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「モチベーションが低い」から燃え尽き症候群にならない 石井玄×佐伯ポインティの仕事観

PHPオンライン編集部

2026年10月21日 公開

「オードリーのオールナイトニッポン」をはじめ、ニッポン放送の数々のラジオ番組でディレクターを務めてきた石井玄さん。現在は、自身の会社・株式会社玄石を立ち上げ、ラジオやPodcastなどのプロデュースを手がけています。

9月に刊行された新著『「自分でやらない」ほうがうまくいく』では、チームで動いて大きな成果につなげる仕事哲学や思考法を明かしています。

10月9日には発売記念のトーク&サイン会が東京・渋谷のHMVで開催され、ゲストにマルチタレントの佐伯ポインティさんが登壇。話しのプロ二人が会場を沸かせたイベントの模様を、少しだけご紹介します。

 

石井さんにとって仕事は“テトリス”?

実はこれまでほとんど接点がなかったという二人。ポインティさんは新刊を読んで「石井さんがどういう人なのか伝わってきた」と言い、その印象を「効率厨、シゴデキ、タフガイ、ストイック、現実主義、ドライ」と次々に挙げていきます。

「後半には、石井さんが20代で大きく影響を受けた出来事も書かれていて…でもネタバレになるんで」と口ごもるポインティさんに、石井さんは「ビジネス書にネタバレとかあるのか?(笑)」。冒頭から会場に笑いが起こります。

さらにポインティさんは、"モチベーション"について書かれた部分が気になったそう。「人生の目的は走馬灯作りで――これちょっとネタバレなんですけど…」と再びネタバレを口にすると、石井さんが「いいって!(笑)」と即座にツッコミ。息の合ったやりとりに、客席は一気にあたたまりました。

「読むから言わないで、っていう人もいるかもしれないですよ」と食い下がりつつ、ポインティさんは「(石井さんは)すっごいモチベーションがありそうな働きぶりなのに、燃えてないから燃え尽き症候群にはならないと書かれてて。それが不思議なバランスだなと思いました」と率直な感想を口にします。

そこから話題は、仕事のモチベーションへ。モチベーションを持って働くというポインティさんに対し、石井さんは「楽しくない仕事を乗り切るには、モチベーションを切っちゃった方が楽」と言い切ります。やりたいことも、やりたくないこともない"ゼロフラット"な状態だからこそ、淡々と仕事ができるのだそう。

「だからテトリスに見えてるってことですね。好きな形とかがなくて、いっぱい来てるみたいな」とポインティさんがたとえると、石井さんは「そう、バンバンはめてるだけ」とうなずきました。

一方でポインティさんは、「仕事をテトリスだと思っていなくても、この本を読んでテンションが上がったり、励まされたりする人がいると思います。それが不思議ですよ」と投げかけます。

すると石井さんも「Xで、この本を読んで泣いたって人がいるんですよ。意味がわからなくて、編集の人と『泣いたってどういう感想なんですかね』って。優しい本だとも言われるんですけど、厳しく書いたつもりだったんです。どこに優しさがあるんだろう」と首をかしげます。

ポインティさんは、その理由を「石井さんの仕事の仕方の"説明書"みたいな感じがあった」と分析。厳しさの奥にある石井さんの考え方が丁寧に言葉にされていることが、読者に優しく届いているのかもしれません。

 

ポインティさんは会社の電話を進んでとっていたものの...

事前に参加者から募集していた相談にも答えてくれました。

「オフィスで電話対応をしたくない。みんなが聞いていると思うと喋れなくなってしまう」というお悩みには、まず石井さんが、ポインティさんの会社員時代のエピソードを紹介。会社の電話が鳴ると、「株式会社コルクです」ではなく「佐伯です!」と出てしまい、最後まで直せなかったのだとか。

とはいえ、ポインティさん自身は電話を取るのが苦手ではなかったそう。「電話対応って、相手の用件をメモするだけなので、ミスが少ない仕事だと思ってたんです。他の仕事でミスが多すぎて、これは余裕だわと思って」と笑います。

早く取れば職場に貢献できるし、間違えても訂正すればいい。そう思えば「待ってました」という気持ちで取れたのだとか。石井さんも「簡単だって思った方がいいってことですね」と納得の様子でした。

話題は会社での振る舞いへ。「あまり振り返りをしない」というポインティさんは、SNSを見過ぎて仕事の期日を延ばしてしまうこともあり、社長でありながら"ダメ社員"をやっていると、いつもの笑顔で明かします。それでも「風通しだけはいい」と胸を張りました。

一方の石井さんは、ビジネス書を出したことで社員に勝手にプレッシャーを与えているのでは…と、少し申し訳なさそうな表情を見せます。

これに対し、会社員時代に社長の本やインタビューを読み込んでいたというポインティさんは、こう語ります。

「人間同士だから、なんで石井さんってこういう性格なんだろうとか、こういう言い方やめてほしいなとか、あるじゃないですか。でも、その言い方の奥にはこういう背景があるかもっていうのが、本を出していると分かる。解釈する側が有利なんです」

この言葉に、「社長は本を出した方がいい」と二人の意見が一致しました。

 

デメリットを先に伝えると信頼につながる

イベントでは企画のアイデアも募集していました。そのひとつが、「自分の当たり前は他人の不思議ゲーム」。一人で外食できない人や、柔軟剤を入れない人など、自分には当たり前でない価値観を持つ人に話を聞いてみたい、という企画です。

例に挙がった「旅行から帰ったその日に荷解きをする」について、ポインティさんは「してないです」と即答。一方の石井さんは「帰ったらすぐやる。どこに何が入っているか覚えているから一番効率的」と、ここでも効率重視の姿勢を見せます。「効率を披露された!」といじるポインティさんに、「効率って披露できるんだ」と石井さんも思わず笑顔に。

そんな石井さんの趣味は、非効率にも思える山登り。「明日も朝5時から」というから驚きです。そのギャップについて、「あまりに効率的にやってるから、非効率に快感を覚えるんじゃないですか」と自己分析しました。

「自分の当たり前は他人の不思議ゲーム」を、社内の風通しの悪さに悩む別の投稿者の会社でやってみてはどうかと石井さんが提案すると、ポインティさんは「いや、揉めごとが顕在化しちゃいますよ。『あー、だからだ』って」。この絶妙なひと言に、会場は大きな笑いに包まれました。

そこで二人がたどり着いたのは、「初対面のアイスブレイクにぴったり」という結論。「初対面って、相手の偏屈さもめっちゃ許せますからね」とポインティさん。仲良くなってから「あー、だからだ」と気づくと、それが積み重なってしまう。

だからこそ、自分の癖は最初に見せてしまった方がいい。とはいえ、「初対面ほどよく思われたいじゃないですか。そこが難しい」とポインティさんが言うと、石井さんはこの話を自身の企画術に重ねます。

「本でも書いてますけど、企画をプレゼンする時はめちゃくちゃデメリットを話しますもん。それをやっておかないと、途中で絶対頓挫するんで。先に言っておけば、何か起きても『言ってたんでね』ってなる」

ポインティさんも「想定範囲が広い人っていう印象になる。それだから通す人なんだなと思いました」と深くうなずきます。人付き合いも企画も、最初に"想定範囲"を広げておくことが、後々の信頼につながるのかもしれません。

トークの最後、ポインティさんは「石井さんが『非合理だから好きだったんだ』と話していたパートがめっちゃ良かった」と振り返りました。なぜラジオやポッドキャストに、効率を注ぎ込むほどの熱量があるのか。その理由は、今回の新刊ではあまり書かれていなかったと言います。

石井さんは改めて、「ポッドキャストって非効率じゃないですか。ちょっとやって面白いもの作って解散、みたいなのは無理。何のためにやってるの?っていうのが、多分楽しいんでしょうね」と語ります。

「まだ作りきってないんでしょうね。なんでやってるのか、まだわかってない。だから楽しい」

効率を突き詰める石井さんが、それでも効率では割り切れないものに惹かれ続けている。その素顔がのぞいたところで、イベントは幕を閉じました。

著者紹介

石井玄(いしい・ひかる)

音声プロデューサー

1986年埼玉県生まれ。2011年(株)サウンドマンに入社し、『オールナイトニッポン』などにディレクターとして携わる。2020年(株)ニッポン放送に入社し、『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム』などのイベントプロデュースを担当。
2024年(株)玄石を設立し、『林士平のイナズマフラッシュ』『岸田奈美のおばんそわ』『井上咲楽のキャベツは踊った』など、20番組以上のポッドキャストを手掛けるほか、東海オンエアや令和ロマンの単独イベントにも携わるなど、様々な企画を進行中。第52回放送文化基金賞ラジオ部門審査委員。MTV番組審議委員。

佐伯ポインティ(さえき・ぽいんてぃ)

マルチタレント

1993年生まれ、東京都出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、株式会社コルクに漫画編集者として入社。2017年に独立し、猥談系YouTuberとして活動をスタート。18年には日本初の完全会員制「猥談バー」をオープンした(現在は閉店)。24年7月からは「佐伯ポインティの生き放題ラジオ!」をポッドキャストで配信中。Spotifyの日本デイリーチャートでは最高順位1位を獲得。趣味はガチャポン、特技はおしゃべり、チャームポイントは大笑顔。

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