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生き方

出会ってすぐ「真面目ですね」と決めつけられる理不尽 だって実は僕は(なかむたの「絶望型平和主義」第1話)

なかむた(お笑い芸人)

2026年06月04日 公開 2026年06月04日 更新

「どうせ死ぬよ!」をはじめ、SNS上にアップしているコント動画で人気を集めるお笑い芸人のなかむたさん。穏やかに生きたいがゆえに、ささいなことで考えすぎしまう。その結果、日常に絶望することも少なくないそうです。

連載「絶望型平和主義」では、なかむたさんが生活のなかで考えてしまうこと、人間関係のモヤモヤなど、その頭のなかをエッセイとして綴っていただきます。

第1話は、会って間もない人に「真面目」と言われることへの、なかむたさんの言い分です。

*毎月1回更新予定です

 

「真面目ですね」に引っかかる

「なかむたさんって、真面目ですね」
「なかむたって、真面目だなあ」

知人や仕事相手から、その言葉を言われるたびに「芸人なのに真面目だと思われたということは、貴方つまんないですね、という烙印を押されてしまったんじゃないか?」と心の中で思ってしまう。

そう、僕は一応、吉本興業でお笑い芸人をやっている。自分を面白いと信じて福岡から上京して13年経ったが、芸人として信じられないぐらい結果が出てない。学生時代、勉強や運動がいまいちの僕にとって、たまに言われる「面白い」が命綱だった。そんな命綱を引っ提げて上京してきたが、吉本の養成所の授業でスベりまくり、相方のおかげでウケた時もあったが、自分の力ではひと笑いも取ってないので命綱を捨てた。そこから面白さを諦めて、アボカドと自撮りをして、浅はかな人気を狙ったりしていたら、アボカドと一緒に芸人として腐っていった。

芸歴5年目の時に当時の相方と解散して、ピン芸人になり、人生で初めて自分と真剣に向き合った。すると自分が芸人として、どれだけ崖っぷちのところにいるのかを思い知り「お前はこの5年間で芸人として何をした?言ってみろ.........アボカドと自撮り?.........芸人を辞めたらどうなんだ...!」と、イマジナリー船越英一郎に詰められる夜もあった。

そこから自分なりに「面白い」をたくさん考えた。考えれば考えるほど周りから「真面目」と言われることが増えた。

振り返れば、昔からずっとそうだった。前述した通り学生時代は勉強、運動がいまいちで、真面目に授業に取り組んでも良い点が取れず、野球部で真面目に素振りをしても誰よりも打てなかった。僕の人生における「真面目」とは、常に成果の出ない惨めさとセットだったことを思い出した。

となると、芸人になった今も「真面目」と言われるということは成果が出ないんじゃないか、努力は報われないんじゃないか、芸人のくせに「真面目」が漏れ出てるのは良くないんじゃないか、そんなことになるならもう一度アボカドと自撮りした方がいいんじゃないかと再度血迷いそうになったが、アボカドもそんなこと望んでない、自撮りなんかせずに早く調理してあげて、サラダやポキ丼として食べた方がいいと判断したので、どうにか持ち堪えた。

自分には「真面目な面」、「不真面目な面」、それ以外にも『ライオンのごきげんよう』のあのサイコロぐらい、いやそれ以上に色んな面があると思っている。てか人間全員色んな側面がある。だから「真面目ですね」という言葉に引っかかるし、言い切らずにもっと時間をかけて判断してほしいなと思ってしまう。

 

「真面目ですね」という言葉は関係が浅い人に言われることが多い。数年前に仕事で共演した初対面のタレントさんに本番前挨拶をした。

「ご挨拶失礼します。吉本興業のピン芸人なかむたと言います。本日はよろしくお願いします。」

するとそのタレントさんは目バキバキでこう返してきた。

「〇〇です。よろしくお願いします。芸人さん?何か凄い雰囲気が真面目ですね。芸人さんなら本番はふざけてくださいね。真面目にやられても困るので。」

 

 

嫌いになった。

「真面目ですね」って言った後の、芸人なのに真面目なんだみたいな少し引き攣り気味のあの顔が脳裏にこべりついて取れない。

きっとその人にとって芸人は常に元気にボケて、ツッコんで、1発ギャグを振ったら全力でやって、振ったくせに後処理をしない優しくない人にも全力で「ちょっと待ってくださいよ〜!!」と言って、舞台衣装は蝶ネクタイに半ズボンで、六畳一間の木造アパートでゴツ盛りをオリジナルブランドの発泡酒で流し込み、ユニットバスはカビだらけ、洗濯表示を見ずに洗濯して、しわくちゃになった生乾きの洗濯物を統一性のないハンガーで部屋干ししてるみたいなイメージをいまだに持っているだろうから、僕みたいな、「無害そうな澄ました顔」で、「妙にハキハキとした受け答え」で、「一切ボケようとせずに佇む姿」を見たら「真面目だな」と思っても仕方のないことだと思うし、言った側も悪気はないと思う。

でも僕みたいに「真面目ですね」と言われて気にしてしまう人もいる。もしいつかまた、表面上の情報だけで決めつけて「真面目ですね」という言葉が僕に向かって放たれたら「誠実ですねと決めつけたその言葉は不誠実ですね」とゼロ距離で言いたいと頭の中で何度も思い描いている。

 

僕のなかにある「真面目」と「不真面目」


「何かポーズとってください」とお願いすると渋々ピースをしてくれました

自分で思う「真面目な面」は、できるだけ遅刻をしない、3分程度の遅刻でも相手にLINEをする、期限を守る、などの「欠けたら縁切る3セット」ぐらいなもの。

よく知りもしない人に見えている僕の「真面目な面」の「無害そうな澄ました顔」は、この顔でこの星に生まれたんだからどうしようもないので、もし文句があるなら、タイムマシーン開発して僕の両親が愛し合った日々に乗り込んで僕が生まれてくるのを阻むしかないよと言いたいし、「妙にハキハキとした受け答え」は、ボソボソ喋るよりこの喋り方のほうが相手も気持ちいいだろうなで喋ってるし、その結果過去に初対面の女性に「芸人さんなのに新人のアナウンサーみたいですね」と無垢な顔で残酷な言葉を言われたことがあるけれど変える気はないし、「一切ボケようとせずに佇む姿」に関しては、やる時はやるから放っといてほしい。

そして「不真面目な面」も勿論ある。アルバイトを5つ飛んできたり、消費者金融3社から借金して首が回らなくなって関係が浅い人にお金を借りようとして怒られたこともあるし、どうしようもなくて、みっともない色恋沙汰だってあったし、マッチングアプリで少しでも多くマッチしようとプロフィールに俳優の卵ですと嘘をついてみたり、僕のことを良くしてくれていたバイトリーダーに貧乏漫談を披露して冷蔵庫を奢ってもらったり、お金が無さすぎてファンの方から頂いた差し入れを売って生活費にしたり、すみません「不真面目な面」っていうマイルドな言い方してたんですけど、僕カスなんです。根っこがカスなんです。だから表面上の情報だけで僕を「真面目」な人間と判断するのは危険ですと言いたいんです。何かしらの犯罪に引っかからないでくださいねと言いたいんです。

前述したカスな過ちの、ほとんどが十数年以上前の出来事です。でもやってしまったことは取り返せないし、迷惑をかけてきた人もたくさんいるので、ここ数年は「禊の人生」だと思って生きるようにしました。すると、「芸人なのに真面目ですね」と言われることが増えたというわけです。

過去のカスを必死に隠そうと「禊」に励んだ結果、「真面目」と思われる。僕は、いつの間にか手作りの地獄を作り上げていました。

居心地が良いとは言えないが、人生は好転している気がするので、今後もここに住んで苦しみながら生活を送ろうと思います。

著者紹介

なかむた

お笑い芸人

1994年、福岡県生まれ。吉本興業所属。NSC東京20期生。「どうせ死ぬよ!」をはじめ、SNSに投稿したコント動画が話題を集め、YouTubeチャンネル登録者数は30万人を超える。2026年3月、コンビ「つつがないね」を結成。趣味は漫画、野球観戦、廃墟、散歩。

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