベラベラの英語を話せるようになるのは、まず無理だ。

だが、もう1つ断言しておきたいこと、それは、「そんなに流暢に英語が話せなくとも、十分に世界で活躍できる」ということだ。

そして、英語力は何歳からでも身につく。それは、30歳を過ぎてから英語を身につけた私が保証する。英語を攻略するための私なりの方法も、あとでお伝えするつもりだ。 

だが、何よりも大事なのは、自分はグローバルな時代を生きるのだという覚悟を持つこと。いわば「世界人」としての自覚を持つことだ。

そうしたマインドを持つことが、何よりも重要なのだ。

 

ネイティブでない人の「英語」学習法

◆流暢に話すのではなく、落ち着いて話す

日本人にとってグローバル社会で生きることは、イノベーションと英語との戦いでもある。英語は避けて通れない課題の1つだが、前述したような帰国子女コンプレックスなどもあり、英語を苦にしてグローバル人材になることを諦めてしまう人も多い。

だが、私自身、英語は受験英語しか勉強したことがなかった。私の娘はバイリンガルなので、見ていてうらやましく感じることがあるほどだ。

とはいえ、こんな私でもアメリカの大学に留学することができた。ダボス会議に出て、いろいろな議論もしている。英語弁論部に入ったこともなく、地方の中学、高校で勉強しただけの私でも最低これぐらいのことはできる。バイリンガルでないことは、決してグローバル社会で生きていくハンディにはならないのだ。

以下、ネイティブでない人間が英語をいかに学習すべきかについて、私の体験を交えながらお話ししていこう。

英語を学ぶにあたって、まず肝に銘じてほしいのは、ネイティブでない我々は、どれだけ頑張っても、アメリカ人やイギリス人のように英語を話せるようにはなれないということだ。我々が話すのはあくまで外国人の英語で、そこは割り切って考えればいい。

外国人が英語を話す場合、大事なのは“fluent(流暢)”に話すより、“Steady(落ち着いた、安定した)”な話し方を意識することだ。外国語なのだから、ある程度わからないのは当然で、わかる範囲で努力を積み重ねる。外国人が行う英語の学習法は、これに尽きる。

そして知らない単語に出会ったときは、外で辞書を引く。日本語で話しているときも、「これは英語でなんと言うのだろう」と思ったら、引いてみる。前にも述べたように、とにかく外国語学習では語彙を増やすことが大事で、語彙が増えれば、考える枠組みも自然に広がっていくものだ。

言葉には、すべて意味がある。言葉を覚えるということは、その意味を理解するということでもあるのだ。そこは、不断の努力が必要となる。

だから私は大学で教えるときも、たとえば実質為替レートについて教えるなら、「実質為替レートは英語でなんて言う?」と尋ねるようにしている。裁定取引について教えるなら、「裁定は英語でなんて言う?」と尋ねる。そうして少しずつ、自分に必要な言葉を覚えていってもらうのだ。

語彙を増やすにあたって、朝起きてからの出来事を英語で言ってみるのも効果的だ。どうしても言えないことがあれば、どう言えばいいか調べる。私も若い頃は、1人で歩きながら、よく英語でブツプツ言っていたものだ。周囲からは「変な奴」と思われたかもしれないが、気にする必要はない。

 

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竹中平蔵

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