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生き方

自分にとっての幸せって何? 「充実した日々」を手に入れるためにすべきこと

関屋裕希(東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員)

2026年07月10日 公開

SNSやショート動画を眺めても、心に残る満足感は得にくい...そう感じる人は少なくないのではないでしょうか。充実した時間を過ごすには、短期的な快楽だけでなく、長く続く心地よさに目を向けることが大切です。自分らしい「充実」を取り戻すヒントを、書籍『自分に優しい時間の使い方 仕事が終わらないのはだれのせい?』より紹介します。

※本稿は関屋裕希著『自分に優しい時間の使い方 仕事が終わらないのはだれのせい?』(日経BP)より一部を抜粋・再構成したものです。

 

刺激的なドーパミンに踊らされず、持続する「快」に価値を感じてみる

「充実している」とは、どういう状態でしょうか。

多くの人は「生産的で、成果を出している状態」だと考えるでしょう。

けれど、本当の充実とは、目に見える成果ではなく、自分の心の奥に静かにある満ち足りた感覚のことを言います。

私たちの脳は、すぐに手に入る「快」や「報酬」に反応しやすくできています。SNSに「いいね」を押されたときやチェックリストを消化したときに、即時的な報酬(ドーパミン)が出ます。私たちの報酬系が反応すると、ドーパミンが関わる「もっと欲しくなる」作用が起きやすくなります。そうした仕組みが、気づくと私たちの行動をそちらへ寄せていき、私たちの生活を支配しています。

タイパを追求する行動も、この「すぐに成果が出る」、「すぐに効果が得られる」という短期的な報酬の延長線上にある、ととらえることができます。

一方で、ドーパミンだけが私たちの心の報酬ではありません。セロトニンやオキシトシンは、気分の安定や安心感、他者とのつながりと関連しながら、派手ではないけれど、じわじわと満たされる満足感に関わることが知られており、静かで持続する快を与えます。私たちの心が本当に「充実」を感じるのは、こちらのもっと遅れてくる静かな報酬です。

これらの報酬が出るのは、たとえばこのようなときです。

誰かに感謝された瞬間。
一日の終わりに、ふっと心が落ち着いたとき。
大切な人と他愛もない話をして、笑いあった時間。

これらの即時的ではない喜びこそ、私たちを本質的に満たしてくれます。刺激的なドーパミンに踊らされず、静かだけれど持続するほうに意識を向け、価値を感じてみましょう。

私たちは「成果」ではなく、「意味」や「体験」にフォーカスを移す必要があります。

効率よく何かを達成することにだけ価値を置いてしまうと、「非生産的」に思える時間の価値を見落としてしまいます。

何より大切なのは、自分にとっての「充実」を自分で定義することです。

 

自分らしい「充実」とはなにか知ろう

ここで「充実」にフォーカスするための、最初の実験をしてみましょう。

人が日常生活の中で「今」、どんな体験をして、どんな気分で過ごしているのかを、その場その場で記録してもらう経験サンプリング法という心理学の研究手法を活用します。

これは、毎朝1日に5回ほどのランダムな時間にアラームを設定して、そのタイミングで記録していくというやり方です。他には、ランダムなタイミングで通知がきて、気分をチェックできるセルフケアやセルフモニタリングをサポートする機能のあるアプリケーションもありますので、そちらを使っても構いません。

アラームが鳴ったら、次の3点を記録します。

〈その日1日の満足にどれくらい影響するか〉
・そのとき、自分が何をしていたか(行動)
・その行動をとることでの短期的な満足度(1~10で評定)

〈数十年後人生を振り返ったときの満足にどれくらい影響しそうか〉
・その行動をとることでの長期的な満足度(1~10で評定)

長期的な満足度をつけづらいときには、「この時間を3年後などに思い出したときによかったと思えそうか」と考えてみます。仕事をしている日、休日など複数のパターンで、数日データをとってみるとよいでしょう。

自分の行動の中には、短期的な満足度は高いけれど、長期的な満足にはつながらない行動や、短期的な満足度は低いけれど、長期的な満足につながる行動があります。放っておくと、短期的な満足度を優先してしまいがちなので、長期的な満足行動に注目していきます。

そこに、自分らしい「充実」が何なのかを知るヒントがあります。

忙しく働くことが長期的な満足につながる人もいるでしょう。その一方で、自然の中で過ごす時間や、友人と笑いあう時間、何気ない家庭の食卓に満足を感じる人もいるでしょう。大事なのは、他者や社会の「充実」に合わせなくていいということです。

予定に追われる中でも、自分の心がふと満たされる瞬間があること、「自分が選んだ時間を生きている」という実感があるとき、そこに「意味」が宿ります。

 

著者紹介

関屋裕希(せきや・ゆうき)

東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員

博士(心理学)・臨床心理士・公認心理師。早稲田大学文学部心理学専攻卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了後、2012年より現所属にて勤務。働く人のメンタルヘルスを専門に、研究・カウンセリング・企業支援を行う。学生時代は、マインドフルネスを専門とする研究室に在籍し、大学院時代は感情の研究を行う。現在は、ポジティブ心理学、組織心理学、認知行動的アプローチ、マインドフルネス等をベースに、ワーク・エンゲイジメントやウェルビーイング向上プログラムを開発。現場で多くの「ちゃんと休めない」、「時間に追われる」悩みに触れる中で、時間を“効率”だけでなく“体験”として整える重要性を探究している。著書に『感情の問題地図』(共著)、『モチベーションの問題地図』(いずれも技術評論社)ほか。

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