「良いアイデアは出るのに何も決まらない不毛な会議」や「一生懸命提案したのに『困ってないです』と断られる営業」...心当たりはありませんか?実はそれ、質問の投げ方が原因かもしれません。
今回は、ダラダラ会議をシャキッと終わらせる意思決定のルールから、相手の「欲しい!」を引き出す営業の秘訣まで、現場で即使えるプロの質問術を分かりやすくお届けします!
※本稿は、河田真誠著『質問の魔力「よい質問」がすべてを解決する』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
不毛な会議を有意義な会議に変える質問
ある営業戦略会議での話です。
来期の新しい営業戦略について、参加者みんなで意見を出し合っていました。
Aさん「SNSをもっと使って若い世代にアプローチしましょう」
Bさん「いや、既存のお客さんのフォローを強化するほうが効果的でしょ」
Cさん「年に4回の紹介キャンペーンで、紹介制度を広げたらどうでしょうか?」
会議では次々とアイデアが出てきました。
ホワイトボードは様々な提案でいっぱいに。
みんなそれぞれの意見に「うんうん」とうなずきながら、よい雰囲気で会議は進みました。
ところがです。会議の最後に、進行役の部長がこう言いました。
「どれもいい意見ですね。じゃあ、次回の会議でさらに考えましょう」
会議はその言葉で終了。結局、どのアイデアを進めるのかは決まりませんでした。
そして次の会議でも、デジャブーかと思うくらい同じことが繰り返されました。
会議に出たメンバーの間では、「結局、会議をやっても意味はないし、何も変わらない」という空気が広がっていきました。
何でこうなるのか、その理由は決定権者がはっきりしないからです。
組織上は部長が決定者ですが、その部長が自分が決定者であるという意識がなく、会議のための会議になってしまっているわけです。
会議やミーティングをする時、アイデアを出すだけ出して、その後どうなるのかを曖昧にしておくと、参加メンバーのやる気は低下しますし、そもそも何のための会議なのか、ミーティングなのかがわかりません。
そういうことをなくすために、話し合いをする前にこの質問で「決め方を決めておくこと」が大切になります。
「どうやって決める? 誰が決める?」
意思決定の方法がフワっとしていることは仕事の現場でよく起きています。
採用基準が曖昧で、何となく人がよさそうという基準で採用を決めてしまう。
サービスの導入基準が曖昧で、よい部分だけを見て導入を決めてしまう。
意思決定が曖昧なのは「目的が言語化されていない」「数値目標がない」「責任者が明確でない」「感情・空気に流されやすい」「マイナスな選択肢を検討していない」などが理由です。
漠然とした意思決定、ぼんやりした目標などをなくすためにも、意思決定の方法を絞り込むことが必要です。
そのために、狭い視点の質問を使うのです。
「この案件はどうやって決めるか」「誰が決めるのか」を明確にします。
多数決のリスクとは?成果を出す「決断基準」のつくり方
意思決定で気をつけたいことがあります。それは「多数決」です。
ついつい周りを意識して多数決で決めましょうとなりがちですが、多数決をすると適切な決定ができない場合があります。
多数決には大きなリスクがあります。
「一人の天才がいても、残りがダメだと、全体としてダメな選択をする」
「多くの場合、大多数はこれまでと変わらない選択をしがち」
という点です。
決定に関しては、「うまくいくかどうかはやってみないとわからない。だから、私が責任を取るから、これをやってみよう」と言える人が必要なのです。
決断をする上で、選択の基準を決めることにも質問は活用できます。
決める時に「何をもってよしとするか」を決めておくと、アイデアを出すほうもそこが意識できるので、おすすめです。
気をつけないといけないのは多くの会議では「まずは、すぐにできそうなことをやってみましょう」となりやすいことです。
時間がかかるけど、重要なことは後回しにされがちなのです。
その結果、本当に必要な行動には至らず、いつも目先の仕事に追われることになる。
でも今は変化が激しく、前例が通用しにくい時代です。
以前であれば「まだやったことがないこと」は、時期尚早になりやすかったかもしれませんが、今はむしろ「まだやっていないこと」こそ早くやったほうがよい場合がよくあります。
「まだやっていないこと」は可能性の塊なのです。
成果を出す営業マンが使っている必殺の質問術
これまで数多くの営業職の人の相談にのってきました。相談内容はほぼ「どうしたら売れるのか?」についてです。
多くの営業職の人と話してわかったことがあります。それは、売れない営業と売れる営業を分ける質問があるということです。
売れない営業の人がよく使っている質問、それが「何かお困りごとはありますか?」でした。
一見するとお客さんのことを考えた適切な言葉のように思えます。でも、「何かお困りごとはありませんか」には大きな弱点があります。
それは、「ありません」と答えられてしまう可能性があることです。
営業の人から「何かお困りごとはありませんか?」と聞かれたら、たいていの相手は「この人は自分に何かを売り込もうとしているな」と警戒します。なので「ありません」と答えられ、会話がそこで終了してしまう聞き方はNGなのです。
また、相手が困りごとだと認識していないこともあります。そんなものだと思っているなど、困りごと認識をしていない場合も、この質問では回答が得られません。
もし明確な困りごとがあったとしても、すでに対処してしまっていることもあります。
例えば、体のどこかに強い痛みを感じればすぐに病院に行くでしょう。そこまでひどくない痛みであれば市販の薬を買うかもしれません。つまり「どこか痛いところはないですか?」という質問をした場合、あればすでに対処しているし、なければ「ありません」と回答されてしまいます。
では、成績のよい営業はお客さんに対してどんな質問をしているのでしょうか。それがこの質問です。
「どんなことに時間や労力を取られていますか?」
そして、その回答を得たら、続けてこう質問します。
「それが解決できたら(短縮できたら、少なくできたら)いいと思いませんか?」
この質問のよいところは、イエスノーでの回答ではなく、何かしらの回答が得られるところです。また、相手が困りごとだと認識していないことでも「あ、これは困りごとだったんだ」と認識できる点も魅力です。
さきほどの痛みを聞く場合であれば、「どんなことに時間や労力を取られていますか?」という質問に対して、「買い物に行くのがすごく億劫なんです。買い物に時間がかかっています」という回答があれば、その裏には病院に行くほどではないかもしれないひざの痛みがあるかもしれません。
この質問をすることで、本人も気づいていない「悩み」を発見できるのです。
「困りごと」を質問するのではなく、「日常の負担」を質問する。すると、本人も意識していなかったようなことが出てくるかもしれません。
「実は、これに結構時間がかかっていて...」
「毎回、これをするのがすごく手間なんです」
「無意識の不満」が言語化されていきます。
「欲しい」をつくる!未来をイメージさせる質問の設計術
そして、もう一歩進めた質問をします。
「それが解決できたら、どうですか?」
この質問で、「変わった後の未来」をイメージしてもらう。
人は問題を認識し、それが改善された状態をイメージできたときに、「欲しい」が生まれます。
僕もこの質問を実は多用しています。
営業の仕事は、言い換えれば「気づいていない課題」を言語化する仕事でもあります。
うまくいっている営業は、商品を説明するのがうまいのではなく、相手がまだ気づいていない課題を言語化するのがうまいのです。
「何に困っていますか?」では顕在化された問題しか拾えません。
引き出したいのは、例えば「日常の中にある違和感」だったり、「無意識の負担」だったり、「習慣化している非効率なこと」だったりします。
それを引き出すのが、質問の力です。
ここでも重要なのは、「視点を狭めること」です。
「何かお困りごとはありますか?」という質問は広すぎて抽象的すぎる質問です。
一方で、「どんなことに時間を取られていますか?」はテーマが限定されている絞られた質問です。さらに、「それがなくなったらどうですか?」という質問で、未来に視点を絞りこみます。
成果を出している営業はこのように「質問の設計」がうまいのです。