<「顔と名前」の記憶術>「あの人、名前なんだっけ…?」を防ぐツボ
2013年05月21日 公開 2022年12月21日 更新
《PHPビジネス新書『「顔と名前」の記憶術』より》
1.「観察力」を手に入れる
「人の顔がどうしてもおぼえられない」という人は多いものです。たとえば40代、50代の管理職なら「どうしても最近の若い女子社員が、全員同じ顔に見えてしまう……」などと思っているかもしれませんし、逆に20代の若い女子社員は「おじさんてみんな同じで、個性がない」と思っているかもしれません。
その理由として、人は自分と異なるものを区別しにくい、ということがあります。
自分と違うもの、身近でないものの違いを認識するのは、なかなか難しいものです。
たとえば、私たちはなんとなく、日本人と中国人、韓国人の顔つきの違いを区別できますが、アジア人ではない欧米の人たちには、みな同じように見えるといいます。逆に私たちにとって、アフリカ系の人の顔を見分けるのは容易ではありません。それと同じことです。
区別ができなければ、記憶もできません。では、区別するためにはどうするか。そのためには「観察力」を身につける必要があります。
2.おぼえる際の「目のつけ所」を知っておく
「どうしても人の顔と名前がおぼえられない」という人によくあるのが、すべてを漠然とおぼえようとしてしまっていることです。
人には、顔や声、表情や性格など、いろいろな特徴があります。それをすべてごっちゃにしておぼえようとするので、イメージが漠然としたものになってしまうのです。これでは「区別」できません。
一流のソムリエと呼ばれる人たちは、ラベルを隠したワインの銘柄をピタリと当てることができます。素人にはマネのできない芸当ですが、彼らはワインを評価する際にいくつかの目のつけ所をもっているそうです。
たとえば「酸味」はどうか、「香り」はどうか「色」はどうかといった1つひとつの要素を感じ取り、それが強いか弱いか、あるいは何に似ているといった基準から、その銘柄を導き出すのだそうです。ただ漠然と「ワイン」として飲んでいては、区別できません。
人の特徴も同じことです。ですから、人をおぼえる際に目をつけるべき「ツボ」を以下、ご紹介したいと思います。
1. 名前
2. 顔立ち
3. 表情
4. 声
5. 話し方
6. 身ぶり、しぐさ
7. 頭髪
8. 服装、装飾品
9. 体格、体型
10. 性格、人格
11. 頭脳、考え方
12. 会社名、肩書き
13. 学歴
14. 出身地
15. 趣味、特技
16. エピソード
少なくとも、これだけの「情報」を相手はもっているのです。
相手の情報を収集するに当たっては、これらの基準に照らし合わせて、相手の特徴を捉えていけばいいのです。たとえば、「明るい声をした、身ぶりが大げさな、少しやせ気味の、長野県出身の○○さん」といった具合です。
もちろん、この16のツボすべてを意識する必要はありませんし、自分にとっておぼえやすい別のツボがあれば、それを用いればいいと思います。
私の場合は、できるだけその人のリアルな「生情報」がほしいものですから、これらのツボを踏まえつつ、なるべく相手と会話をするように努めています。そうすれば、その人の印象や特徴に「生情報」が加わって肉付けされるので、記憶に残りやすくなるのです。
3.シャーロック・ホームズの観察眼を手に入れる
NHKで放映された新作の海外ドラマ「シャーロック」をご覧になった人がいるかと思います。シャーロック・ホームズの現代版ですが、彼の並はずれた人物観察眼にはつくづく感心させられます。まさに、前述の16のツボ、いや彼の場合はそれ以上のツボをもっているのではないでしょうか。それをもとに、可能な限りその人物の推理をしているように思います。
当然、「あれはフィクションだから――」と笑う人がいるかと思いますが、それにしてもあの観察眼には舌をまきます。
そんなシャーロック・ホームズの観察力に少しでも近づくため、彼のまねをして観察力を磨いてみるのはいかがでしょうか。
たとえば、すいている電車の中で座席に座った際、目の前の座席に座った人を観察します(ただし、あまりジロジロ見ないようにしてください。変に思われたら大変です)。
まず全体(頭からつま先まで)を見て、
「この人は30歳前後のサラリーマン風。ぐっすり眠りこんでいるところから、昨夜の就寝時間は朝方の2~3時あたりか――。
靴は革製で、先っぽは汚れている。このことから、昨夜は彼女と一緒で夜ふかしをしたのではなく、会社の仕事のもち帰りによる夜ふかしか――。
服は○○製、カバンは○○製であることから、ある程度高収入。年収は800万円前後か。30歳前後で年収800万円前後だとすると、かなりのキャリアの持ち主。となると、難易度の高い資格の持ち主か――。
カバンのファスナーに付いている○○のストラップを見ると、関西出身かもしくは彼女からのお土産か――。本人が関西出身でないとすると、彼女が関西か――。
体格は上半身がガツチリで足長。身長は180センチくらい。大学時代に何かスポーツをやっていたはず。バスケットにしてはやや小柄。となると水泳か――。顔を見るとやや色黒。屋内のスポーツでないとしたらラグビー選手だったか――。
いい服、いいカバンを持っているわりにはオシャレに頓着がないということは、性格はあまりクヨクヨ気にしないタイプか――」
と、相手には大変失礼なことではありますが、想像をふくらませて推理していくのです。自由に推理(空想)するのがポイントです。
実際にやってみるとわかるのですが、先ほど紹介した16個の着眼点のうち、いくつかを見ながら推理していることに気づくはずです。
こうして、着眼点を選択して推理することによって、相手の特徴をつかむのがだんだん上手になっていきます。いわば、おぼえる目のつけ所(ツボ)をしっかり身につけていくということです。
その推理が合っているとか合っていないということは問題ではありません。何に目をつけてそう推理(想像)したのかが重要なのです。なぜなら、それが実際に人物を記憶する際に「一瞬で」相手の特徴を把握するのに役立つからです。
記憶力はスポーツと同じです。スポーツは練習すればするほど上達していくように、記憶力も普段から鍛えておくと「本番」で役立つのです。
毎日、毎回やろうと義務化すると疲れますから、思い立ったときで結構です。こんな人物観察を実践してみてください。和製シャーロック・ホームズになれるかもしれません。
椋木修三
(むくのき・おさみ)
心理カウンセラー、日本ブレインアップ代表
1954年島根県生まれ。中央大学中退。日本カウンセリング学会会員の心理カウンセラー。数々のテレビ番組で「記憶の達人」として紹介された実践記憶の体現者。脳の力を最大化する日本ブレインアップジム代表として、速読術、勉強法、暗示法、子育てなどの講演、研修、執筆で活躍中。
主な著書に、『「ビジネス速読」仕事術』(PHPビジネス新書)、『できる人の「1秒」記憶術』(成美堂出版)、『図解 超高速勉強法』(経済界)など。
<書籍紹介>
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